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事情聴取

通された会議室のような場所は、白くて明るい部屋だった。広めの空間には、複数のイスと大きなテーブルがいくつか置いてある。調度品も全て白で統一され、現代日本の会議室とは少し異なる趣ではある。

ガリュー副団長に促され、ツルリとした見た目の白い卵型のイスに腰掛ける。見た目はツルツルだけど、座ってみるともちりと柔らかい。さすが魔法の国。摩訶不思議な素材だ。

ゼスト団長とガリュー副団長が並んで席につき、テーブルを挟んで向かいにセレナ、私、イグニスさんが並んで腰掛ける。

「まずはお疲れ様。」

ゼスト団長がニッコリと猫のように目を細める。一応労うつもりはあるらしい。

「イグニス、セレナ、レイ。討伐の翌日だというのに済まない。早目に終わらせて午後からは休暇にするつもりだ。また、今からの会話は資料作成のため録音させてもらう。悪用は一切しない。」

ガリュー副団長がいつも通り生真面目に伝える。

あなたも一緒に討伐に行ったじゃないですか…あなたも疲れているはずじゃないですか…ほんまいい上司…。

正直私は、ヘトヘトで一晩眠ってもいまいち疲れが取れていないのだが、ガリュー副団長は見た目も声も態度も普段通りだ。流石だなぁ、カッコいい…。

「色々と聞きたいことがあるんだけど、まずはレイの魔法について聞きたいな。スカルペンデュラを数百匹単位ですり潰したんだって?」

「あ、はい。」

一方のゼスト団長は、先程の労いの微笑みを一瞬で引っ込めて、気持ち早口で尋ねてきた。椅子に腰掛けてはいるが前傾姿勢で、何だかウキウキしているようだ。

ああ、この人、こういうタイプでもあったのか…。浮世離れして、ふわふわと掴み所がないと思っていたが、こと魔法に関してはその限りではないらしい。

「何の魔法を使ったのかな?」

猫のような瞳が私をじっと見つめる。

「重力をかける魔法です。とはいっても見よう見まねで…。カムリが使っていたのを見て、真似してみました。『グラビティ』ってカムリは言っていました。」

可愛らしいとも言えるゼスト団長の目だが、全く可愛いと感じられない。見た目は、本当に美しいというか、可愛らしいというか、その2つが共存していて魅惑の麗人なのだ、この人は。でも所々、常人とは異なる何かを感じてしまう。

私の話を聞いたゼスト団長は少し驚いたように目を見開いた。この人が驚いた所なんて初めて見た。

「…そう、見よう見まねでねぇ。ふーむ…。仲間たちや騎士団がいた場所からはだいぶ離れた所で魔法を使ったと聞いたよ。魔物に囲まれた状態で、どうやって離れたんだい?」

「風を使いました。こう、風を自分の後ろ側に噴射する感じで…。コントロールがうまくいかなくて、だいぶ吹っ飛びました。結果的に安全な位置まで離れられたというのが本当の所です。」

なるほどね〜、とゼスト団長がつぶやく。

「なら、どうしてイグニスの結界の外に出たんだい?」

「結界が壊れかけたので。結界に穴が開いてスカルペンデュラの牙が目の前に突き立てられたので、もう駄目だと判断しました。」

ゼスト団長との質疑応答が続く。段々と端的な質問になって来る。

「でもさ、結界にはスカルペンデュラが大量に群がっていたんだろう?どうやってそこから逃げたんだい?」

「風の結界を使いました。結界とは言っても、私のはかまいたちみたいなもので、結界に触れるものを切断してしまうのですが…。自分の周囲にその結界を張って、覆いかぶさっていたスカルペンデュラを切断して、その後走って逃げました。」

「走って逃げた?人の足じゃあ一瞬で追いつかれるだろう?」

ゼスト団長は少し驚いたような声を出す。

「はい、すぐに追いつかれて……一発、牙の攻撃を喰らいました。」

自分の眉間にシワが寄るのが分かる。あの恐怖は思い出したくない。巨大なムカデに背後から迫られ捕食されようとする、あの瞬間は。

「でも、このローブが弾いてくれました。」

持参したローブをそっと撫でる。綺麗な紫色の、緻密な金刺繍のローブ。ランサーからのお下がりだ。これが無ければ、私はきっと死んでいた。

「その後は、走っていては駄目だと思ったので、風を使ってその場から飛んで離れられないか?と思ったんです。」

「なるほど、そこにつながるんだね。」

あの時を思い出しながらも、なるべく分かりやすいように、端的に整理しながら答える。そうすることで、あの時には必死過ぎて見えていなかった自分の行動や、自分の行動によって起きたことがよく分かる。

こう並べてみると、よくぞ生きて帰って来たと思う。我ながらぶっつけ本番の何の保証もない行動だらけだ。


「なるほど。やっぱり、強い闇の魔力っていうのは本当に興味深いね。」

フフ、とゼスト団長が微笑む。顎に拳を当て、とても優雅な仕草だ。


「ここからは、皆にも聞いていこうかな。」

ゼスト団長は席から立ち上がり、またニコリと微笑んだ。

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