隕石の落ちた日
「すみません……」
怒鳴り散らしている上司の前で何度も顔を下げているこの男は、立川業平。製薬メーカー、東城製薬に勤める平社員である。
業平はかれこれこの企業に勤めてから10年以上になるが、出世の道は開けそうにない。それにはある理由があった。
「これだから中途はゴミなんだよ」
彼は中途入社であるという理由で差別され続け、評価の面でも不当に冷遇されているのである。
上司や同僚、果ては自分の後輩にまでもストレスのはけ口にされ、苦痛と忍耐の日々を送っていた。
(やっと終わったか……)
「……あれ? 俺の椅子は……?」
上司の説教が終わって自分の席に戻ろうとすると、机の前にあるはずの椅子がない。と、周りからクスクス笑い声が聞こえる。
「椅子だって中途の業平さんには座られたくないんじゃないですか?」
……そういうことか。小学生じみた嫌がらせに呆れながらも、昼休みまであと少しだったので、業平は立ったまま仕事をすることにした。
そして昼休み。業平は煩わしい部署の部屋を抜け出し、コンビニで買った弁当と飲み物を屋上で飲食するのがお決まりだった。
その屋上で食事を終えて、いつものように紙パックのコーヒー牛乳を飲んでいると、空に赤い影がほとばしっているのが見えた。それは一瞬ごとにどんどん大きくなり、やがてその輪郭を表して……。
「隕石っ……!?」
ドゴオオオオオオオオオオオッ!
その正体は隕石。業平が逃げる間もなく、巨大な質量の塊は東城製薬に直撃した。
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