表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/47

ランサー・プレイヤード 3

その女は本当に変な女だった。

聖女召喚に巻き込まれてやって来た、聖女の姉。

うっかり地下牢に放り込まれるというアクシデントに見舞われ、メソメソするかと思いきや。やんごとない聖女と王子に怒りをあらわにし、一発ぶん殴るとモチベーションを上げる始末。

更にはその怒りで魔力が開花して牢の鉄格子を炎で溶かした。

とんでもない魔力だ。しかも幻と称される程稀少な闇の魔力。

これは放っておくわけにはいかないと、魔術師の血が騒いだ。

ところが本人は、ことの重大さを自覚していない。

危なっかしい。

目を離すわけにいかない。

目で追って、気にかけてしまうのはそのせいだ。

危なっかしい所は魔力のことだけではなく、その振る舞いもヒヤヒヤさせられた。

色香が溢れるような美しい見た目をしているくせに、とことん自己評価が低い。どうやら実妹の聖女が垂れ流していた魅了のせいで、今までその魅力や美しさを一度も評価されずに生きてきたらしい。

己の魅力を自覚せず、警戒心は皆無。

こんなの放っておける訳がない。

しかも、何だか妙に懐かれてしまったようだ。何となく話を聞いてやっていたら…恐らく色々溜まっていたのだろう…、どうやら”色々話せる”ことが心の支えになったらしい。恥ずかしげもなく『あなたは特別』なんて真顔で言う。

子どものように無垢な信頼を全力でぶつけて来る。この警戒心の無さ、下手な人間の前には出せない。

本当に、面倒なことになった。

危なっかしくて心配で、目が離せなくて気になって。


気が付いた時には、もう抜けられない程にはまっていて。

まるでぬかるみに落ちたよう。

抵抗しても、もがいても足掻いても、抜け出すことが出来なくて。


でも、あの美しい叔母への無垢で清浄な想いとは全く違う。

だから、これは愛とか恋とかいうものではない。


きっとこれは庇護欲だ。

『加護を付ける』なんて言って、おでこに口付けしたのも親が子にするようなもの。ナンパされて体を触られているのを見た時には逆上しそうになったが、それも父親が娘がに向ける感情のようなものではないか。

討伐に参加すると聞いた時には気が気ではなかった。何重にも防御魔法を掛けた、自分が現役の時のローブを押し付けた。それだって魔法超初心者のことが心配な親心みたいなもの。

討伐の様子も、元宮廷魔術士のコネを使って隈なく見ていたし、スカルペンデュラの群れに囲まれて結界が破壊された時は気が狂うかと思った。

生きて帰って来たのを見た時には、もう逃がさない、離さないと思ってしまった。抱き締めて、その体温や匂いや、体の柔らかさや細さを直に己の腕で感じて、胸も頭も一杯になり。

…気が付けば衝動的にモノにしようとしていた。

信じられない。

自分は貴族の跡取りとして生まれ、厳しく躾けられて来たはずだ。衝動的に動く、しかも女性に対して手を出そうとするなんて。実家を出たあとはだいぶ荒れた生活でそれなりに遊びもしたけど、こんなことはなかった。

こんな感情も衝動も知らない。こんな自分は知らない。


この感情はなんだ?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ