スプラッタは苦手ですか?
剣を振り上げたとき。
「そこでなにしてる!!」
誰かの制止の声が聞こえる。
チラリと振り返れば、見回りをしていたらしい、騎士の人がいる。
その隙を取られ、凛がもう一度飛びかかってくる。
そのまま押し倒され馬乗りになる。
ぐぇ。
「形勢逆転ね。」
左手で首を絞められて、反対の手にはどこからだしたのかペーパーナイフがにぎられていて首筋に当てられていた。
「ひっ。」
声のほうをみれば、止めに入った人が血の気のない顔になっている。
ぐっと首を絞められて、意識を戻せば、笑いながら見下ろしてくる凛と目が合う。
「ほら、命乞いしなさいよ。」
「命乞いは自発的にするもので、言われてやるもんじゃないよ。」
冷静に言い返してしまった。
私の返答にバカ?みたいな顔で凛が続きを話す。
「あんた、私がこのペーパーナイフを引いたらどうなるかわかってんの?」
「まぁ、頸動脈まで切れれば、血が大量に飛び散るでしょうね。きっと赤が舞うのは綺麗でしょうね。」
「うっ。」
私の話で、血の気のない彼の顔は余計蒼白になり、口元を押さえている。
スプラッタは苦手ですか。
ちなみに頸動脈は、比較的浅い所にあるとは言えど、簡単には斬れないらしいよ。
真顔で返答をするのは、たぶん異様なのは私にもわかるが、だかといってこの話をニコニコしながらするのも不味いだろう。
「そう。じゃぁ、望み通りにしてあげる。」
ぐっと首を絞める手に力が入り、首に冷たいものがぐっと当てられる。
く、苦しい……
体格差があるため、ここからの逆転は無理そう。
息がだんだん出来なくなってきた。
やばい。とにかく両手で凛の手を外そうとしようとしたとき、凛が後ろに引っ張られる。
「な、なに?放しなさいよ!!」
「おー、大丈夫か?」
「ごほ、げほ……おえっ。」
急に手を外され息が吸えるようになったことで、一気に供給された酸素にむせる。
息を整えて見上げれば、凛を羽交締めにしているジャックがいた。
「なん、で?」
「渡り廊下から見えたから。来ないほうが良かった?」
相変わらずニヤニヤと笑ってはいるが、私の顔をみてほっとしていた。
「あり、がと……たすか……おぇ。」
「……おい、大丈夫か?」
「私を無視しないで!!」
暴れた凛がジャックの手を振りほどいて離れる。
「で、こいつどうすんの?」
うーん、私に聞かれても。
「どうもしないわよ。どうかするのは私なの!!」
主導権は渡したくないらしい。
「こういうときは……一回形勢を建て直すのよ。」
後ろに黒い影が現れて凛の姿をおおっていた。




