07 休憩
各ギルドへの挨拶回りもひと段落、ようやく落ち着きました。
あれだけの騒ぎを起こした僕にも関わらず、
皆さんから以前と同じように接していただけたことに、恐縮することしきり。
気が付くととっくにお昼過ぎ、さて、これからどうしましょうか。
今日は終日お出かけしてきますと、プリナさんに告げております。
つまりは、お目付け役から解放されて、ひとりで何でもやりたい放題!
って、やりませんよ、ひとりはっちゃけなんて。
あのやらかしからようやく落ち着いてきたのに、再炎上などもってのほか、でしょ。
ってか、ひさびさの王都の人混みでふらふらですっての。
身体強化の付与をしていない時の僕は、見た目通りの立派なひょろ男。
この人混みから逃れるためにも、どっかでゆるりと休息せねば。
……
喫茶店ちっくなお店のオープンテラス、の隅っこで、隠れるようにして休憩中。
これ以上おしゃれだったら入りづらく、これ以上意識高い系だと居づらくなるという、絶妙な居心地のお店。
店員さんの距離感も、実に僕好み。
脳内ブックマークしておいて、後でプリナさんを誘っちゃおうかなって妄想しちゃうくらいに、お気に入りのお店になりました。
プリナさんとは、何と言いますか、気兼ねしないで気を遣い合える関係なのです。
ちょっとした味付けの好みとかが一緒だったり、
花壇で見惚れていたのが同じお花だったり、
楽しいや気持ち良いのベクトルが似ているのかな。
つまり、プリナさんもきっとここを気に入ってくれるだろうなってこと。
「……興味深い」
いえいえ、お構いなく。
って、どなた?
……
いつの間にやら同席されていたのは、
だぼだぼローブのフードを目深に被ったお嬢さん。
お顔がよく見えないのにお嬢さん判定したのは、
身体つきと声の感じと、何よりも、綺麗な瞳のせい。
って、本当にどちらさま?
「初めまして、モルガナです」
初めまして、サイリです。
って、初めましてなのに、何だか距離感が近いような。
いや、それより、どっかで聞いたことあるお名前のような。
「スーミャさん、お元気?」
はい、おかげさまで、天下無双の元気っ娘ですよ。
って、スーミャのお知り合いですか。
「サイリさんて、聞いていた通りの呑気さん」
いえ、それほどでも。
って、誰からお聞きになったかは存じませんが、面と向かって呑気さん呼ばわりは、照れると言いますか、ヘコむと言いますか……
……思い出した!
謎の占い師、モルガナさん!
「はい、謎の占い師、モルガナです」
えーと、ごめんなさい。
いきなり謎呼ばわりは、失礼にも程がありますよね。
「良いのですよ、そういう風に見えるよう振る舞ってますから」
なるほど、謎であることで占い師としてのプレミア感アップ、と。
はい、それではモルガナさん。
どうやら偶然では無さそうですし、
こうして向かい合ってるってことは、
僕に何かご用事でも。
「お茶、ご一緒しませんか」




