第2話 生まれ出ずるは夢か幻
新たな冒険者よ……現れなさい……
またしても聞こえる遠くの声。
この展開、早くも2回目ですよ。残念、私はとても眠いのです。おやすみなさい。
いかにもな神妙な声で呼ばれたところで、ちょっとやそっとじゃ起きてやらない。
そう決意を新たにしたところで、ふと頭に記憶がよぎるのだった。
転生。
私はハッとする。
そうだ、私は新たな世界に転生するのだった。
夢と憧れだったリアル剣と魔法の世界。
そこにカロスさんが手配してくれたテコ入れをもって無双する。
これはまさにその始まりではないですか。
やれやれ強者はゆっくり寝かしても貰えないのね、と眠い目をうすく開けていくと、私はまたしても不思議な空間にいた。
私は無数の光の粒が輝く宙空を、立ったまま漂っていた。
その光はどんどん私の後ろの方へ流されていき、私は少しずつ移動しているようだった。
動きは不可逆的だった。どれだけ念じようと、はたまた空間を泳ごうと流れに逆らうことはできない。
ううむ、抵抗するつもりはないですがどうにもならないのね。
やがて行く先の遠くにドアのない扉のようなものが見えてくる。
さすがに鈍い私でも気づく。
あそこが私の転生先なのだ。
私はもがいてみることをやめていた。
次第に扉が近づいてくる。
扉は思っていたよりずっとずっと大きなものだった。人間用のサイズを考えていた私は距離感を掴めないでいた。
やっとのことで扉まで辿り着いた私。体がそこを通過する。
新たな世界に降り立った記念か、祝福の鐘が私を迎えたような気がした―――。
……こそ……冒険者よ……
また、遠い声が聞こえるが今度はどこか現実味を帯びたものだった。
新しい世界に来たからか妙にまぶしい。(おそらく)しかめっ面で目を開けると、そこは教会の聖堂のようだった。
「ようこそ、冒険者よ。聞こえますか? 私は司祭のミルアと言います。あなたのお名前は?」
ミルアさんはなかなかに若い。おっとりした、何と言うか聞く人が落ち着く声色と雰囲気を持っている。
だんだん目が眩しさに慣れてきた。不細工な面構えを、営業スマイル全開に変えて私は答える。
「私、メグって言います!
頭はあまり良くないですが、元気いっぱいなのが取り柄です!!
ふつつか者ですがどうかよろしくお願いします!」
ミルアさんは元気の押し売りに臆することなく、あらあらと微笑みを絶やさない。
「それで確認ですが、あなたは冒険者の方で良かったですかね?
転生で現れるのはほとんどが冒険をされる方なのですが、一応確認する決まりになっているんですよ。」
目を爛々とさせる言い放つ私。
「はい、私、強いモンスターとも戦えるんです!
どうぞご贔屓によろしくお願いします!」
すると私の後ろから、筋骨隆々の茶肌の男の人が現れ、声をかける。
背丈も相当あるが、鍛えられた筋肉のおかげで華奢に感じることはない。
「威勢のいい嬢ちゃんだな!気に入ったぜ!
俺はガルドっつうんだ。
それにしても、さっきの召喚の儀式はすごかった。なぁ、ミルアさん!」
「ええ、そうでしたね。最近では稀にみる美しい儀式でした。
どんな方がこられるかつい期待してしまいましたが、なかなか明るい良い子が現れて嬉しい限りです。」
美しい儀式。
一体自分の転生は他の人と何が違っていたのだろう。
気になって2人にそのことを聞いてみる。
「ああ、それはですね、転生の光というものなんです。
冒険者の転生時には転生を行う魔法陣から光が溢れるんです。」
「大抵の冒険者は光が数秒差す程度だな。」
「ですがメグさんの場合は虹色に輝く光が次から次へと魔法陣から溢れてきたんです。
メグさんが現れる瞬間も光が放射線状に差し、まるで奇跡を眺めているようでした。」
なるほど、強者は登場時から泊が付いてしまうものなのですね。つらいわー、強者つらいつらい。
「さて、私はだいたい教会にいることが多いので、また聞きたいことがあったらいつでもいらして下さいね。
ではガルドさんお願いします。」
私の身は一旦この筋肉さんに預けられた。
筋肉さんは、身一つで転生される冒険者のお世話をしているということらしい。
聞くところしばらくの宿を斡旋し、私に慣れるまでの衣食住を与えてくれるという。筋肉さんいい人過ぎんか?
とりあえずその宿屋まで私達は一緒に移動することになった。
私はここらでだんだん転生した実感が湧いてくる。
とうとう憧れの剣と魔法の世界にきたんだ!
戦うぞ!稼ぐぞ!バシバシ攻略するぞ!
1人ふんすふんす鼻息を荒くしていると宿に着く。
宿のビジュアルは……正直贅沢言わないでおこう。
「掃除も洗濯も自分でするんだ。なんでも自分のことを自分でできないやつは大成できんぞ、ガハハ。
軽く煤払いして荷物を置いたら闘技場にいくからな。
嬢ちゃんの実力拝見ってやつだ。」
筋肉さん曰く、冒険者は最初に実力を見極めるため、闘技場なる施設で魔物と模擬戦を行うらしい。
モンスターと戦う自前の施設……なるほど、そういうのもあるのか。
掃除も適当に済ませ荷物を置くと、早速筋肉さんと闘技場に向かう。
すると今日の転生の話が通っていたようで、あれよあれよと言う間に模擬戦の準備が整った。
「嬢ちゃんの装備はその簡単な剣と盾だ。
規則で最初はあまり強いモンスターとは当てられないんだ。退屈かもしれんが、バシッとやっちゃってくれ。」
闘技場の入り口をくぐると、向こうの入り口から中くらいのトカゲの魔物が向かってきた。
敵に不足は……正直ある。だが貴重な初戦、華々しくやらせてもらおう。
私は剣を持つ手に力を込めるとえいっ、と力の限りトカゲに振り下ろした。
すぐさま強力な衝撃が走る。私の手に。
「いたっ。かたっ。何これ。」
あまりの痛みに思わず剣を落とす私。
「え?」と筋肉さん。
「え?」と私。




