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第31話 怒涛のように流れる攻勢


 限られた時間の中、様々なスキルを使いながらリクビさんに追いすがる私。


 攻撃を受けるために、リクビさんが巨大で密な氷の壁を展開した。

 私はすぐに反応する。


てん蝕融虹しょくゆうごう』!」


 頭の中に即座にスキルが浮かぶ感覚。スキルをどう使えばいいか、どう作用するかもわかる。


 私の手からは夢のように美しい光の群れが生み出された。


 光る羽虫の群れ。


 それは剣を取り巻き、玉虫色になってぴったりと張り付いた。



 そして息をつく暇もなく、リクビさんと私を隔てる氷の壁に振り下ろす。

 このエンチャントは硬化・凝固された物質を崩壊させるものだ。


 剣は氷壁をバターのように切り裂く。

 そしてその切れ目は残った壁にあっという間に黒い染みを広げ、粉々に散開させた。



「ちぃっ。」


 苦々しい顔でリクビさんが引く。


 ……仲間に残された時間はわずかだ。

 体勢の立て直しの隙は与えない。



「『ブレイズガイザー』! 二連! 三連!!」


 突破力のある炎の砲撃。

 

 リクビさんは跳び、空中に避け、初弾と次弾を躱したが、その次はいなすことはできなかった。

 瞬時に氷壁を貼って受けるが、ブレイズガイザーはそれを貫通し、リクビさんに大きなダメージを与えたようだ。



「ぐはっ! 猪口才な、舐めおって!!」



―――リクビは考える


 これだけの数のスキルの威力、練度。

 それを1人の人間が扱えているという不思議。


 スキルとは系統立てて学ぶものだ。

 基礎があって次がその上に立つ。近道はない。


 故にこれだけの強力なスキルを何種も使い分けられるのは、齢を重ねた練達者のみと相場が決まっている。

 メグはまだまだ若い。だとすれば目の前にいるのは魔女か何かか。



 またリクビは硬い盾を破るスキルは過去に何度か見たことがあった。

 しかしそれはどれも攻撃を通す為に、風穴程度の突破口をこじ開けるぐらいのもの。

 己ほどの術者が貼った強力な壁を、例え壁破壊専門の技であれ、一瞬にして粉砕するとは理解しがたかった。



 それに納得がいかないのは他にもある。

 炎の奔流弾と壁破壊。つまり物質を生成するスキルと解除するスキル。

 そんな両極端なスキルを、メグは淀みなく、流れるように繰り出し続けている。


 術者になれば誰でも痛いほど分かるが、性質が対になるような技を隙間なく結実させることは非常に難しい。


 メグの為す魔術戦は、神として長い命を紡ぐリクビでさえ、見たことのない程の完成度を誇っていた。



 規格外。

 規格外。

 規格外。


 何もかも人間の為せる範疇を超えている。



 メグがまた技を繰り出す。

 その運びは自分を厳しく追い込むものであると同時に美しくさえあった。



 ……そうだ、追い込まれるうちにすっかり忘れていた。

 妾はこんな風に、舞うように戦う人間を見たことがあるではないか。

 それはまさにこんな瞳の色をした――



 リクビは突如耐えられないといった風にククク、と笑う。



「メグよ、妾も興が乗ってきたわ。少し本気を出してやろう。

 妾が本分は氷に非ず。妖狐の力を宿した『狐火』こそ真の奥義よ。」


 さらに続けるリクビさん。


「そしてお主がつまらんことを気にして全力を出せないと興も冷める。

 言っておこう。お主の仲間3人は命を落とす心配はない。あれはやかましい賊などを体よくあしらう為に妾がよく使うハッタリじゃ。


 ……剣を抜いて向かってきたのはお前ぐらいじゃがな。」

 


「え!みんなあんなに氷漬けになって無事なんですか?!」



「そうだ。

 氷瀑牢は動きを封じてはいるが、中はかまくらのように一定の温度を保っている。数時間囚われていても死ぬことはないぞ。」




 よ、良かったぁ、とへたり込むメグ。


 とりあえずオカリナのみんなの命が保証されて、全身の力が抜けていくようだ。




「これで後顧の憂いなく戦えるというものじゃろ。

 妾も久々に血が滾ってきたわ。

 いざ尋常に勝負じゃ!」



 ほっとした反面、次のような疑問が湧き出てくる。


 ……何だかこの神様、目的が私の口を割らせることから戦うこと自体に変わっているんじゃないでしょうか?

 強い相手をみると遮二無二戦ってみたくなる、そんな戦闘狂なご性格をお持ちのような……



 リクビさんは衣服の帯を一本するりと解く。


 するとどうだ。

 普段はしまっておいでであろう六本の尻尾が開放され、明らかにリクビさんから感じられるマナが増した。



「まずは小手調べじゃ。狐火『蓮華曼荼羅れんげまんだら』!」


 リクビさんの周囲に円を描くように炎が召喚される。そしてそれは周りながら次々に私のもとへ放たれていく。


 この炎、実に避けにくいんです。

 軌道は直線ではなく軽く弧を描いていて、大枚に避けると向きを変え、しつこく私を追ってきます。


 躱すには十分引き付けてから急な角度で撒けばいいのだけど、それが連弾・高速度の射出となると、避けるので精一杯で何がなにやら分からないことに。



 リクビさんの『狐火』、ここまでのものとは。逃げ続ける私。



 ……いや待てよ。今はさっきみたいに場面場面に適したスキルが頭に浮かんでこないぞ?

 身体能力は上がっているから『対ボス無双』は有効みたいだけど、あの状態はまた別のスキルなのかしらん?


 このままじゃ別人だと思うくらい不甲斐ない活躍しかできないぞ。



 さっきの勢いはどこへやら、逃げ回る私を前にリクビさんも同じような感想を抱いたよう。


「ふざけるなよ、メグ!!

 妾は茶番が嫌いだと言ったはずだ!」


 リクビさんは手に炎を宿すと剣の形にしてみせた。


「狐火『獄狐ごっこ』……。擦れれば首が弾け飛ぶ。

 お前の実力、しかと見せろ!!」


 剣を構えるとリクビさんがこちらに飛んでくる。


 え。何かめちゃくちゃ怖いワードが聞こえたんですけど。タチケテ。



 リクビさんの剣がもう少しで私に襲いかかる、その時だった。


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