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生きるために、考えろ

折り重なる巨大ムカデの隙間を目掛けて、走り出す。

イグニスさんの結界から抜ける、その瞬間に待ってましたとばかりにムカデが伸し掛かって来る。

走るのでは間に合わない。

このムカデたちに触れないようにここから抜けるには……


「防壁!」

耳をつんざくような高い音。

イグニスさんに習った風の防壁を展開する。あの処刑道具のような、触れたものが切り刻まれる防壁だ。セレナに被害が及ばないようになるべく小さく。

それでも、私の暴力的な魔力のおかげか、結界に伸し掛かっているムカデたちが細切れに切断され、臓物と体液を撒き散らしながら細切れになって飛んでいく。

まずは成功だ。

周囲のムカデが散ったのを確認し、一旦防壁を解除してガリュー副団長の所へ走る。

「ガリュー副団長!」

目一杯叫ぶ。魔法を繰り出している副団長にはあまり接近出来ない。

「レイ!君、どうして……」

「あのムカデ、私の魔力に反応しているかもしれません!」

私の姿を見て驚いたガリュー副団長の言葉を遮り、一気にまくしたてる。

「どういうことだ?」

「後でゆっくりご説明します!とりあえず、私はここから離れてみます。もしも私の推測通りなら、ムカデたちは私に着いてくる。その間に態勢を立て直して下さい。」

「何を言っている?!危険だ!」

案の定反対される。

そりゃ、そうだろうね。

でも。

「結界は破られました。皆さんは強いから大丈夫かもしれないけど、私はここにいたら死ぬだけです。」

何かしなければ死ぬ。

ただここで守ってもらうだけではいけないのだ。

「他に何か方法が……」

ガリュー副団長が言いかけた瞬間、上からムカデが3匹、降ってくるように襲い掛かって来る。

ガリュー副団長は光の矢で応戦するが、私は全力で横に吹っ飛んでギリギリのラインで避けた。

そのまま走り出す。本当にギリギリだった。もはやお伺いを立てている場合じゃない。動かなければ死ぬ。指示違反は生き延びたら後でガリュー副団長に謝ろう。


騎士団や聖女のいる方向とは逆方面に走り出す。

するとムカデたちはこちらに向かって方向転換を始めた。やはり、私の魔力に惹き付けられているのか。闇の魔力にこんな特性があるとは。

しかし当然、私の走るスピードよりも巨大ムカデの方が速い。すぐに追い付かれてしまう。

すぐ後ろにおぞましい気配がする。キュラキュラとムカデの関節が動く音がする。

逃げなくては、もっと速く!

どうすればスピードが出る?人間の脚では敵わない。

考えている間にも、巨大ムカデとの距離は縮まり、ほぼゼロになってしまった。

肩にムカデの顎が届く、という時、パァンと何かが弾かれる音がした。ローブに付与されている守護魔法が発動したようだ。

助かったと思うと同時に、スピード対策をしなくては、と痛感する。


「旋風!」

カムリと初めて魔法の練習をした時に出した竜巻を背中から後ろに向けて出す。

風の推進力でスピードアップを、と思ったが、風の力が強すぎて宙に浮いてしまった。そのまま斜め前方へ勢い良くすっ飛んで行く。

ヤバい、失敗だ。


考えろ!考えろ!

何が出来る?

かなりの距離を飛びながらそれでも次を考える。

落ちる訳には行かない。落ちたら全身を強打して動けない。動けなくなった所でムカデの群れに追い付かれて食い千切られる。

とりあえず目下の危機脱出だ。落ちないことだけを考えよう。

今度は弱めにと意識しながら、地面に向けて風を作り出す。風を地面に吹き付けることで、落下を防ぐ狙いだ。

しかし、やはり加減が難しく、大分強い風が出来てしまい、体は地上20メートル位の所に浮いたままだ。が、ムカデは跳ねることはあっても飛べはしないらしい。ムカデの大群が、足元に蠢く。


これからどうしようか。

落ちたら死ぬ。

だからといって、魔術師団の仲間と離れているから、ムカデを倒してもらえない。


そして、ふと思い至る。


……これって……私が倒せば良いのでは?


さっき風の威力調整を失敗して派手に吹っ飛んだから、騎士団や魔術師団の皆がいる所からは大分離れた。

周囲に人はいない。

私の暴走する魔法でも、人的被害は出ないだろう。ムカデが被害受けるだけ。

しかもムカデたちは、私に惹きつけられて一箇所に集まって来ている。


加減を考えずに攻撃してもいいのでは?


心臓がバクバクする。

可能性が見えてきて、興奮に体が震える。


火や水は効くかどうか分からない。

風は時間が掛かりそうだし、制御を間違うとまた飛ばされる。


足元の、ムカデの群れを見下ろす。


これを一気に潰すには。


魔法の訓練初日、私の出した風に飛ばされそうになったカムリがやっていた魔法。

重力制御の魔法。

あれなら一気にカタが着く。

もし潰せるだけの威力は無くとも、群れを動けなくしておくことは出来るかもしれない。それをゆっくり始末してもらえばいいのだ。


集中する。必死に考える。

風の魔法で浮きながら、重力の魔法を使うのは……2種類の魔法の同時発動は、やったことがない。出来るかどうか分からない。分からないのにぶっつけ本番は怖すぎる。

風の魔法を解き、落ちながら重力の魔法で潰しにかかるしか無いだろう。そして潰しながら、地面に叩き付けられる前にまた風で浮き上がる。

難しそうだ。

スピード勝負だ。

でも、やらなきゃ。


魔力を練り上げる。

あの、群れの大きさに合わせて、そこの重力を極端に増す、そんなイメージだ。

風の魔法を解く。

体が一気に下降を始めるその瞬間。


「沈め!」


一気に魔力を放出する。


ドォン、という地響きの後、バリバリ、という雷のような地鳴りが大音量で響く。

体全体に痺れるような振動が伝わる。


即座に風の魔法を展開する。

何とか墜落寸前で風が巻き起こる。だが地面から少し浮いて落下の衝撃を食い止めるはずが、またしても威力が強すぎて今度は一気に上昇する。


そうして見下ろした風景は。


クレーターのように陥没した地面が出来上がっていた。

クレーターの中には動くものはいない。

さっきまで巨大ムカデだったのだろう、粉砕された残骸が無数に散らばっていた。

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