物理でGO
周りsideです。
すげぇ。
何がすげぇって、自分より年下の少女が自分よりハードな人生を送って来たことと、リン様に対して特に声を荒げることなく淡々と話していること。
「……なんか、ごめんなさい。」
つい、謝ってしまった感じのリン様に
「何に対しての謝罪?」
追い討ちをかけた!!
おろおろとするばかりのこちら側。
少女の表情が見えず、声のトーンだけで判断することを余儀なくされ、少女が何を思ってるのかがわからない。
「ふふふ、やはり、お前に付いたほうが闇が深そうだ。」
静寂を破ったのは、リン様の後ろに現れた黒い人影だった。
「またお前か。」
「お前のほうが闇が深そうだ。おれの糧となれ。」
「やだよ。だいたいお前、私のことかわいそうな奴って思ってるだろ?」
「強がらなくてもよい。」
「だーかーらー。私は幸せなの。ちょっと過去がハードモードなだけで。勝手にカテゴライズしないでほしいって、さっき凛にも言ったんだけど、聞いてなかったの?バカなんですか?私の話していることわかりますかー。聞こえてますかー。」
あの、煽りすぎじゃないですか?
「おのれ、おれの役に立ち、お前も解放されると言うのに何が不満なのだ!」
「全部。結局は自分のためだろ?始めから自分のためですっていえばいいじゃん。なにお前のためって言っちゃってんの?人のせいにすんなよ。欲望の塊なんだから。」
「言わせておけば!!」
怒り出した黒い影を見て、厳戒態勢を取ろうとした瞬間。
「なんだ。怒れるんだ。」
ポン、と手を打つような軽さで少女が発言する。
「「「え?」」」
我々の疑問をよそに、少女は鞄から水晶を取り出すと。
「だったら、自分の感情でも喰ってろ!!」
そのまま水晶を振りかぶって、黒い影に投げつけた。
「ぐわぁぁああぁーーー。」
水晶が当たった瞬間、断末魔のような悲鳴をあげて、影が水晶に吸い込まれていく。
「物理……」
誰かの呟きが聞こえる。
もしかしたら、自分の呟きだったのかもしれない。
全てを吸い込み、黒くなった水晶がポトリとその場に落ちる。
「どうしよう?封印できちゃった。てか、あれで正解だったの?」
さして、困った風もなく、困ったと口にする少女。
そして、まぁいいや、とさっさと切り替えて、リン様の顔を覗き込んでいる。
「えーと、思い切り叩いてごめんなさい?」
「……こっちこそ、ごめん。」
「さっきもいったけど、何に対して?」
「色々と。」
「ふーん。」
「……ご、ごめんなさーい!!」
「うわっ。」
リン様がわんわんと泣き出し、嫌そうな声をあげる少女。
いつまでも見ているわけにもいかないので、水晶を回収したり、規制線を解除したりと動き出したのだった。




