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I am Aegis / Origin 1  作者: アジフライ
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第4話【風の種族】

前回、 シュラスから様々な魔法を授かったエルは夕食が足りないと言ってシュラスの行き付けの喫茶店へ向かうことにした。

「ここって確かシュラスさんの行き付けなんですよね? 」

「そうだ……ここの酒は他の所と違って美味い……この街に来た時は必ず通っているくらいだ……」

お酒かぁ……私一応成人してるけど苦手なんだよなぁ……

そんなことを思いながらもエルはシュラスにつられて喫茶店へ入った。

すると店内は昼と違い、 辺りはランタンで照らされ、 周りの植物が月明りに反射して不思議な光を放っていた。

それは正に幻想的な光景だった。

「あ、 いらっしゃい……来たのね」

カウンターで昼間の女性店員が食器を洗って待っていた。

あの人……昼間の……

「昼と夜では別の店だからな……来る分には困らんだろう? 」

「まぁいいわ、 儲かる分には構わないしね……ところでそこの女の子は? 」

女性店員はエルを見た。

「あ、 ど……どうも……」

「……シュラス……あなたまさか……」

女性店員はシュラスを疑いの目で見た。

「違う……ただのパーティ仲間だ……俺と組みたいと自分から志願したんだ」

シュラスがそう言うと女性店員は再びエルを見た。

「ほ、 本当です! 私がシュラスさんにお願いしたんです! 」

「……フフフッ、 分かってるわよ……シュラスはそんな器じゃないものね」

「分かっているならそんな目で俺を見るな……」

そんな会話をしながらシュラスとエルはカウンター席に着いた。

「さて、 冗談はここまでにして……シュラスはいつものでいいわね? 」

「あぁ……」

「えぇと……あなた……名前は? 」

「あ……エルって言います」

「エルちゃんね……あなたは……お酒って感じじゃないわね……ミルクティーでいいかしら? 」

「は、 はい」

そして女性店員は準備を始めた。

……こういうバーみたいな場所……憧れてたけど実際来てみるとすごく緊張する……

そんなことを考えながらエルは辺りをキョロキョロと見回しながら店内を見た。

しばらくして女性店員は二人に酒とミルクティーを出してきた。

「はい、 お待たせ! 」

「そうだ……エルが夕飯が足りないと言っているんでな……何か簡単なものを頼めるか? 」

「了解!」

そして女性店員は厨房へ入っていった。

数分後……

「さぁお待たせ! 昼の残り物をアレンジした奴だけど……」

そう言って出されたのは野菜スープだった。

う……匂いの時点で美味しそう……

そう思いながらエルはスープを一口すすった。

「……ほわぁぁ……! 」

凄くおいしい……優しい舌ざわりに味……心が安らぐ……

エルはスープの味に感動した。

「ふっふっふ……期待通りのリアクションね……この店の常連になってくれれば特別メニューを出すんだけどなぁ……」

「ふぇっ! ? 」

特別メニュー……! こんなの放っておけない!

エルは食べることが好きなのである。

「……また相手に美味い話を持ってきて客足を増やそうって魂胆だろう……」

「あらぁ何の事かしら? 」

「そ……それでも美味しいものには勝てません! 」

エルがそう言うと女性店員は大笑いした。

「あはははっ! エルちゃん中々面白い子だね、 魔力量もかなりのものだし面白い魔法も沢山使えそうだね」

「え……どうして私の魔力量が分かるんですか? 」

この世界では通常、 魔力量を見たり感じ取ったりするには専用の道具を使わなくてはいけないのだ。

エルが驚いているとシュラスが答えた。

「……彼女は精霊族の血を継いでいるから当然だ……」

「せ、 精霊族! ? 」

「あぁそれ私が言おうとしてたのに! 」

精霊族、 それはこの世界では大昔、 人間の手によって姿を消してしまった幻の種族である。

精霊族は大昔から特殊な能力を持っており、 代々自然界の秩序を保ってきていたとされる。

そしてその特徴な能力の内の一つ、 先程女性店員がやって見せた魔力感知の能力である。

精霊族は空間に漂う魔力を操ることで自然界に存在する力を扱える。 そしてそれを元にして生まれた能力が魔力感知能力である。

基本は空間の魔力量を測定するのが限界とされているが、 精霊族の王の血を持つ者のみ生物の魔力を感知することができるのだ。

女性店員はそんな血を持っている者にしか扱えない能力を持っていたのだ。

「で……でも精霊族はもう……」

「まぁね、 精霊族のほとんどはもう全滅しちゃってる……でも彼らは隠れながら人間の手から逃れていたの……」

精霊族は先程言ったように、 人間には持ち合わせていない能力を持っている。

それを目当てに研究し、 我が物にしようとした人間たちが存在したのだ。

その人間達は自身の作った兵器を使い精霊族を捕らえ、 人体実験をしたり見世物として売り払ったり等をした。

その結果、 精霊族のほとんどは絶滅してしまったのである。

「ま、 今はもうその組織は国によって壊滅させられたけどね……私の先祖は風の民だからその種族の末裔は私くらいしかいないかもだけど……」

「風の民って……あの……」

精霊族には全部で六つの種族に分かれているのだ。

火、 水、 大地、 雷、 氷……そして風の民と分かれており、 その中で風の民、 水の民、 大地の民は滅んでしまったとされている。

風の民、 水の民、 土の民は火、 雷、 氷の民とは違い、 温厚的かつ戦力もそれほど高くは無かったため、 標的にされやすかったのだ。

火、 雷、 氷の民は戦闘民族でもあったため、 精霊族を狙う人間と戦うことが出来たのだ。

そのため現在はその種族達は僅かながらにどこかで隠れて暮らしていると言われている。

「まぁ確認されていないだけで私以外にも水の民やら土の民の末裔は探せば見つかるかもね」

「凄いです……そんな珍しい種族の末裔だなんて……」

エルが感心していると女性店員はある提案をした。

「……ねぇ、 エルちゃんって中々見込みがあるように見えるんだよねぇ……良ければ私の使う精神族の魔法の力を使えるようにしてあげようか? 」

「えっ、 いいんですかそんな貴重な……! ? 」

「精霊族の末裔って言っても私はただの喫茶店の店主だからね……私が知っていたってそんなに役立てる事もできないし……なら冒険者に使ってもらった方が先祖達も喜ぶと思うの……いかにも優しそうなエルちゃんなら尚更よ……」

「そ……そうですか……では……是非お願いします! 」

精霊族の魔法を教えてもらえるなんてこんな機会滅多にないし……

すると女性店員は微笑んだ。

「よぉし! そうとなれば早速明日から練習するよ! あ、 私グラス・エメラルドね。 エメとでも呼んでね! 」

「エメさん……よろしくお願いします! 」

「という事でシュラス、 勝手に話を進めちゃったけどエルちゃんをしばらく借りてもいい? 」

「構わん……戦闘能力の向上は危険な旅には必要な要素だ……」

シュラスの承認を得たグラスとエルは早速明日、 訓練を始めることにした。

「……さて、 そろそろお暇させてもらおうか……俺はまだやることがある、 エルは先に宿へ行ってて構わないからな……」

「あ、 はい! 」

そう言うとシュラスは店を後にした。

シュラスが去った後、 エルとグラスはしばらく話した。

「……エルちゃん、 シュラスのことどう思う? 」

「え、 えぇっ! ……どうって言われても……」

グラスの突然の質問にエルは言葉を詰まらせる。

シュラスさんと会ってまだ間もないし……どうって聞かれても……

「まぁ、 まだ分からないわよねぇ……でも気を付けなよぉ? アイツたまに冷たい事言うから……」

「そ……そうなんですか……? 」

エルが少し怖じ気付くとグラスは笑った。

「フフッ……まぁでも……それ以上にアイツは優しい一面もあるから……」

「あ、 それは分かります! シュラスさんって噂よりも怖い人じゃありませんでしたし、 魔物にも優しくてそれで……ハッ! ///」

「フフフ……エルちゃんシュラスに惚れちゃってたりしてぇ……」

「ち、 違います! ! ただ尊敬しているだけです! ! ///」

エルは顔を赤くしながら言った。

「あははっ……それくらい元気なら明日からの訓練が楽しみね……さぁ、 明日は朝早くから訓練を始めるからそろそろ寝た方がいいわ」

「あ、 そうですね……じゃあ、 また明日! 」

そしてエルは店を出て行った。

「……シュラス……あの子を旅に連れて行くなら……アンタがしかっり守ってやってよ……」

静まり返った喫茶店の中でグラスは窓の外に浮かぶ月を眺めながら静かに呟いた。

…………

その頃、 シュラスは高い建物の屋根の上で一人、 カルスターラの街を眺めていた。

「……」

しばらく街を眺めていたシュラスは何かを見つけ、 そこに向かって建物の屋根を伝って向かった。

とある路地裏……

酒に酔った二人の男が肩を組みながら迷い込んだ。

「うぅ……今夜は飲み過ぎたかぁ……? 」

「たまにゃいんだよたまには……」

そう言いながら男二人は路地裏の奥へ入ると突然地面から黒い影のような人型の怪物が現れた。

「うわぁ! 」

「な、 なんだぁ! ? 」

男二人は驚いて逃げようとするも酒に酔っていて足が上手く動かない。

そして謎の怪物は男二人に襲い掛かろうとした。

『うわぁぁぁぁぁぁぁ! ! ! 』

次の瞬間、 怪物の頭上から何者かが剣を突き立て降りてきた。

シュラスだ。

「……」

シュラスは剣を怪物の心臓に突き刺した。

すると怪物は倒れそのまま灰のように消えてしまった。

「……この事は誰にも言うな……」

「は……はい……助かりました……! 」

そして男二人はその場を去った。

何もいなくなった路地裏の真ん中でシュラスは剣をしまい、 地面を調べた。

「……かなり不安定になってきているな……今夜は多くなりそうだ……」

そう呟くとシュラスは再び建物の屋根に上り、 その場を去った。

先程の怪物は一体何だったのか……シュラスは何をしようとしているのか……それは後々明かされることになる……カルスターラの危機と共に……

続く……


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