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第24話 餌付けられ上手、リリエラさん


 ここはタンタラ洞窟。

 何やら辺りを分析して回る二人組がいた。


 1人はまだあどけない顔をしていた。地を這いずるように辺りを精査しながら嗅ぎ回っている。

 もう1人は威厳のある佇まいをしながら、その後ろで事の成り行きを見つめている。


 2人には共通点があった。それは頭の上に犬の様な耳を覗かせていたことだった。



「あねさま!ここに激しい呪文の跡があります。

 おそらくは炎の上級魔法の何か……しかし無茶苦茶ですナ。


 高い炎耐性をもつスライムにこれを放ち、べらぼうな威力に任せて撃破した模様。

 理にかなった攻略とはいいがたいですナ。」



 あねさまと呼ばれた、もう1人は動かない。

 地面に這いつくばる片割れはまだ報告を続ける。



「ついで彼の者は、洞窟のボスを一撃のもとに下したと見られますナ。


 みてください、ここにできた轍を。

 先ほどとはうってかわって、動きは最低限かつ合理的。撫でるように一刀のもと倒していますナ。」



 報告を受けた1人は厳しい顔を崩さないでいた。


「ふむ、この洞窟に相応しくないほどの、高い実力がある者ということじゃな……。」



「しかしあねさま、動機が不明ですナ。


 稼ぎ目的だとすると、ここには雑魚モンスターしかでず、ドロップアイテムも渋いため適しておりませんナ。


 試し斬りにしても適したダンジョンが山ほどありますゆえ、何故このような辺境にまでやってきたのか……。」



 話を預けられた彼女はしばし考え込む。



 誰も立ち寄らない洞窟に、念のため張ってあった結界が解かれていた。

 しかも侵入者は洞窟の中で戦闘行為をして帰っていったらしい。



 近辺の治安を守るのが彼らの務め。これは少々いただけない事態だ。



 ボスを捉える際に地面にくっきり残った跡は美しくさえあった。

 だが実力者が人格者とは限らない。



「往々にして酔狂な輩はいるものじゃ。今回だけならまぁ良い。

 だがその者の匂い、よく覚えておけ。


 次もとなると、少し誰何せねばなるまいじゃろうて。」



 2人はしばらく検分を続けた後、やがて洞窟の入り口の方へと消えていったのであった。





「「「いっただっきまーす!!」」」


 プリカ養成所の生徒たちはみな、お昼を迎えていた。

 私たちオカリナ4人は揃って食堂の机を囲み、それぞれ注文したメニューを前にしている。



「それにしても、今日の座学は思うところがあったわ。


 この世界の諸悪の根源たる魔王。その打破に向けてみんなが研鑽の日々を送っているのね。


 魔王を倒せば各地の魔物の被害もぐっと少なくなる。

 そうすれば新たな秩序のもとで、私たちは歩み出していけるのね。」

 と私。



 それに対し食事の手を止め、生返事を返すフラン。

 フォークをパスタに絡ませながら、所詮他人事という冷めた目で巻き付いたそれを見つめている。


「まぁでも魔王城の周りのダンジョンに近づけたパーティすら、全くいないというのが実際だけどね。

 何度も何度も聞かされたお題目。夢物語もいいところだわ。」



 こちらはいつものように自信たっぷりの笑みを見せるカナ。


「あら、フルルは弱気なのね。オカリナには対ボス無双を持ったメグメグもいるのよ。

 打倒魔王という悲願、いずれ叶えるのは私たちだと思っているけど?」



 そしてこちらを向くとリリエラの方は、なんともう定食を食べ終わっていた。


 フランによるとリリエラは少食にして吝嗇家。故にご飯の量はいつも少なめにしている。

 加えて食事中に話すのはお下品と考えているようで、あえて会話に混ざらず黙々とすぐに食べきってしまうそうだ。



「リリィ、いつもながら烏の何とやらね。

 体が資本の格闘家がそんなに食が細くてはやっていけないわよ。さぁ、私の唐揚げをお食べ。」


「烏の行水で早いのはお風呂だよ、カナ。

 それはともかく私からも玉子焼きをどうぞ。いっぱい食べて元気よく行こうよ!」



 大切な友だちのおかずを頂くのは悪いと思ってか、提案に食いつかず困っているリリエラ。


 そこへミートボールをフォークに刺しながら、不敵な笑みを浮かべるフラン。満を持して発言する。



「あなた達、まだまだ甘いわね。リリエラという人物を分かっていれば自ずと答えはでる。こう言うのよ。


 リリエラ、ミートボールが『無料』で食べられるわよ!

 うーん、ものすごく『お得』!『食費も浮いちゃう』わねっ!」



 途端、目をキラキラさせるリリエラ。目を瞬く間もないほどあっという間に、彼女はフランのフォークに食いついていた。



 そして、はっ、私は何を……、と我に帰るリリエラ。



「さすがフラン、先見の明がお有りで。おみそれ致しました……。」


「くるしゅうない、くるしゅうない。」



 ところで、となぜかテンションの上がったカナが頬を赤らめて言い寄る。



「……今のはいわゆる間接キッスよね!そうよね!

 フルルとリリィのロマンスがここまで進んでいたなんて……ちょっとお話聞かせてくれる?」



 あっという間に虫けらでも見るかのように、不快な顔になったフラン。

 安心して下さい、私も同じ気持ちです。



 そうして食事を終えた私たちは次に向かうべきダンジョンの話に移る。


 最初に挙がったのはプリカ養成所周辺のダンジョンについてだった。


 私たちもレベルとステータスを上げ、少し実力がついた。


 プリカ養成所での模擬戦の授業では私自身はさっぱりだったが、ぷるんつのお陰で勝てることも多くなった。

 そしてその他3人も負けることは多いが、以前より確実に目覚ましい活躍を見せている。



 よって少し手強い敵が出てくるダンジョンでも問題ないのでは?という意見があった。おまけに移動に時間を割かなくて済むメリットもある。



 しかし話の流れはそれはまだ早い、という意見に落ち着いた。


 それにタンタラ洞窟なら、みんなが挑戦するここ周辺のダンジョンと違い、ほぼ確実にボスモンスターに出会えるというメリットがあった。

 周辺のダンジョンは、ボスが近々のうちに誰かに倒されていたら空振りだ。


 そして私の能力で得られるドーピングアイテムによるステータスの底上げはまだまだ貴重。

 旨味が強いうちは遠征の手間をかけてもボス狩りを続けるのが良いと話はまとまった。


 そうして前の挑戦から3週後になる次の休みに、私たちは再びタンタラ洞窟に出向くことと相成ったのである。



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