義理か義務
そして、私も優しくない。
泣き崩れている人に対して、思うことは「この人なに泣いてんの?」だ。
どうせ、「叩いてしまったわっ。私はなんてダメな母親なんでしょう。」って思ってるんでしょう。
だってほら、いっこうに「叩いて、ごめん」がこないじゃん。
今、泣くのに忙しいもんね。泣け泣け~。
バタバタする大人たちを冷え冷えとした気持ちで眺める。
この止める人たちのだって、大変だ。業務外だよね。
すみませんねぇ。迷惑をかけて。
結局、強制終了で次の日になった。
検査の結果異常なし。
あと一泊して、退院だとさ。
しかし、あと半日なにするかな。
少し考えて、思い付く。
病院といえば……屋上!!
しかし今のご時世、屋上への扉は施錠されていた。
ちっ。
南京錠なら、ヘアピン二本で開けれる自信があるのに。
昔読んだまんがにヘアピン二本で開けれるって書いてあって、実際にやってみたら何だかんだで出来たのだ。
さて、次はどうしようか。
毎回思うけど、もしこれがゲームならここで選択肢が出るのになぁ。
部屋で大人しくしているか、売店とかにいくとか?
売店そんなに充実してないしなー。
地元の市民病院なんてそんなもんだ。
どっちかといえば、古くて暗くて幽霊が出そうな雰囲気だからな。
ここでウォルターがいたら、「そんな話、しないでほしいっすぅ。」って情けない顔をするんだろうな。
そんなことを考えて笑みが零れるが、すぐに気持ちが暗くなる。
妄想に逃げることしかできないなんて。
妄想は、どこまでいっても妄想。現実にはならない。
だってほら。魔法だって使えない。
やっぱり大人しくベットで寝ていよう、と病室に向かって歩き出す。
階段を上れば、病室のある階につくと階段の踊場を曲がろうとしたとき。
「きゃっ。」
「わっ。」
誰かとぶつかりそうになり慌てて位置をずれる。
「愛奈!!」
ぶつかりそうになったのは、お姉ちゃんだった。
「……お姉ちゃんか。」
「お見舞いに来たのに部屋にいないから、どこ行ったのかと思って……」
まゆ毛を下げながら、困った顔で笑う。
「なにか用?」
「え、お見舞いに来たのだけど、迷惑だった?」
「来てって頼んだ覚えはないけど。」
冷たく返す私に明らかにそわそわしだすお姉ちゃん。
手をぱたぱたしたり、視線がキョロキョロしたり忙しない。
不安になると、うろつく癖があり、それができないと他のことで誤魔化すのだ。私はそれを「森の熊さん」と呼んでいる。
「……部屋に戻る。」
「じゃあ、私も。」
「ついてこないで。」
「なんで?私、なにか気に障ることした?」
『なにもしてない。私の気持ちの問題。』
その一言がでてこない。
その代わりに出てくるのは、イライラの言葉。
「私が家にいなくて、どうだった?」
「みんな心配してたよ。」
「いつも通りだったでしょ?」
「そんなことない……」
「お父さんは仕事を休んだ?お姉ちゃんだって、普通に学校行ってたでしょう?別に休んでとは、言わないけどさ。ただ、私がいなくても特に何もなかったでしょう?」
「そんなこと、ない。」
人が一人入院なんぞしたら、家族の誰かががいろいろ大変だろうことはわかるけど、別に「心配で心配で仕方がない」という気持ちがなくてもできることだよね。




