遠慮します
阿鼻叫喚の地獄絵図な気分だ。
助ける気は全くなく呆れる人に、笑顔で攻めてくる人に、火に油を注ぎ楽しんでいる人。
「あっ、ほら、また雪グマ出ると大変だから、場所変えません?」
話の流れを変えようと提案してみる。
「では、歩きながら。」
おふぅ。解放されなかった。説教は続くらしい。
あー。吐きそう。
ぐむ、ぐむ、と足音を立てながら歩いていくと、ノアたちと合流した。
助かったと思ったのはつかの間。
だめだった。
もしこれが少女漫画とかなら、逆ハーレムだ!みたいになるのだろうが、自分が囲まれるのは遠慮したい。
場違い感半端ないし、外から眺めるのがいいに決まっている。
あっ。ちょっと離れて歩けばいいのか。物理的に。
「また、迷子になるぞ。」
ちっ。だめか。
結果、宿につくまで針のむしろだった。
「はー。疲れた。」
宿の部屋につくと前回と同じようにすごし、あっという間に帰路につく。
しかし、なぜか例の二人も一緒に、だった。
道中聞いてみた。
「なぜに?」
「誰かさんが雪グマ退治してくれたからな。」
「ぐっ。」
「いつの間に、ジャックと仲良しになったの?」
「どこからどう見たら、仲良しに見えるの?ってか、ジャックって名前だったの?」
ノアの指摘に反論をしつつ、疑問が出てくる。
「あれ?名乗ってなかったか?」
「別にいいや。今後関わること無さそうだし。」
「うわっ。折角の縁を無駄にすんなよ。」
いや、この人との縁は大事にしなくていいや。
だって今もほら。ニヤニヤ笑いながら楽しそうにしてる。
「遠慮します。」
「遠慮すんなって。」
「……バカなの?」
言葉が通じていないのか。ウォルターとは違ったパターンのバカなのかな。
真顔で聞いてしまった。
「くくっ。やっぱおもしれーな。」
「……失礼な。」
もう。こいつと話していると疲れる。
他の人の所へ移動しよう。こういう時は……アレンだな。
話を切り上げて、アレンの所へ移動しようとする。
「おい」
歩きだそうとした瞬間に、フードを引っ張られる。
予想外の力により、フードが取れて髪の毛が露になる。
「……。」
「なに?」
めんどくさいなと思いながら、振り返る。
「……へー。本当に黒髪なんだ。」
突然どうした?
今まで明らかにからかっていますっていう感じの笑いかただったのに一瞬、固まったように見えた。
「急になにが」
したいの?と続けようとした言葉は、私の口から紡がれることはなかった。
なぜなら。
物珍しそうに私の髪の毛を見ていたジャックが私の髪を一房掬い取るとなぜかそれにキスをした。
屈み込んだジャックと目が合い、楽しそうに目を細めている。
私の脳みそはすべての機能を停止したらしい。
何が起こったのか、さっぱりわからなかった。




