喧嘩にならない
本当は謝るつもりはなかったけど(だって首絞められたし、仕返しみたいなもんだし)、なんとなく謝っておく。
すると、わんわんと泣き出した。
めんどくさい。
しかも、涙と鼻水でぐちゃぐちゃなひどい顔で抱きつこうとしてくる。
本当にやめて。
近寄らないで。
服が汚れる。
こっちの世界にはポケットティッシュがないんだから。
バタバタと周りが動き出し、泣きじゃくる凛を回収していってくれた。
「ふぅ。」
「仲直りできて良かったっすね。」
いつの間にか近くに来ていたウォルターにニコニコと話しかけられる。
「仲直り?」
「え?仲直りっす。」
「別に喧嘩してないけど?」
「喧嘩してなかったんすか?」
だって喧嘩って、言い合ったり殴り合ったりしてあらそうことでしょ?
最初は逆ギレで、次は自己防衛からの殺人未遂だよ。
「今のは?」
「言い争う前に終わってしまったから、喧嘩じゃなくない?」
「そういうもんすか?」
「たぶん?」
まず、喧嘩をするってことはそれくらいの仲がないと起こらないでしょ。
それに、自分の意見をわかってもらいたくて主張をして、わかってもらえないから喧嘩になるんでしょ。
たぶん、彼女とはならないよ、喧嘩に。
二人で首をかしげていると、リアムにつっこまれる。
「ウォルターとも喧嘩にならないな。」
「うん。だって、ウォルターだもん。」
「なんすか、それ!!」
「「ウォルターだから?」」
「もう!!」
ふふっ。
「「あっ。」」
ん?
二人がハモってまじまじとこちらを見る。
「なに?」
「あーー。」
「だから、なに?」
「いま、笑ったっす。」
は?
私だって笑いますが?
「今のはいつもと違って……なんというか……」
「いまの。もう一回!!」
いや、いつもと何が違ったのかがわからないのにもう一回と言われても……
「どうしたの?」
「そろそろ帰るぞ。」
ノアとアレンもやってきた。
「二人がおかしくなった。」
「雑な説明をするんじゃない。」
「ひどいっす。」
「もちょっと分かりやすく言ってもらっていい?」
「お嬢がいま笑ったんすけど。」
「それが、思いの外破壊力があったというか、なんというか。」
なんだそれ。
「えー。見たかった!!」
お前もか。
「だから、そんな抽象的なことを言われてもわかんないよ。」
助けを求めてアレンを見るが……
見なきゃ良かった。
なんだか寂しそうな顔で、自分も見たかったって表情でじっとこちらを見ていた。
「ほらほら、帰るんでしょ?いくよ。」
全く、こちらの気も知らないで!!
話題の中心か私なんて、恥ずかしいじゃないか。




