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第30話 追い詰められて得るスキル



「捕らえよ、自然譚『氷地裂すがちざき』!」



 凄まじい冷気がリクビさんの両手から放たれ、大きな氷塊の連なりとなって地を這いながら私に襲い掛かる。


 その速度と威力はまさに神威といったところか。

 さっきからこの攻撃が続いており、私はすんでのところでいなし続けている。



「気をつけて、メグ。さっきの宙域に氷を出現させる氷瀑牢とはわけが違う。

 氷地裂はリクビの体から直接放出されたマナをでたらめな威力で射出してるんだ。


 だから、生半可な炎で受けても融解する前にメグに到達するだろうさ。

 これは威力の拡散するフレイムストリームじゃ受けられないよ。


 ……大した相手を敵にしちゃったね。」



 炎は氷に勝つ。

 そんな魔法の相性すら捻じ曲げる文字通りの神業だ。


 はぁ困ったもんだよ、全く。

 と、おどけてる余裕も全くないのだが。


 タロンの助言の間にも連撃は止まない。



 と、そこへ妙案が浮かぶ。私、冴えてるぞ。

 私は前に回転しながら氷地裂を躱すと、置き去りになっていたチホのリュックに取り付いた。


 瞬時に剣でリュックを捌いて解き、チホの縄を取り出す。



「おや、お主に縄の心得があるのかえ。チホとどちらが上か見物させてもらおうかの。」



 ポジティブスキルは全て私の味方だ。そしてその技を私はたったさっき体験したばかりなのだ。


 私はぴしりと縄を整えるとリクビさんに向き直った。



「妹分の技に苦しみなさい!

 縄技『自縄自在』!!」


 キレッキレに決めて縄を投げつける私。

 瞬間、風切音を立てて宙を舞う縄。



 しかし縄はへろへろと空中を漂うと、数メートルも行かないうちにヘタリと地面に落ちてしまった。

 格好をつけたばかりにこれは恥ずかしい。赤面しながらも戸惑う私。



「え、え、なんで?

 私は全てのスキルを使えるはずじゃあないの?」



 訳知り顔のタロンがあちゃー、と顔を抑える。

 彼の解説曰くこういうことらしい。


「解説するよ。

 おいらの考えつく限り、メグにチホの技が使えない理由は主に3つの可能性があるね。

 それらのうち1つ、ないし複数が当てはまるはずだよ。」


 いつものタロン講座だ。



「1つはチホが人でない可能性。


 対ボス無双で有効になるスキルは全ての『人』のスキルが対象。神仏や幻獣、モンスターの類が持つスキルは、どれだけ軽微なものであっても習得できないよ。

 おいらはチホとは初めて会うから、人かどうかは知らないんだけど狐の神格化した姿なら……残念ながらスキルは頂けないね。



 2つ。技名の隠匿。少しレベルの高い次元の話になるよ。


 熟達した術者は、今のメグのやったように自分の技が盗まれたり、または制限される魔法や術をかけられぬよう細心の注意を払っている。


 そういった術者は相手に魔法・術の真名まなを知らせることを避け、普段はとりあえずつけた偽の仮名かなを使っている可能性があるんだ。

 仮名の技は威力は落ちるけどマナの消費を抑えられるメリットもあるね。


 チホの使っていた技が仮名に拠るものの場合、もちろんメグにその技は使えない。」


 なるほどなるほど。対ボス無双発動時に対峙した相手の技をそのままなぞっても、仮の名の技なら結実しないということもあるのね。



「そして3つ。『抑圧』という技術さ。

 これも高等技術だからメグが知らないのは仕方ないね。


 技の使用者は、鍛錬などにおいて一部の技術を高める際に自らの能力を敢えて縛ることがある。これを一般的に『抑圧』というんだ。



 自らの何らかのステータスやスキルを抑圧することで、自分の他の高めたいスキルから本来以上の性能や多様性、新規の能力を引き出すことができるのさ。

 もちろんただ縛って鍛えればいいと言うわけではなくて、試行錯誤と研鑽の末に効果が得られるものだけどね。



 ……これが実にメグにとっては相性の悪いところでね。

 抑圧して獲得された性能のスキルは、繰り出す時にはステータスなどに制限を受ける、いわゆるデメリット持ちのスキルなんだ。


 おいら対ボス無双に精通したわけじゃないから絶対とは言えないけど……ほら、対ボス無双ってポジティブスキルのみ使用可能になるスキルじゃん?

 デメリットのある抑圧スキルはコピー出来ないんじゃないかな……?」



 ふむ、自縄自在が抑圧スキルで対ボス無双の獲得対象にない、という可能性があるということか。



「単純に威力や範囲、速度を誇る一部の魔法スキルなどと違って、自縄自在は見たところ繊細な操作が必要な技。

 抑圧されて後天的に発展させた技だとみて間違いないだろうね。」



「ありがとう、タロン。私のスキル、発動してもやりたい放題ってわけでもないんだね。」


 相変わらずタロンは頼りになる。

 あとで何か奢ってあげよう。そういえばタロンって何が好きなんだろ。



 そこへ殺気が頭を駆け抜ける。


 私はタロンを突き飛ばし、不安定な耐性で後ろに飛び退いた。思わず尻もちをつく。


 私たちが居た空間を氷地裂が引き裂いていった。



「いつまでお喋りに興じておる。

 縄芸も児戯に等しいようじゃな……ただの時間稼ぎに勿体ぶりおって。


 妾は茶番が一番嫌いじゃ!

 メグ、これを見ろ!」



 リクビさんは片手を突き出すと力強く握りしめる。


 するとどうだ。

 氷像になっていた3人は、もはや顔形が分からないほどの氷に包まれた。



「3分きっかりだ。それまでに手を打たなければ彼女らは絶命する。

 ……真剣になれよ。


 だが妾は優しい、負けを認めればお主らの命の保証はしよう。」



 全て吐露すれば助かる……?


 でもそんなのは嫌!

 それは最後の最後、どうにも出来ないときの手段だ。



 オカリナのみんなが私を守るために庇ってくれたこと。

 それを私の独断で無碍になんて出来ない!


 

 リクビさんを倒すために、視界が、神経が、筋肉が、体を巡るマナが、まるで私のものでないかのように研ぎ澄まされていく―――。



『アチーブメントを達成しました。スキル『覚醒―変幻自在』を獲得しました。』

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