第26話 スキルツリーの奥深さ
とうとうオカリナがタンタラ洞窟に再挑戦する日がやってきた。
道のりは長い。私以外の3人は物珍しさもあってか、あーだこーだとスキルツリーとにらめっこ&みせあいっこしていた。
移動魔法にポイントを振るリリエラと、アイテムプールにポイントを使う私は、いわゆる『遊び』のポイントがあまりない。
色々な振り方を試してみたいが、結局スキルを使うときは決まった形になる。
しかしフランとカナはそこのところ融通が効く。
これから色々な形の戦い方を模索できることだろう。
最初に決めた形から色々試行錯誤していると、悩ましげな表情のフランがタロンに話を投げる。
「ねぇ、タロン。
私、初級魔法マスタリーを取得したんだけど、なんかイマイチなの……。たしかに炎は出るんだけどね。」
静かに呪文を念じるとフランの掌に赤い火が灯る。
なんとあのフランが魔法を使えた!
オカリナにどよめきと称賛の声が走る。
「ふふ、やったわね、フルル。見事なものじゃない。」
「フランちゃん……グスッ。帰ったらご馳走にしましょうね。私、奮発しますよぅ。本当です。」
「おめでとう!タンタラ洞窟で大暴れできるね!私も嬉しい。」
盛り上がる私たちを、待って、ともう片方の手で制するフラン。
「これ、手のひらの上で燃えているだけなの。
どうやったら火の玉になって発射できるのかしら?
タロン、教えて。」
教えてと言われたら断れない!
我らがタロンが説明を始める。
タロン先生曰くこういうことらしい。
初級魔法マスタリーで操れる魔法は、いわゆるエンチャントという何かに属性をまとわせるもの。
炎弾を発射したり、竜巻を放ったりする攻撃魔法の獲得にはそこから出ている各種魔法のスキルツリーを獲得する必要があるという。
ちなみにツリーの伸ばし方次第でエンチャント自身も強化可能で、威力や持続時間の増加、消費マナの減少などの効果が得られるということだ。
説明を聞き、ツリーを穴のあくほどみつめるフラン。
ない、とポツリと言う。
「ないわ!私のツリーの続き、攻撃魔法が一切ない!」
行きどころのない感情は、悲しいかなタロンに向けられる。ほっぺたが危ない!
「ま、まぁそういうこともあるよ!
人によってツリーに決まった形なんてないしね。おちついて、どうかおちついて、フラン?」
なだめの言葉も虚しく、むきーっ、とやっぱりタロンのほっぺを横に引くこととなったフラン。
そうだね、どうしようもないこともあるよね。
そうしてしばらくして攻撃魔法を諦めたフランは火炎札に炎をまとわせて放つ戦い方を選んだようだ。
結局最初と同じ魔法マスタリーと魔力のツリーを獲得することとなった。
と、今度はカナの方から声がかかる。
タロンさん憎いねぇ、色男に磨きがかかってるぜ。
「ねぇ、タロ芋、今度は私の治癒魔法を見て。」
カナは治癒魔法を試しに私にかけてくれた。
紛れもない平凡なヒール。攻撃魔法を使えないフランに比べると御の字も御の字なのでは?
「それがね、満足とはいかないの。試しにスキルの説明読んで見たんだけど、見て。
ちょっと効果量が少なすぎなくないかしら?」
言われてみんなでカナのスキル説明を覗き込む。
そこには確かに数値でヒールの効果量が示されていた。
ううむ、仮にリリエラの体力がギリギリまで減っていたとして、それを全快させるのには二十数回はヒールをかけないといけない。割り算掛け算に自信はないが3度確かめたので間違いないぞ。
ここまで燃費が悪いと、全快まで果たしてカナのマナの方が保つのか不明なまである。
もちろん戦闘中に隙をみて一度ヒールをかけた程度では、満足いくほどの回復効果は得られないだろう。
これにも早速タロンの説明が入る。
治癒魔法の効果量は魔力でも少し上がる。しかしがっつり影響を与えるのは祝福というステータスらしい。
「カナのスキルツリーには祝福はおろか、魔力を上げる起点もなかったよ。
残念だけど現時点ではヒールにポイントを振るくらいしか回復量の成長は見込めないかな。」
「それもやってみた。けどヒールのレベルが上がると消費マナも増えるから、私の場合、結局ヒールは伸ばさないほうがコスパが良さそうなの。」
ついでとばかりフランが尋ねる。
「後天的にツリーで魔力や祝福を上げることはできない?」
できるよ、とタロンは答える。
「まずツリーが成長した先に当該項目の能力が出現すれば問題ないね。
また普段の様々な行動やクエスト報酬などで能力が上がったとき、後天的にその能力のツリーの起点を得ることもあるよ。
魔力は実験を繰り返した経験から学者さんなんかが。
祝福は人を無条件に愛して行動する司祭さんなんかが起点を得ていることが多いね。
このパーティにはメグがいるからドーピングアイテムの入手機会も多いだろう。もちろんそれらの影響でもチャンスはあるよ。
地道に冒険を重ねていこうね。」
なら、私は大丈夫そうね、とカナ。
「私、自分のことを二の次にして他人の愛を大切にするじゃない?
これは祝福の起点獲得秒読みだわ。ふふふ。」
ダウト。
あなたは自分のことを優先しすぎるが故、歪んだ妄想に走っているだけです。本当の無垢の愛を学びましょうね。
話も落ち着いたところに私たちはとうとうタンタラ洞窟に辿りついたのだった。




