墓地の戦い1
ここは日の暮れかかった墓地。
墓地の前にある大きな岩の影に四人の人間が身を潜めていた。
「もうすぐ陽が落ちる。装備の確認をしておこうぜ」
仲間のテッドが、みんなに声をかけた。
オレは左手に持った盾の具合を確かめた。
木でできた丸い盾は木を補強するための鉄が錆びついて、木の部分がぐらついてきていた。
この盾で敵の攻撃が後どれぐらい防ぐことができるか。
強烈な一撃でも食らったら壊れそうな気がしてしまう。
早いとこもっといい盾がほしいところだが、いかんせん懐が寂しく買うことができやしない。
騙し騙し修理をしながら大事に使ってきたが、ここまでサビが回ってきたら修理しても使い物にならない。もう捨てるしかないだろう。
まあ、それでも今日だけは持ち堪えてくれるように祈るしかない。
そして、左の腰につけた剣を鞘から抜いて、刃こぼれがないことを確かめる。
この剣も、かなり使い込んで少しくたびれてはいるが、オレの手に馴染んで使い勝手の良い相棒だ。
だが、今日の相手はこの剣ではなく、右の腰にぶら下げてあるメイスで戦うことになるだろう。
このメイスは鉄でできている棍棒である。
木製の棍棒と違って、かなりの重さがあり、破壊力は抜群である。特に鉄の鎧などを身に纏った騎士や、特定のモンスターなどには威力を発揮する。
オレの装備は、この他に皮の鎧ぐらいで身軽なものだ。
それに比べて、オレの前にいるウィルはかなりの重装備だ。
シールドマスターのウィルは、この冒険者のパーティーで敵の攻撃を引きつけると言う役目の為に、どうしても重装備になってしまう。
鉄の鎧を身につけ、さらに身の丈ほどの大きさの鉄の盾を持たなければならない。
そのために迂闊に地面に腰を下ろすこともできない。
何もない地面に腰を下そうものなら鎧の重みで後ろへ転がることになってしまう。
だから今でも、重い鎧を着たまま立っている。
それでなくても、ウィルは背が低く体格もシールドマスター向きの筋肉隆々には程遠い。
それでも本人は、今は亡き父親のようになりたいと思ってシールドマスターになることを決めた。
本当は父親が身につけていた鎧を着たかったが、今のウィルでは父親の鎧は大き過ぎるので形見の鎧を着ることはできない。
今のウィルに体に合わせた装備でさえ動くのが、やっとといったところだ。
だから、装備が重すぎるので、どうしても武器は、軽いものになってしまう。
そのためにショートソードぐらい持てない。
それに引き換え、その隣にいる魔法使いは、身軽そのものだ。
うちのパーティーの紅一点、パムは赤く伸びた髪を後ろでくくっている。
そして、普段着の上にローブを着込んだだけだ。
本人曰く、鎧を着ると呪文の詠唱に集中できなくなると言っているが、敵の攻撃を防ぐために薄手の皮の鎧でも着れば良いのに全然、オレの言うことを聞こうとはしない。
昔から頑固で、この頃は妙に怒りっぽくなってきたような気がする。
あっ、今、目が合ってしまった。
「アル、何見てんの、何な言いたいことでもあるの?」
「別に」
怖い怖い。また怒られそうだ。
オレはにっこり笑って誤魔化して見せた。
そして、オレの隣にいるのが最も頼りになる我らのテッドだ。
テッドのジョブはレンジャーでパーティーの目になり耳になって敵の接近や探索に力を発揮する。
レンジャーは、その主な役割が敵の索敵などのために動き回ったりしなければならないので装備はどうしても機動性を優先するので鎧も薄い皮になってしまい、武器も弓や、ダガーのような小振の剣しか持てない。
それでもテッドは敵との戦い方を考えたりと、このパーティーになくてはならない存在だ。
それにこいつには戦いにおいての立ち回りやモンスターの知識などにおいてもオレよりも優秀で何も勝てそうなところが思い当たらないときている。
それでいて偉ぶったりしない気のいいやつだ。




