影へと
ずっともがいている。
発想しなくなってから、
勇気がもがいている。
格好をつけようとして、
うろうろ、おろおろ、どろどろ。
抱きたいことはある。
思いつけぬ世を放り出して、
何にも持たないようにして、
委ねてもいい世界へと
うろうろ、おろおろ、どろどろ。
逢いたいこと、行きたいこと、
まだ知らない音や詩に
繋がりたくて、重なりたくて、
今日も明日も明後日も、
うろうろ、おろおろ、どろどろ。
誰かのために、何かのために、
とっくに、ありたいけれど、
未だ、爪先も指先も口先も、
我だけの愛しき影へと、
うろうろ、おろおろ、どろどろ。
今夜ももがいている。
何が何でもと、少しだけでもと、
人を捻らずに、もがいている。
平凡な言葉をただ文字にして、
うろうろ、おろおろ、どろどろ。
来た、また来た、ふいに来た。
眠ろうとして、帰ろうとして、
夢のうつつに鬼が居座る。
格好よりも、我を守れと、
うろうろ、おろおろ、どろどろ。