01 静謐
『リヴァイス 55 若仙人とやらかし合いの罪と罰』の続きで、
『若仙人』サイリのお話しです。
お楽しみいただければ幸いです。
こんにちは、イシン サイリです。
何かと問題に悩まされてきた異世界生活ですが、
良い感じに吹っ切れたと言いますか、自信を持って開き直れたと言いますか、
つまりは、どーにでもなーれ精神に乗っ取って、ユルーく満喫中。
もちろん、家族友人のピンチの際には、荒ぶるジェノサイド"若仙人"として、
牙を剥き出しにして襲い掛かっちゃいますよ、誰かれ構わず。
おかげさまで、社会の暗黙のルールなんていう面倒ごとには擦り寄る気なんてさらさらナッシングな危険人物であることは、世間さまに広く周知されております。
エルサニア大森林の奥にひっそりと佇む静謐な我が家で、わずらわしい訪問客なんかに悩まされることなく、
悠々自適な隠遁生活を楽しむことが出来ているのです……
「キャーッ」
「イリーシャお姉さんが次のオニッ」
「みんな、にげろー」
……えーと、静かな隠遁生活、
「多勢に無勢で襲い掛かるなど、いかに幼子とはいえ許し難き暴挙」
「スーミャが統率力を発揮しているのを見るのは何より嬉しいが」
「ここでの敗北はリグラルト式鬼ごっこでの敗北のみならず、騎士道精神そのものへの背信行為」
「必ずやひとり残らず引導を渡してくれるっ」
「キャーッ」×いっぱい
えーと、現在我が家に、リグラルト王国にある『ヴェルクリの家』という孤児院で暮らしている子供たちが来訪中。
以前、そこに勤務しているスズナさんにお願いごとをした際、孤児院のお手伝いとしてイリーシャさんがご指名されまして。
ご存知の通り、保護者気質高めで可愛いモノ好き性癖ダダ漏れのイリーシャさんは、保母さんちっくなお仕事にどハマり。
見た目はちっちゃくて可愛らしいのにやたらと頼りになるというイリーシャさんのギャップ属性が、子供たちのツボにどハマり。
つまりは、ウィンウィンにも程があろうってくらいに仲良しさんになっちゃったわけで。
スズナさん不在の孤児院に侵入した不審者を完膚無きまでに叩きのめしたイリーシャさん、その変質者を死ぬより辛い目に合わせたそうですが、ナニしたんでしょうね。
まあ、そんなこんなで、我が家に子供たちが来襲することとなった次第であります。
それにしても、イリーシャお姉さん、オトナ気なしの容赦ナシ。
身体はちっちゃいのに出るとこ出てるんだから、子供たちと一緒になって跳ね回っちゃダメでしょ、まったく。
「皆さーん、おやつの用意が出来ましたよー」
「はーい」×みなさん
えーと、ご覧の通り、プリナさんはもろ手をあげての歓迎っぷり。
優しさ無限大ですが甘やかし一辺倒では無い、凛とした可愛らしさに溢れたプリナさんに、子供たちも懐いてるわけで。
つまりは、ウィンウィンにも程があろうってくらいに仲良しさんなわけで。
「スーミャちゃん、ずるーい。 カップケーキいっこ多く食べた!」
「ふごふふふぐふご」
「飲み込んでから喋ってください、スーミャ」
「ゴックン」
「スーミャはオトナだから、いっこ多く食べてあたりまえだしっ。 だよね、イリーシャ」
「えー、オトナはそんなズルしちゃダメなんだよっ、だよねっ、イリーシャお姉さん」
「サイリ殿、助けてほしい……」
いや、イリーシャさん。
本当に助けが必要ですか、そんなうれしそうな困り顔。
そういうのはあっちの世界では"爆発しろ案件"って呼ばれていて、関わると損をするのはコッチなんですよ。
つまりは、触らぬカワイイ集団にタタリナシ。
「駄目ですよ、サイリさん」
「この家のお父さんなのですから、みんなの困りごとは優しく解決してあげないと」
かしこまりました、この家のお母さんことプリナさんのお言いつけとあらば、問題解決に全身全霊を持って取り組む所存。
って、僕の取っておいたカップケーキを食べたの、誰!
「ごちそうさまっ」×大勢
蜘蛛の子を散らすとはまさにこのこと。
あっという間にお庭のテーブルは、空っぽの大皿とたくさんの空コップと、僕とプリナさんのふたりきり……
全く困ったものですね、プリナさん。
スーミャはともかく、イリーシャさんまで子供たちと一緒になって大はしゃぎ、ですよ。
って、プリナさん?
「……」
うん、真っ赤っかなプリナさんは、相変わらずの可愛さマキシマム。
お母さん呼びでりんごほっぺになってくださったプリナさんに、限りなき感謝を。
リグラルト式鬼ごっこを再開したカワイイ集団と、言わずと知れた可愛さ炸裂メイド、プリナさん。
つまり、我が家は現在、カワイイが溢れかえっていて飽和状態。
よきかな。
ちなみに、元祖ちっちゃカワイイペアことフィナさんとフィグミさんは、
施錠された僕の部屋のダブルサイズマイクロハンモックで密やかに熟睡中。
おふたりが子供たちに見つかったらエラいことになること間違いナシッ、
なので、事前に避難させていたのです。
さすがは家長、神経か細いだけじゃなく、しっかりと気遣い出来ております。
やるじゃん、僕。
ってな感じでのんびりさせてもらっております、長期謹慎空けの我が家。
でもそろそろみんなも、遊んでばっかじゃなくて、社会復帰、しないと、ね。




