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出会いの朝5


 オレは別に体に痛みなどは感じてはいなかった。呪われていないかと聞かれても、今まで一度も呪われたことがなかったので、呪われているかどうか分からなかった。

「特に何も、変わったところは無いような」

 オレの言葉を聞くと男はうつむいて黙り込んでしまった。

 男が何を考えているのかは分からないが、指輪が抜けないなら指を切り落とせなんて事は流石に言わないだろうけど、指輪が抜けないんだから買い取れと言うかもしれない。

 こんな指輪を買う金はオレには無いし、うちの家にもあるはずは無い。

 どうしたら、うまく切り抜けられるだろうか。

 金が無いなら、金に代わるものは何だろう。

 そうだ、いいことを思いついた。

 すべて丸く収まる良い方法だ。

「オレをこの店で働かせてください」

 男はオレの言葉を聞くと顔をあげ、こっちに向けて、

「お前、何を言ってるんだ、どうして、そうなる」

「この店は店員の募集してるから、オレがここで働きながら、そのうち指輪も外れるはずだし」

 オレは店員募集と書いていた板をぶらさげていた扉の方を指さした。

「それに、ここで働いたら鑑定スキルを身につけることもできるはずだから」

 オレは自分がこの店で働きたい本当の理由を正直に話した。

 変に隠し事をすると、オレは人の顔をまともに見れなくなるクセがあると、テッドに言われてから隠し事はしないようにしている。

 男は考え込むように腕組みをして唸りはじめた。

 すると、オレの後ろから声がした。

「雇ってやれば、良いじゃないか」

 オレが振り返ると、そこには一人の男が立っていた。

 その人は黒い髪の色や顔つきがどことなく店の男と似ているような気がした。

 違うのはヒゲを生やしていないところと長い髪を後ろで束ねてるところだろうか。

 いつの間に店に入ってきたのか。扉の開く音も聞こえなかった。

 その人はにっこり微笑むとオレの脇を通りすぎ、椅子に座った男に近づいた。

 そして耳元で何かをささやいたようだ。

 オレにはまったく聞こえなかった。

 椅子に座った男は何を聞かされたか知らないが、ガックリと肩を落とし天井を見上げた。

 そして、「好きにしろ」と言って椅子から立ちあがると店の奥に姿を消してしまった。

 どうなったのかな。

 好きにしろってことはオレを雇ってくれるということかな。

「オレ、ここで雇ってもらえるんですか」

「そういうことになるね。俺はウェインだ。よろしく」

「はじめまして、オレはアルフレッド・フリードといいます。みんなからはアルって呼ばれてます。それでさっきの人はなんていう名前ですか」

「そうか、まだ名乗ってなかったんだね。彼の名はマイク・バロー。この店の主人だよ。それと俺もこの店で働いている」

 ウェインは、そう話すと店では古い品物を引き取って売っていることや、壊れたような物は修理してから店に並べることなど教えてくれた。

 何かわからないことがあったら何でも聞くように言ってくれた。

 明日来た時に店長から色々教えてもらうことになるだろうと言った。

 そして今日はひとまず帰って明日の朝から店に来るようにと言われた。

 オレはウェインに別れを言って店を出た。

 振り返って店を見た。

 明日から、ここで働くことになるんだ。

 でも、この指輪のこともあるから。給金は、かなり安いかもしれない。

 というより、給金自体もらえないかもしれない。

 ここはいったん給金のことは考えないことにしよう。

 まずは、この店で経験を積んで鑑定スキルを覚醒させることが目標だ。

 それまでは我慢して働き続けなければならない。

 それと、この指輪を外す方法を考えないといけない。

 どうやら呪われてはいないようだけど、一生このまま抜けないなんて考えただけでも、ゾッとしてくる。

 テッドなら何か知ってるかもしれない。他の仲間にも何か知ってる奴がいるかもしれない。

 ギルドに行けば今頃誰かがいるはずだ。

 オレは早速ギルドに足を向けることにした。


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