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第28話 話せ話せぬ小競り合い


 ボス討伐を終えた私たちの前に急に現れた2人。

 双方とも頭にはぴょこんと獣の耳が、お尻にはふさふさとした尻尾が生えている。獣人だろうか。


「あねさま!こっち、こっちです。見てくださいナ!」


「向かっているし、見えているぞ。少し落ち着くのじゃ。」


 しばし歩くと、2人は私たちの近くに立ち止まる。


 ちっこい獣人?は茶色の毛並みをしていた。耳をしばたかせると我らがオカリナに向き直り、口上を述べた。


「やいやい、ここにおわすは何を隠そう、近隣の山地を統べるメリアス山稲荷神社の一柱、リクビ様である!畏まれ、小童!」


 どう見ても小童はそちらだ。畏まって畏まれ。

 小童が続ける。


「そして小生はその御使いの命を受けるチホと申しますナ。お見知りおきを。」


 なんと、2人は神様とその御使いという関係だった。

 そんな方たちが一体どういうわけで私たちのもとを訪れたのか。



 恭しく礼をするリクビさん。こちらは金色に輝く毛並みが美しい。

 そっと私たちの方を向くと口を開く。


「ご紹介に預かった狐の神、リクビじゃ。いわゆるお稲荷様というものじゃ。よろしゅう。

 お主たちの名はなんと申す?」


 めいめい名乗る私たち。

 本当の神様?カロス様より偉いの?とこそこそ呟くフラン。

 ピクリとリクビさんの耳が動くのを私はみた。


「お主らはカロスと知り合いなのか……。悪いことは言わない。彼女と親しくするのはやめておくのが良い。」


 なんと、リクビさんはカロスさんのことを知っていた。

 しかしあまりいい印象は持っていないようだ。


 カロスさんとは過去に何かあったのだろうか。まぁ私たちも、とりわけカロスさんが素晴らしい方と思っているかどうかは怪しいが。



「まぁ、カロスのことは今は構わぬ。それよりお前たちの目的を聞いておきたい。


 なぜここ、タンタラ洞窟に忍び込んだ?

 ここは大した魔物も出ない枯れた洞窟じゃ。理由なく来ることはあるまい。

 

 ……地域の鎮定も我が務め。後ろ暗いことがなければ、理由を聞かせて貰えれば波風も立つまいて。」


 なんだ、そんなことか、と質問に答えようと前にでかけた私をフランが手で制する。そしてカナが小声で耳打ちしてきた。


(メグメグの能力、おいそれと誰かに話してはいけないわ。例えそれが神様に対してであってもよ。


 メグメグの力は多くの人の注目を得るほどの力よ。

 誰から誰に伝わってどう思われ、どう利用しようと考えるひとがいるか検討もつかないの。


 私たちはメグメグを守るわ。それにはまずあなたの秘密を守るべきだと決めたの。)



 一方フランも啖呵を切る。

「どこの神様かしれませんがね!私たちはダンジョンのボスをただ倒しに来ただけです。

 それに何か理由がいりますか?」



 リクビさんは押し黙る。しかししばらくするとチホに話しかけた。


「チホ、観察は力じゃぞ。今この状況、不自然なことががありゃあせんか?」


 チホは困ったように耳をぴょこぴょこ動かしながら周囲を見渡す。すると何かに気づいたように耳を揃えて立ち上げた。


「あねさま!レアアイテムであるスライムヘルムが大量に転がっていますナ!

 あれはグラディエーターからたまにしか得られない逸品。これだけの数がドロップしているのは不自然極まりないですナ!」


「及第点じゃな。スライムヘルムのみならずスライムの核も多いようじゃが。


 さて、女の子のパーティよ。どういうことか話して頂けるかな。


 巷にはレアアイテムの模造品を売り払う悪漢の話も耳に入る。

 話はお主らがそうだと疑われている段階に入っているのじゃぞ。」



 ぐぬぬ、という表情からくってかかるフラン。


「そんなのってないわよ。だってそこにあるのは全部本物じゃない!」


 リクビさんは取り合わない。


「妾は質屋ではない。故に真贋を見極める目を持ち合わせてはおらぬ。


 それに仮に全部本物だとしても、なぜそのような状況にあるのか説明できない限り、疑いの目を晴らすことはできないと思いやせんか?」


 どうにも旗色が悪い。


 もしリクビさんが悪い神様だったりお喋りな方なら、私のスキルを話すのは不味い。

 しかしこの空気、もう何も話さないで済むというわけにはいかないだろう。



 そこへ空中からタロンが現れる。


「待って! リクビとは顔見知りなんだ。早まる前においらが話をつけてみるよ。」


 リクビさんのもとへ飛んでいくタロン。

 それに気づくとあからさまに顔を歪めるリクビさん。


「おや、カロスの木偶ではないか。貴様も来ていたのか。愉快ではないな。」


「いやー、リクビさん。お久しぶり。

 突然だけどこの子たち悪いことする子には見えないだろ?


 カロス様とはいろいろあったけど、ここはどうかおいらの顔ひとつ立てて不問にしてはくれないかな?」


 口元を袂で隠し、くすりと笑うとリクビ。


「カロスの木偶だけあって冗談も下手くそだな。

 お前たちとの関係は悪い方に作用こそすれ、良きに取り立てることなどありえぬ。


 神事を務める妾は忙しい。

 疾く去れ。」



 タロンは大人だった。

 とりつく島もないほどメタクソに門前払いされたが、悪態一つつくことなく帰還した。ストレスフルな表情はすごいものだったが。



 そしてリクビさんは言い放つ。


「これ以上時間をかけても仕方あるまい。お前たちは捕縛して社の座敷牢に収監するとしよう。

 チホ、縄を。暴れるようなら折檻して構わぬ。」



 私たちが何をした。

 あまりの言い草に流石に怒るオカリナ一同。



 戦闘開始のゴングが鳴り響く。





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