プロローグ
皆は一度でも考えたことがあるだろうか……
この世の全ての始まりは何か……
それは地球に留まらず……
星……宇宙……空間……時間……物体……生命……感情……
そして運命までも……
それらの数え切れない程のモノ、 概念は一体どこから始まったのか……
普通ならば『神』という得体の知れない存在と答えるだろう……
しかし……もし、 その全ての起源と思われている『神』という存在をも創り上げた存在がいるとしたら……
『神をも越える絶対的存在』
その存在は……まず『無』という概念を生み出し、 次に『光』と『影』という概念を生み出した……
その存在は一つに在らず、 二つだった……一つは影、 もう一つは光として存在することにした……
次に二つの存在は時間……空間……音……感情……と、 次々と概念を生み出していった……
そして二つの存在は最初に『神の世』という世界を創り、 後に『神』という存在を創り上げた……
二つはやがて二人と称されるようになり、 お互いに名を付けた……
影は《シュラス》
光は《フィーラ》
となった……
この時、 初めて愛という概念が生まれた……
二人は幸せだった……二人は仲良く……『神の世』で共に暮らし続ける……そう思っていた……
あの時までは……
・
・
・
「シュラス! ! 目を覚まして! ! ! 」
「全て……終わらせる……」
禍々しい漆黒の炎が辺り一面で燃え盛る光景が広がっていた……
シュラスはフィーラが生み出した『心』というモノを理解できなかった……そして何時しか自身の愛する者を理解出来ていないのではないかという罪悪感からシュラスの中に『影』が生まれ、 暴走を起こしてしまったのだ……
その『影』は正にシュラスに近い力を宿していた……
「このままじゃ……神の世は愚か……この世の全てをも『無』に還ってしまう……! 」
「この世も……概念も……全て終わらせる! ! 」
そう言ってシュラスは別次元へと飛び立とうとした時だった……
「駄目ッ! ! ! ! 」
フィーラはシュラスを止めようと背後から抱き締めた。
するとシュラスはフィーラの方へ振り向き、 フィーラの胸を腕で突き刺した。
フィーラの胸から一瞬にして漆黒の炎が広がり、 その傷口はもはやフィーラの力でさえも治癒が不可能な状態となってしまった……
しかし……
「……ッ! フィーラ! ! ! 」
自らの感覚のみで自分のしたことに気付いたシュラスは感情が高ぶり、 無意識の内に『影』を封じ込めることに成功したのだ。
シュラスは倒れたフィーラを抱き抱えた。
「フィーラ……あぁ……フィーラ……! 」
「う……シュラ……ス……良か……た……」
シュラスは必死に傷口を治そうとしたがもはや手遅れだった……
「何てことだ……フィーラ……俺のせいで……」
「泣かない……で……シュラス……あなたが……戻ってきてくれただけで……十分……」
シュラスは嘆き悲しんだ、 目の前の愛する者を救えない己の弱さ……そしてこの事態を招いてしまった己の未熟さに……
「シュラス……」
「……何だ……? 」
「~~~~~~~…………」
感情がめちゃくちゃになっていたシュラスはこの時、 フィーラの言っていた言葉が聞こえていなかった……
そして……
「愛してる……」
その言葉を最後にフィーラは光となって消えてしまった。
その時シュラスは声にならない程に嘆き続けた……
それと同時にシュラスは誓った。
「もう……二度とこんな事にはさせない……! ! 」
そしてシュラスは自身を成長させること……そして『心』とは何かを知ることを誓った……
この物語は、 悲しき起源と氷炎の魔法使いの冒険物語であり……
『全て』を賭けた戦いの始まりである……