第15話 活躍せしはぷるんつの栄光
オカリナの快進撃は続いた。
もともとそんなに強いモンスターが出るダンジョンでなかったのが幸いし、メグ以外の3人の連携で道中のモンスターは蹴散らすことができたのだった。
最初はみんな、自分たちだけでダンジョンの攻略をしなければ、と少し怖い顔で構えていた。
しかし順風満帆の風向きにいつしか笑みがこぼれ、余裕すら感じられるようになっていた。
「これで洞窟のだいたい半分くらいまで来ることができたかしら。
火炎札の消費は13枚ね。帰りは行きより戦闘が少ないでしょうし、なんとかもちそうだわ。」
ここでリリエラが珍しくポジティブな意見をいう。
「あの、ところで私たち少し強くなってないでしょうか……?
フランちゃんは火炎札を上手く敵に命中させられるようになったし、カナちゃんは棍棒の扱いが滑らかになった気がします。
わ、わたしも戦闘開始時は魔法を数回連射できるようになったんです……!」
きょとん、と顔を見合わせるフランとカナ。
「……言われてみればそう。ザコ相手でも戦闘を通してコツを掴むことってあるのかしらね。
レベルも上がっているのかもしれない。
流石リリィ、よく見てるわ。」
「私とカナは命中、リリエラはマナが伸びたのかしら。
本職から考えると伸びて大喜びってステータスじゃないけど、でも目の前の戦闘が楽にこなせてるならそれも1つの正解よね。」
それだけでもここへ来た甲斐がありましたね、とにこやかに微笑むリリエラ。
「うん、これはこれで嬉しいことね。
でも本来の目的、ボス討伐も忘れちゃいけないわ!
メグメグ、ダンジョンも後半。引き締めていきましょうね。」
グッと親指を立てるカナ。私も笑顔でそれに応える。
しかし、そうこうしている間に新たな敵が洞窟の奥から向かってきた。
それは今までに見たことのない敵であった。
見た目はスライムのようだったが、今までの風貌とは少し違い、赤く、普通のスライムの2倍ほどの体積があるようだった。
「敵襲よ!みんな構えて!!」
早速フランの火炎札がスライムを襲う。張り付いた火炎札はスライムを炎で包み込む。
しかし。
スライムは炎を抜けて中から飛び出してきた。
「こいつ、炎が効かないのっ?!」
リリエラの炎弾も同じだった。
バシバシ当たるには当たるが、ダメージらしいダメージが見られない。
そうこうしているうちに赤いスライムは私たちと距離を詰める。
そして真ん前に立つカナに飛びかかった。
「やぁっ!」
と、棍棒で応えるカナ。
しかし赤いスライムの図体はかなり重いようだった。棍棒で弾ききれず、後ろに飛ばされて尻もちをつくカナ。
赤いスライムは好機と見たか不安定な体勢のカナに襲いかかった。
危ないっ、と目を閉じた私たち。
……だがカナの悲鳴が聞こえることはなかった。
おそるおそる目を開けると、なんと私の元を飛び出したぷるんつがカナの前に立ち塞がり、赤いスライムと組み合っていた。
自分の倍はある赤いスライム相手にぷるんつは押し負けていない。
いや、ぐいぐい押し勝ってさえいるようだ。
「でかしたわ、ぷるんつ!
食らいなさい!!」
カナは棍棒を思い切り振りかぶると、赤いスライムに上から叩きつけた。
赤いスライムは強力な一撃に形が崩れ、そしてマナへと還っていった。
思わぬ強敵の襲撃にへなへなと腰が抜けるオカリナ。
「今の敵、何だったのー……。」
そこにタロンが現れて解説する。
「メグ、おいらが答えるよ!
今の敵はスライム・クリムゾン。火炎耐性のあるスライムの大型種でレベルが高いと火の魔法や火炎放射を行なうよ。
なかなかの強さだったね。」
影のかかった笑みでタロンの頬に手をかける私。
「なんでそんな大事なことを早く言えないかなぁ、君は〜。」
ぐにぐにとタロンの頬を引っぱる私。
なんとか逃れたタロンが言う。
「いてて……。だってメグは聞いてないじゃないか。
それにあまり過保護な口出しはカロス様に控えるよう言われてるんだよ。
冒険者らしく様々な試行錯誤をして成長するのも大事なことなんだよ。」
むむ。
たしかに何でもかんでもタロンに頼る癖がついたら、彼がいなくなった後、私は相当苦労するだろう。
うなづける理屈ではある。
「じゃあ、あと1つ。これだけ教えてちょうだい。
ただのスライムでしかないぷるんつが、大きなクリムゾンと押し合って勝っていたのはなぜなの?」
その質問にもタロンは答えてくれた。
「それは前にアレスさんに勝ったことが理由になるだろうね。
ペットの強さは大きく2つの要素に関わってくるんだ。
1つ目はペット自身のレベルやステータス。
2つ目は飼い主のステータス。
だね。
アレス戦でペットのぷるんつ自身も経験値を得てレベルを上げた。
それにペットが参照する飼い主のステータスはバフデバフがかかる前の本来の基礎値。
弱者必衰がかかっていてもレベルを7も上げたメグの戦闘力は、ぷるんつに大きくプラスの影響を与えていると思うよ。」
君、そんなに強くなってたんだね、とぷるんつを尊敬の目で見るメグ。
「正直、今じゃぷるんつはこの洞窟だとかなり強いほうじゃないかな。
箱入り娘として扱うんじゃなく、しっかり前線に立たせて戦ってもらったほうが、ぷるんつのためにもパーティのためにも良いと思うよ。」
それも早く言ってほしかった情報だ。
私はぷるんつを戦わせたらすぐに教会行きになると思ってしっかり守っていた。
でも今となってはオカリナ1の戦闘力の持ち主といっても過言ではないだろう。
それならぜひとも戦ってもらいたい。
私はぷるんつを抱きかかえるとリュックの上に乗せる。
するとぷるんつは久しぶりに私の頭の上に乗ってしまった。
「あー、これはぷるんつになめられてるね。
モンスターもそこらへんのとこ敏感だからなぁ。
仕方ない仕方ない。」
そのことは解説されなくてもなんとなくわかります。
ぷるんつよ、お願いだからどうか普段だけでも飼い主の顔を立ててちょうだいね。




