8-2. 認めたくない②
「おじさま、ようこそいらっしゃいました! シェーナちゃんとの砂糖吐きそうな甘々新婚生活はどう? 今日はシェーナちゃん、一緒ではないのね? 」
クローディス家で真っ先にラズールを出迎えてくれたのは、メイユ・リーゼロッテ・クローディス ―― ルーナ・シー女史とそのヤンデレ夫シドのひとり娘でかつ、シェーナの親友でもある。ミドルネームのリーゼロッテは女史の友人である王女からもらったもの。
おかげで彼女を、皆が呼んでいるように 『メイリー』 とはなんとなく呼びにくいラズールである。
「そこまで甘々というわけでもないが、別に悪くはないよ、メイ。だがシェーナは今、公爵夫人としてふさわしく、と侍女長に鍛え上げられているところでね。今日は残念ながら一緒ではないんだ」
「おじさまのことだからどうせ、アライダさんに逆らえないんでしょ…… まあ、おひとりなら良かったわ。ちょうど父はまだ工場だもの」
クローディス家ではほぼ家族扱いのラズールがとおされるのは、客間ではなく居間である。
それを、メイの父親であるシド ―― 現クローディス伯爵は非常に嫌がっているが、最愛の妻と娘の意見には勝てないのだ。
良かったわ、とメイが言ったのは 『ラズールが来たせいで物凄くイライラしたあげくに妻に激しく愛情確認をしたがる父を見なくて済んで良かった』 という意味である。
「なら僕は、メイのお父様が帰る前に退散しないとね」
「まるで間男ね、おじさま。あ、そういえば先月号の 『ネーニア・リィラティヌス』 いまいちでしてよ? なんでロティーナちゃんが今さら清純ぶりっこ、って母とも言い合ったの」
「そういう部分はできる限り訂正したつもりだったんだがね…… 」
「ロティーナちゃんは 『俺の女神』 っていわれたらウフッって笑って 『舐めてもいいわよ』 って脚出すタイプでしょ! いくらツンデレ属性があっても 『バカなこと言っちゃって』 なんてこと、絶対に言わない! なんで今さら私がこんなことを言わなきゃいけないのかしら? 」
「返す言葉もないよ…… 本にする前には改稿しておこう。それで、お母様は? 」
「そこ」
メイリーが指さした床の上には、丸まった毛布が転がっていた。毛布の端からふんわりした銀色の髪がはみ出ている。
また徹夜明けか、とラズールは口の両端を上げてみせた。
「困ったね。頼みごとをしにきたんだが、ここで起こすとメイのお父様に申し訳ない」
「おじさまが帰ったあとでまた転がるんじゃない? この前も徹夜して父に叱られてたけれど…… ほんと、原稿なら普通に昼に書けばいいのに、なんで夜なのかしら」
「昼はメイを見ていたい、と昔聞いたことがあるよ」
「寝てたら意味ない! ……お母様、お母様。起きて、おじさまいらしてるわよ」
機嫌をよくした少女がルーナ・シー女史をゆすぶると、まぶたが細く開いた。紫の瞳が一瞬見え、また閉じられる。
女史はごろりと寝返りを打ち、ラズールに背を向けて丸まった。 「あら、ユーベル先生」 と呼かけてくる声も、ぼんやりと眠そうだ。
「間男にきたの? 残念ですけれど一昨日いらっしゃいな」
「とんでもない。きみの安らかな寝顔に癒されていただけだよ、シー先生。起きてみたら目の前にいたのがシドでなくて済まないね」
「………… おーほほほ! 別にガッカリなんてしてなくてよ? 」
図星だったらしい。
ぱっと目を覚まし 『夫以外に見せられないかっこうをしているので失礼』 などと断って毛布にくるまったまま座りなおしたルーナ・シー女史に、メイが 「そんなあざといことおじさまに言っちゃダメ! 想像しちゃうんだから」 と明け透けなツッコミを入れる。いつラズールの脳内をのぞいたのだろう。
ちなみに、女史自身にはそんなつもりは全くないことは、ラズールもメイも承知している。
それはさておき、本来の用件である。
「シー先生とメイは、ワイズデフリン伯爵夫人から誕生日パーティーに招待されているかい? 」
「いいえ。噂には聞いてますけどね…… ワイズデフリンには珍しくご婦人がたを呼ぶ夜会だっていうことは。けれど、わたくしはほら、彼女にとってはリーゼロッテ様の一派でしょ。絶対に招待なんてしないでしょうよ、とりこんでみようとでも思い立たない限りは」
「なるほど、たしかにね。ではしかたないか。邪魔をしたね」
招待されていないのでは協力を頼みようがない、とあっさり引こうとしたラズールに、しかしルーナ・シー女史は 「待って」 と言い出した。
「それって、シェーナちゃんのためでしょ? それに、ワイズデフリンって面白そうなひとよね…… 一度観察してみたいと思ってたのよ。なんとかするわ」
「なんとかするって、どうするつもりだい、シー先生? 」
「シドさんにお願いする。使用人として潜り込んでもらうわ」
「お母様ったら、また、そんな…… 「言っておくけど、シドさんはわたくしのお願いならなんでも喜んで聞いてくれるんですからね? 」
「使用人ならばむしろ助かるが…… 僕がらみではそうもいかないだろう? 」
「だからシェーナちゃんがらみで説得します。うまくいかなきゃ…… 家出するから」
「お母様ったら! お母様が家出してるとき、お父様がどれだけ不機嫌か御存知ないでしょ? 」
「だいたいの想像はついてるわよ? いつもごめんね、メイリー」
けろりとしているルーナ・シー女史の隣で、メイことメイリーが 「もう! 」 と、つぶやいた。
エキセントリックな母親と、その母親を甘やかしまくる父親を両親に持つ彼女は、そのせいでなにかと苦労しているのである。
「でも、ワイズデフリンのオバさんが、シェーナちゃんになにか仕掛けるのは想像つく…… あのひとがシェーナちゃんに嫉妬して怒り狂っている、っていうのは、今けっこうホットな話題なのよね。おじさまが若妻に狂ってベタ甘引きこもり生活を送ってる、っていう噂と一緒に」
「うん。たしかに発狂しそうではあるね。毎晩ガマンの限界を試されているよ」
「やだ、まだガマンしてるの、おじさまったら」
「婚約中だが、結婚はしていないからね」
「そっちも噂にしておいてあげましょうか? 」
「…… うーん。シェーナの名誉のためにはよろしく頼みたいところだが、バレると一部がうるさい」
「わかったわ。じゃあ、バレても困らない界隈でだけ噂にしておくね、おじさま」
「よろしく頼むよ。賢い姪を持つと助かる」
ラズールが冗談めかすと、メイは母親そっくりの華やかな笑い声をあげた。
「シェーナちゃんのためだもの。パーティーの件、私からもお父様にお願いするわね。嫉妬に狂ったオバさんの思いどおりになんか、させないんだから」
「それは有難いね…… まあワイズデフリン伯爵夫人も、シェーナのことはちょっと気にくわない程度だろう、とは思っているが。僕みたいな者相手で嫉妬に狂うわけがない…… だろう? 」
母娘は同時に呆れ返った眼差しをラズールに注いだ。彼女らの返答は、こうである。
「「地獄に落ちるわよ? 」」
「…… 地獄への入口はこの建物の屋上のフチにございますよ。お帰りはどうぞそちらから、公爵閣下」
背後から聞こえてきた底冷えする声に、ラズールは振り返った。
戸口に立ってこちらを睨んでいるのは、ルーナ王国では珍しい黒髪と黒い瞳に、異国の血を感じさせる薄めの顔立ち ―― ルーナ・シー女史のヤンデレ夫こと、クローディス伯爵が帰ってきたのだ。
妻と仲の良いラズールを彼は猛烈に嫌っているが、ラズールにとっては男に嫌われるのは慣れたものだった。
「おじゃましているよ、シド」
「本当にじゃまですよ。さっさとお帰りください」
「あのね、シドさん。お願いがあるのよ」
女史の声が不意に甘い響きを帯びると、メイが顔をしかめ、かわりにシドの凍るような目付きが若干やわらかくなった。
「どうせロクなことじゃないんでしょう」
「ロクなことでもないけど、大したことでもなくてよ、シドさん。使用人になってワイズデフリン邸に潜り込むだけですもの」
「お断りします 「じゃあ家出 「仕方ないですね…… いったいまた、どうしてそんなことに? 」
変わり身の早いヤンデレ夫に、ルーナ・シー女史は 「シェーナちゃんのためよ」 と涼しい顔で言い切った。
「知っているでしょ、メイの親友の、この前まで聖女やってたシェーナちゃん。彼女、ワイズデフリンに目をつけられて今度のパーティーで意地悪されそうなんですって」
「俺の知ったことでは 「お父様。もう一緒にお出掛けしてあげない 「仕方ないですね…… しかし、使用人に扮したところでできることは限られているかと」
「だからって、協力してくれないの、お父様? 」
「メイリー、よく考えてみてください。使用人がパーティーの女主人や客を止められると思いますか? 」
「お父様ならできるでしょ。やっておしまいになってくださいな」
「そうね、シドさんならできるわね、きっと」
妻と娘に焚きつけられて、シドは不機嫌な表情を作りつつもどことなく幸福そうだ。
もっともその顔は、ラズールにも 「そのとおり」 と賛同されたためにすぐ本気でキツいものになったが。
「ワイズデフリンや彼女と結託した客からの嫌がらせなら、僕がシェーナから離れなければある程度は防げる…… だが、裏口までは手が回らない。だから、きみが使用人に扮してくれるならば、大変に助かるよ、シド」
「誤解なさいませんよう、閣下。あなたのためではまったくありませんから…… 裏口とは、何を想定されているんですか? 」
「これから話すことは、今のところ極秘事項なので内密に頼む…… 念のためメモは控えて。頭の中だけにしまっておいてくれるかな」
「はい、おじさま」 「でもほとぼりが冷めたらネタに使っていいでしょう? 」
メイとルーナ・シー女史が口々に答え、シドが無言で侍女たちに目配せした。
使用人がすっかりいなくなるのを待ち、ラズールはノエミ王女の服毒事件のあらましを説明しはじめた。
―― 事件の首謀者としてシェーナがもっとも疑われやすい立場だ、と聞いたメイが眉間にグッとシワを寄せる。
「…… ワイズデフリンがどこまで事件に関わっているかは不明だが、彼女が事件を知っていることは間違いない。そして、それをどう使うかは大体、想像がつく」
「シェーナさんを陥れるために、ということですね、閣下」
「そうだよ、シド ―― それも彼女がタレ込むのはおそらく、騎士団。今はロティの預かりで箝口令が敷かれている件だが、騎士団長が喜んで首をつっこめば早晩、宮廷じゅうに知れ渡ってしまうだろう…… そのきっかけが、おそらくはパーティー中の逮捕劇だよ」
「なんとかならないの、おじさま? ワイズデフリンに色仕掛けで毒を盛るとかして」
「毒入りのキスかい? なかなか素敵だが、残念ながら僕は婚約中なんだよ、メイ。それに、ワイズデフリンひとりを止めればいいというものではない…… 彼女は有力貴族にも大勢の深い知り合いを持っているのでね。公爵家の力をもってすれば彼らを止めることはできるだろうが…… 」
「それをしてしまうと、あとに悪い影響がありすぎる、とそういうことね。ビジネス面はもちろん、シェーナちゃんにも悪評が立つ危険が大きいわ」
「そのとおりだよ、シー先生。理想はあくまで何事も起こさないこと ―― 起こったとしても、ちょっとしたゴタゴタで済ませる …… というわけでシド。改めて協力をお願いしたい」
ルーナ・シー女史は大きな紫の目をさらに丸くして、夫に頭を下げるラズールをじっと見た。
「…… ユーベル先生」
「なんだい、シー先生」
「立派になったわね…… 」
「とてつもなく不本意だがね」
「俺のほうが不本意ですよ」
ちっ、とわざとらしく舌打ちをするシド。
「お礼はするよ。なんなりと」
「では、早めに死んでくだ 「お父様! …… えっとね、おじさま。父はけっこうツンデレでもあるので、これは 『とっとと結婚式あげて幸せになりやがれ』 程度の意味 「なわけがないでしょう、メイリー」
「もう、せっかくフォローしてあげてるのに! 知らないから! じゃね、おじさま。私これからお勉強なの」
メイは弁護士を志しており、法律を猛勉強中なのだ。幼いころにたまたま見物した法廷で弁護士が 『異義あり! 』 とバシバシやりあっていたのがカッコよかったらしい。
ちなみにその法廷、連れていったのはラズールである。
おざなりに淑女の礼をとってから滑るような足取りで去っていく娘の背に 「あとでホットチョコレート持っていってあげるわね、メイリー」 と声をかけ、ルーナ・シー女史は改めてラズールに向き直った。
「ユーベル先生。ここから先は別件なんですけれど」
「なんだい、シー先生。頼み事ならなんなりと引き受けるよ? 」
「ですから早めに死 「…… 黙っていてくださるわね、シドさん? 」 「…… はい」
愛する夫の首に両腕をからめて素早くキスしたルーナ・シー女史は、その姿勢のまま目線だけをラズールに投げかけた。
「アテルスシルヴァのエデルくん。シェーナちゃんとお見合いしてもらってもいいわよ? 我が家に遠慮はいらないわ」
アテルスシルヴァのエデルくん、とはリーゼロッテとアテルスシルヴァ侯爵ヘルムフリート・フォルクマールの長子である。
以前にシェーナの婚約者候補として執事の口からも名前が上がったが 『彼はすでに内々に売約済み』 とラズール自身が却下したことがあった。エデルとメイは友人である母親どうしが決めた婚約者、というのが彼の認識だったのだ。
今のルーナ・シー女史の発言はすなわち、その売却予定先がいきなり 『もしそっちが気に入ったなら、ウチはキャンセルしてもいい』 と持ちかけてきたに等しい ――
「どうしたんだい? メイとエデル、喧嘩でもしたのかい? 」
「あのふたりは喧嘩ならしょっちゅうしているわよ…… でなくてね、あの子たち幼馴染みだけど、そういう意識は全然ないわけ。あの子たちの意思を尊重する以上、親が婚約をごり押しするわけにはいかないわ。だからね、選択肢のひとつとして、シェーナちゃんともありではないかと思うの。
―― リーゼロッテ様も了承されているから、そのうちアテルスシルヴァからクライセンさんにお見合いの打診が行くのではないかしら」
「そうか…… まあ、エデルならばシェーナとは年齢も近いし、性格も身分も財産も申し分ない。父親譲りで少々、かたすぎるところもあるが…… シェーナには彼のような子のほうが向いているだろうね…… だが、メイはどうするんだい。今はまだ、エデルは年下の幼馴染み、程度の感覚なんだろうが、そのうち意識が変わるかもしれないのに。それにそのことで、メイとシェーナの仲が」
「あのね。それで親友とギクシャクするほども、メイリーはエデルくんのことを意識していないわけ。あなたのせいであの子は年上好きなのよ、ユーベル先生」
「僕はなにもしていないがね」
「年上の男性は同年代とは比べものにならないほど大人で心が広くて優しいと信じているわよ、あの子ったら」
わずかに考えて、なるほど、とうなずくラズール。
たしかにメイにはそういうふうに接していた。だがそれはメイが友人の子どもだったからだ。
「ほーら、あなたのせい…… ともかくね、エデルくんにしてもメイリーにしても、選択肢はあったほうがいいと思うのよ。わたくしたち母親の願望は置いておいてね」
「そうか…… そういうことなら、アテルスシルヴァから打診がきたら、有り難く受けさせてもらうことにするよ」
「…… ええ。それがいいと思うわ。じゃね、それだけよ」
「では、ワイズデフリンの件をよろしく頼むよ。シド、ありがとう」
「有り難いと思われるのならさっさと死 「シドさん」
ルーナ・シー女史が背伸びして、唇で夫の口を塞ぐ。
つまりは 『だまらっしゃい』 ということなのだが、その表現の仕方が愛だな、と観察していると、シドの片手がラズールに向かって 『あっち行け』 というように振られた。
ラズールがクローディス家をあとにしたとき、日はまだ高いままだった。
馬車のそばで主人を待っていたマイヤーが、直立不動の姿勢のまま無表情に尋ねる。
「旦那様、このままお戻りになりますか」
「そうだね…… いや、少し王宮前に行こう。シェーナになにか買ってあげたい」
「…… かしこまりました」
マイヤーには見張りもついているが、彼らの役割がただ見て報告するだけである以上は…… 勝手に動かれないようにするためにはやはり、なるべく仕事を与えるに限る。
その判断からの寄り道に過ぎなかったはずの宝飾店で、ラズールは思っていたよりずっと長い時間を過ごすことになってしまった。
似合うものはすぐに判断できても、喜ぶものとなるとなかなかわからない ――
そう考えてしまう程度には、彼はシェーナから塩対応され続けてきたのである。
その原因がまさか自身の心の声にあるとは考えていないラズールは、こちらとしても真実の愛ではあり得ないのだから仕方ない、とシェーナの反応を受け入れてはいた。
だが、できることなら喜ばせてあげたいとも思っているのだ。
―― 緑がかった茶色の瞳には、エメラルドや翡翠は鮮やかすぎて似合わない。補色に近い紫水晶や、どんな色にも合うダイヤ・真珠あたりもいいが、もっともあの瞳を引き立てるのは琥珀 ――
しかし己の片目と同じ色であることで躊躇してしまうラズールである。
並べられたアクセサリーを何度も見比べつつ彼は、エデルとシェーナの見合いに何か瑕疵があるだろうか、と考えていた。
―― エデルフリート・フォルクマール・ド・アテルスシルヴァ。
両親に似て整った容姿を持つ、トシの割には落ちついた14歳 (ラズールが14歳のころはもっと調子に乗った腹立つガキだった) 。
シェーナとは年齢も近く、王族の血が流れる彼はもと聖女の婚約者として申し分がない。
メイとの関係がやはり気にはなるものの、ルーナ・シー女史の説を信用するならば、選択肢のひとつとして見合いする程度はかまわないのではないか ――
(なのに喜ばしいと思えないのは…… そもそも、僕には感情を知覚する能力がないからね)
そう結論づけて、ラズールは琥珀の耳飾りを求め、店をあとにした。
―― だが、せっかく買ったプレゼントをシェーナに渡せたのは、その後、少々の月日が経ってからであった。
それは時間がなかったせいではなく、いざ渡そうとするとその琥珀の色が、独占欲のあらわれのようにラズールには思えたためである。 『独占欲などあるはずもない』 と否定しても、その感覚はなかなか消えてくれなかった。
そんなものを婚約者 (仮) の身につけさせるなど、あり得ないではないか。
―― 周囲からいかに生温い目を向けられようとも。そして、彼自身も己が変化しつつあることを感じないではなかったが、それでも。
この頑固でひねくれものの公爵閣下は、認めたくなかったのだ。