09 運命
結局、我が家に来ちゃいましたよ、モルガナさん。
そして、終始フードを被ったままのモルガナさんにも動じないのは、さすがプリナさん。
いつの間にやら、さらりと帰ってきていたスーミャとイリーシャさん。
日暮れと共に現れたフィグミさんの側には、終日爆睡からようやく目覚めたフィナさん。
つまりは、サイリ家一同、全員集合。
今は、夕飯しながらの和やかな歓談、とても落ち着いた良い雰囲気ですね。
って、ちょっと待った。
ちゃっかりここに居るけど、
スーミャとイリーシャさんは討伐に出かけたばかりでしょ。
ナイトウルフ変異種へのリベンジは?
「せっかくモルガナお姉さんがおうちに来てくれたのに、お出かけしてる場合じゃないでしょ」
……スーミャはこんなこと言ってますけど、討伐依頼の自己都合キャンセルって、ペナルティは無いのですか、イリーシャさん。
「キャンセルでは無いのだ、サイリ殿」
「危険な討伐依頼には万全な体調・精神で臨むことが何より重要」
「心残りを残したままでは剣先も鈍ろうというもの」
「つまりこれは、必要であるがゆえの一時帰還、誰にも恥じるところなど無い!」
はいはい、過保護過保護。
いかに緊急性の無い討伐依頼とはいえ、今後はNGですからね、こんなわがまま。
とりあえず心残りの無いよう、存分にモルガナさんと語り合ってくださいな。
ってか、おふたりにモルガナさんが居ることを教えちゃったのは、誰!
「サイリさんの側は、居心地が良いだけでは無く、食事まで美味しい」
「ここは私にとっての天国?」
はい、極楽気分を満喫中のところ誠に申し訳ございませんが、
モルガナさんはこれからどうなさりたいのか、
"導き手"としてズバリと語っていただきたいのですが。
「時々こちらにおじゃまして、サイリさんのアレに癒されるだけで充分満足」
おじゃまも癒しも全然オッケーですけど、
とりあえず、アレって何?
「うん、なんだか分かっちゃった」
スーミャ?
「確かに癒される、不本意ながら」
イリーシャさん?
「これもサイリさんの才能だよねえ」
フィナさん?
『私が目覚めるくらいのアレですから』
フィグミさん?
「みんなが癒されるのですよ、サイリさんのお側にいるだけで」
プリナさん……
えーと、どうやら僕は、アレな謎電波的なモノを常時放出しており、
特定の人物にはそれが癒しになる、と。
チート召喚者に、さらなる謎能力判明ですよ。
しかし、話しを聞く限り、実に平和的な能力だと思うのですが、
それならなんで、あんなにバイオレンスなイベントばかりが、僕の身の回りに巻き起こるのでしょうか。
「それが、運命、ですよ」
うわっ、めっちゃ占い師っぽいこと言いましたよ、この自称"導き手"さん。
やっぱり本業は占い師なんじゃ……
「たまには私自身を良き方向へと導くご褒美も必要なのです」
何だかはぐらかされたような気もするけど。
でも、考え過ぎてめんどくさくなるよりは、
さらっと流して今を楽しむ。
それが、今の僕の異世界スタイル。
「お風呂どうします、モルガナさん」
おっと、プリナさんがさらっと流せない発言を。
なぜならモルガナさんのフードの下の素顔は、いまだ未見。
さすがに着たままじゃ入れませんよね、お風呂。
「サイリさんが、お風呂をとても覗きたがっているので、今日は『清浄』魔法で」
おっと、みんなの視線を一身に浴びて、サイリ困っちゃうっ。
……こんな視線を家族全員から向けられて、どうして平気でいられるのでしょう、アランさんは。




