拉致誘拐
次の日、街に戻った三人は早速商人ギルドに……ではなく、なぜか傭兵ギルドの長の邸宅の裏手まで来ていた。
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「それで具体的にはどうやって商人ギルドをつぶすんだ?」
「ええ、傭兵ギルドの長の子を誘拐するの!」
「……え?」
「誘拐を批判しておいて……」
「まぁまぁ。手段を選んでいては目的は達せられないわ? それにそこまで物騒な事にはなるはずないの」
「じゃあもっと詳しく話を聞かせてくれ」
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今傭兵ギルドの長、フドウとその妻パーディンは、ギルドの集会という名の飲み会に出ていて不在だ。
とはいっても、流石はギルドリーダーの邸宅。ガードマンや使用人が、ぎっちり家を守っている。しかし、
「ピアちゃーん! 約束してた魔法の修行をしましょ!」
ルメアがそう呼ぶと、二階の窓ががたっと開いて、
「ルメアお姉!」
快活な子供が窓をバーン! と開けて、にっこり笑顔をこちらに向ける。この子がフドウの子、ピアである。
「今すぐそっちに降りるね!」
屋内でガタガタガタ、それからパリーンと何かが割れた音がして、しばらくすると裏口からピアがでてきた。
傭兵という武闘派のイメージとは程遠く、可憐で元気いっぱいの女の子。
それを拉致するとなると、元の世界から来た二人は多少気が引ける。
しかし何食わぬ顔でピアをハグし、その頬にキスをするルメアに、二人は若干警戒心のようなものを抱いた。
「で、これから?」
「ん? 約束通り魔法を教えるのよ、でもその前に……サンダークラッシュ」
雷がフドウの家にぶちまけられる。窓という窓が割れ、木材の部分は黒焦げだ。
「ちょっ、何をやってるんだ!」
「これでいいのよ、さ、行きましょ、ピア」
「ルメア姉やっぱりすごい!」
業平と日花は納得のいかない面持ちのまま、ルメアの後へついて行った。