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出会いの朝3


 オレは迷うことなく奴の跡を追った。

 どうしても聞きたいことがあった。

 それは鑑定スキルについてだ。

 鑑定スキルはレベルがあがると物に触れることなく物の情報を知ることができることまではわかった。

 オレの知りたいことは、それが物だけでなく、モンスターのようなものでも同じように情報を知ることができるのかが知りたかった。

 戦闘になる前に敵の情報を知っていれば、それだけ有利に戦うことができる。

 それに到底勝ち目のないような敵との戦闘を避けることもできる。

 そして、もしアイツ自身が鑑定のスキルを持っているなら、どうやって、そのスキルを手に入れ、どうやったらレベルを上げられるのかが聞きたい。

 オレは見失わないように急いで人混みをかき分け、男を追った。

 幸い人が多いので跡をつけていることは気づかれないだろう。

 いっそのこと、今男に追いついて、鑑定スキルにことについて質問したいところだが、

 男が正直にオレの質問に答えてくれるとは限らない。

「俺は鑑定スキルなんて知りません」と言われば、それ以上問いただす方法がない。

 あの男が、素直に話してくれないなら、話してくれるまで何度でも聞きに行ってやる。

 そのためにもアイツの家がどこにあるのか知っておく必要がある。

 男は商店街に出ると裏通りに向かった。

 裏通りには商店街の店よりも小さなこじんまりとした店が建ち並んでいた。

 裏通りに入ると人通りも少なくなってきたので、男に近づきすぎないようにしないと気づかれてしまう。

 オレは建物の影から頭だけを覗かせ男を目で追った。

 ある店の前で男が立ち止まった。

 すると男は鍵を開け店の中に入っていった。

 あの店で働いているのかもしれないな。

 オレも店の前まで行き、掛かっている看板を見ると、「古道具屋 マイク・バロー」と書かれいた。

 商店街はよく通るけど、この通りには、あまり来ないのでこんな店があることは知らなかった。

 店の扉に目をやると、店員募集と書かれた板が掛けてあった。

 扉の横の窓から店の中を覗いたけど、男の姿はなかった。

 店の奥に行ってしまったようだ。

 どうしてもあの男に鑑定スキルの話を聞かなければならない。

 思い切って、扉に手をかけてみた。

 鍵は掛かっていなかった。

 扉を開け中に入ると、店の中はそれほど広くなかったが、色々な品物が置いてあった。

 タンス、鏡、鉄の鍋、皿など実用的な物が多いようだ。

 少しだけ古着も壁にかかっている。

 でも、どれも丁寧に手入れされていることがよくわかった。

 タンスも傷のあったところにヤスリをかけて傷を消し、タンス全体にニスを塗って綺麗に見えるようにしてある。

 鏡も曇りひとつなく綺麗に拭いてあった。

 表通りの古道具屋にも負けないように見える。

 オレが店の中の品物を見ていると、店の扉を乱暴に叩く音がした。

 反射的にタンスの影に隠れてしまった。

 すると、誰かが店の中に入ってきた。

 タンスの影から誰が来たのかと見てみると、人相に悪そうな二人の男だった。

 一人は筋肉質の大きな男で、もう一人は背の低い小太りの男だった。

 大男の方は武器こそ持っていないが身につけた鉄の鎧で冒険者だとすぐにわかった。

 もう一人は鎧は着けていない。薄手のシャツにズボンと見るからに街のゴロツキというような服装だ。

 大男は店のカウンターの前まで来ると、

「ここに魔法の武器があるって聞いてきた。オレにも貸してくれ」

 と店の奥に怒鳴るように叫ぶと、カウンターを思いっきり強く拳で叩きはじめた。

 しばらく叩いていると、店の奥から前掛け姿の男が現れた。

 間違いない、さっき蚤の市でオレに声をかけた男だ。

 背はオレより高いが筋骨隆々といった感じはしなかった。

 歳は三十歳ぐらいだろうか。短い黒髪で顔にうっすらと無精髭を生やしている。

「うるさいぞ。そんなに叩かなくても聞こえてるよ」

 男は大男を両手でなだめるような仕草をして叩くことをやめさせた。

「ここで魔法の武器を貸してくれるそうだな。俺に魔法のバスターソードを貸してくれ」

 大男は早くよこせと言うように手を差し出してきた。

「誰に聞いたか知らないが、貸すか貸さないかを決めるのは客じゃない。俺だ。お前には貸さない。トットと帰れ」

 店の男は、それだけ言うと店の奥に戻ってしまった。

 大男は頭にきたように、さっきよりも激しくカウンターを叩き出した。

 すると店の男がものすごい勢いで店の奥から飛び出して、カウンターを飛び越えて大男の胸に蹴りを入れた。

 蹴りをくらった大男は後ろに転がっていき、動かなくなってしまった。

 鉄の鎧の胸元にはクッキリと蹴りの跡がついて、へこんでいた。

 大男はぐったりとしているだけで死んではいない、どうやら気を失ったようだ。

 小太りの男があわてて駆け寄るが完全にのびてしまったようで揺さぶっても反応しない。

 それを冷ややかに見下ろしていた店の男がゆっくりと店の扉に近づいて戸を開け放った。

 そして寝ている大男の襟首を掴むと、荷物を引きずるように軽々と男を店の外に放り出した。

 小太りの男も慌てて店の外に飛び出し大男のそばで恨めしそうに店の男を睨みつけた。

「そいつが目を覚ましたら、うちにもう来ないように言っておけ」

 店の男はそれだけ言うと戸をバタンと閉めた。


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