普通とは
現場にたどり着いてみると、そこには男性が倒れていた。
その人は、仰向けで倒れており、目を見開いていたけれど、その瞳は虚空をみていた。
頭を銅像の台座でぶつけたらしく血がでている。
見上げれば二階のバルコニーに女性がいる。多分悲鳴の主はあの人だろう。
とりあえず、生死の確認を……
近づこうとするとぐいっと腕を引っ張られた。
見上げればアレンが後ろに立っていた。
「あ。」
「まったく。貴女は少し目を離したうちに……」
「すみません。いろいろありまして。」
「とにかく、ウォルターは規制線を、リアムは被害者の様子を確認。」
「「はっ。」」
隣にいたウォルターとリアムが行動する。
「なかなか帰ってこないので心配したんですよ。」
「すみません。でも、どうしてここに?」
「レティシアとあなたを探していたんです。で、悲鳴が聞こえてきたので、こちらに来たら、あなたがいたんです。」
本当にすみません。
話をしているとリアムがこちらを見て小さく首を振った。
あぁ、ダメでしたか。
ざわざわとしだし、辺りから今夜の警備担当者たちが集まってきた。
「今夜は、これでお開きですね。」
「そうですよね。」
返事をしらながらも、現場の様子を眺めている。
「お話中失礼します。お話を伺ってもよろしいですか?」
みれば、眼鏡なインテリお兄さんがいた。
最近知ったのだが、団服の胸元についているバッチというかワッペンで階級がわかるようになっている。
団長は、星の形を重ねたようなトゲトゲの形、副団長は、普通の星の形である。そして分隊長は、団長と同じマークだが、一回り小さく、副分隊長も副団長と同じマークで一回り小さいのだ。
目の前のインテリさんは、アレンと同じワッペンがついている。
「なんだ、今日の担当はマークか。お疲れ様。」
「ふん、馴れ馴れしく話しかけてこないでください。それに、今はこちらに話を聞いているんです。」
インテリさん改め、マークは眼鏡をクイッとしている。
この二人の関係はよくわからないが、面倒になる前にここに至った説明をしようとする。
しかしその前に、
「大変です。あちらにこんな靴が!!もしかしたら侵入者がいるのかもしれません!!」
「あー、すみません。それ、私のです。」
報告に来た彼の持っている物は、紛れもなく私が先程投げ捨てて回収し忘れたハイヒールだった。
みんなが「なぜ?」って顔でみてくる。
先程しようとしたこれまでの経緯をかいつまんで説明をする。
マークは、見たことない生き物を見るかのような目をしているし、アレンはいつも通り呆れている。
「窓から飛び降りたんですか?」
「……はい。」
「ちなみに、誰かを呼ぶという発想は?」
「!!」
「その様子だとなかったですね。」
私たちの会話を聞いて、マークが「普通のご令嬢は、閉じ込められたからって窓から飛び降りないだろう……」とかなんとかぶつぶつ言っている。
悪かったな。普通じゃなくて!!