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プロローグ

 夢を見ていた。


 黄金に輝く美しい女性が、大きく膨らんだ私のお腹に指を立ててなにか書いている。指が動くたびに、その部分から光が起き、煌めいた。


 私はその女性の顔を必死で見つめた。


 黄金に輝く中で微笑んでいるのがわかった。その微笑みがとても優しかったから、私は安堵し、もう一度腹部に目をやった。


 記号のような、絵のような、不思議な模様がキラキラとオーロラのように輝いている。テレビで見たことがあると思ったけれど、それがなにかわからなかった。


 女性が絵記号を線で囲んだ。

 楕円形の細長い中に収まると、なんだか安定したような気がする。


 俯いていた女性が私に顔を向け、私たちは見つめあった。


 女性は私の耳元に顔を寄せるとなにかを呟いた。そしてもう一度深く微笑むと、スッと消えてしまった。


 ほんの少しの間、私は茫然としていた。

 女性の言葉の意味がわからなかった。

 けれど、お腹の上で七色に輝く絵記号にハッと息をのんだ。


 そうか、そういうことね。そういう意味なのね。

 この子はあの女性の祝福を受けたのだわ!


 目が覚めた。


(早く!)


 起き上がり、本棚からスケッチブックを取り出した。新品のスケッチブックに、たった今、夢で見た絵を描き始めた。


 けっして上手には描き写せなかったけれど、それでも記号は間違えていないと思う。


 満足して見つめていると、お腹が痛み始めた。


「あなた! 栄治えいじさん!」


 夫の名を呼びながら下りていく。


「どうした?」


 リビングから夫の返事が聞こえる。私は彼のもとへ急いだ。


「お腹が……急いで用意するから、お願い」

「えぇっ! わかったっ!」


 夫が慌てて車のキーを手にして部屋から飛びだしていった。


 私はスマートフォンを手にして病院に電話をかける。そしてすでに整えている支度物を持って夫の後を追った。


 それから数時間後、元気な赤ちゃんの泣き声が私たちを包んだ。


 かわいい女の子。


 私たちの愛の結晶、愛しい子、どうか、どうか、幸せになって。


 幸せになって――――



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