第21話 お金と時間の使い道
たくさんのお金を得て喜ぶ私たち。
リリエラは早速一人当たりいくらになるか勘定を始めている。
しかしそれを手で制するカロスさん。
どうやら思うところがあるようだ。
「待って下さい。これだけのお金が自由になる機会はそう多くありません。
確かに今お金を均等に分けて、それぞれで使ったり貯めたりするのも有用な使い方の1つではあります。
しかしあなたたちは冒険者でしょう?
これからいくつ冒険にこなしても、今回ほど十分な稼ぎが得られるとは限りませんよ。
こなしたいタスクはあるのに、売りたい雑多なアイテムもたくさんある。
そんなとき今後本当に必要なのは時間の方になるんです。
そこで今回は、今後に繋がるいいお金の使い方を覚えましょう。」
カロスさんの言い方いわく、時間をお金で買えると言うことなのか。
少し私たち子どもには高度なお話になりそうだ。
カロスさんは側にいた筋肉さんを呼びつける。
私は知っている。
フリーマーケットの間、筋肉さんが絶え間なくアツアツのたこ焼きをカロスさんに届けていたことを。
するとカロスさんは筋肉さんに何やら耳打ちしている。
筋肉さんは承知しました、と相槌を打つ。
そしてカロスさんが振り返り、私たちに告げる。
「残念ですが、私の地上の査察はこれで終わりなのです。
あなた達はこれからガルドについて行って下さい。
最後にアドバイスを。
買い叩かないこと。人を見ること。
では良い冒険者ライフを。」
カロスさんはお土産を引っ提げながら、雑踏に消えていった。
筋肉さんは、にかっと笑うと腰に手をあて自己紹介を始めた。
「パーティ名はオカリナとかいったな。
俺はガルドだ。メグは知っちゃあいるが、他の子は初対面だな。よろしく!」
リリエラです、よ、よろしく……、とリリエラから声が上がる。
他の2人も続いて名乗る。
「では単刀直入に言うぞ。
今から俺たちは冒険者商会、いわゆる商会という場所に行く。
そこで話を通してもらって、初期費用を払うことで、商会を利用する権利を得る。
そして専属の代替競売人と契約するんだ。」
冒険者商会?代替競売人?知らない単語のオンパレードに戸惑う私たち。
「やや、説明が拙くて済まないな。1つずつ行こう。
冒険者商会とは、正式名称はミナ冒険者商会という。
ちなみにパーシードにあるのがこの名前だから他の街にもあるぞ。
冒険者に関わる仕事をする商人の組合なんだな。
本来冒険業に集中したい冒険者にとって、アイテムの適切な売買に各種必携品の補充、ペットの管理や蘇生手続きなどなど面倒なことは山ほどある。
そういった様々なサポートだったり仕事を代替してくれる組織が商会だ。冒険が軌道に乗ったら頼って損はないぞ。
というよりまともなパーティで商会に頼っていないところは違法なとこか赤貧パーティぐらいだ。」
なるほど、カロスさんの言っていた、時間のためにお金を使うってこういうことだったんだ。
確かに煩わしいことに頭を悩まされずにすむなら、その対価を支払うのは安いものなのかもしれない。
筋肉さんは続ける。
「商会の利用は入会料を払い、後は各々のサービスを受ける時に使用料を払うことでできるようになる。
そしてまずお前らはアイテムの売買の代替を商会に任せるのが良さそうだ、とカロス様は仰っていた。
俺も同感だ。
そこで次の話、代替競売人のことになる。」
それなら話は分かる。私たちに代替してアイテムを競売してくれる人、ということだ。
しかしさっきの専属の代替競売人とはなんだ?
「そこで今度は専属の競売人の話だ。
お前らは冒険から帰って、アイテムを売り払いたいとき、急にそこらの代替競売人を探して契約するのもありだ。
それもいいし、そうしないといけないときはある。
だがいつでも十分な数の競売人がいるとは限りないし、毎度毎度顔馴染でない競売人にせっかくのレアドロップの行く末を任せられるか?」
ふむむ、と考え込むオカリナ一同。
「そこで、専属なんだよ。
専属の競売人と契約を結べば、アポさえ取れれば毎回冒険終わりにアイテムを引き取ってもらえる。
またそうやって取引を繰り返したらそれはそのままお互いの『経験値』になるんだな。
この競売人に任せればおおよそ間違いない。
このパーティは十分な儲けをもたらしてくれる。
そうした土台ができれば、もうアイテム売買で迷うことは少なくなる。」
「アイテム売買は深いのね。恐れ入ったわ。」とカナ。
で、でも、とフラン。
「その信頼できる競売人はどうやって見つけるのよ?
言っちゃあ悪いけど私たち人生経験も人を見る目もないわよ。」
うーん、そこなんだがな、と少し弱る筋肉さん。
「こればっかりは絶対はない。
ハズレを引いたら他の競売人と組み直しさ。
みんなそうやって損も得も出しながら模索しているのさ。
ただ今回は俺が付いているし、後ろ盾としてカロス様の名前も出せる。
あんまりひどい目に合うことはないさ。」
そうこうしているうちに、ミナ冒険者商会に私たちは辿りついた。
思ったよりずっと大きな威圧感のある建物だ。
この中で大人たちも手を焼くようなやり取りが繰り広げられている。
そう考えると、少し及び腰になるオカリナなのであった。




