予想外
見回してみて、目についたのは窓。
トイレの窓なのに、大きさが結構ある。これなら通り抜けられるだろう。
しかし、なぜ上の方につけられているんだ。明かり取りか?おしゃれか?
まぁ、開かなければ話にならない。
まず、窓に手が届かない。キョロキョロと見渡せば、桶が目につく。
桶を台にしてその上に乗り、窓に手をかけてみると軽い手応えで窓が開く。
ナイス。窓から出られるじゃん。
そのまま窓から身を乗り出してのぞきこめば、飛び降りられない高さではない。
よし。
着地のために、ハイヒールを脱いで窓から投げ捨てる。
窓枠に足をかけ、よじ登る。
今日も今日とてスカート下をはいているため、何か起こっても安心である。
高いところは平気な私である。ジェットコースターも大好きなのだ。
窓から下をみたところで恐怖心があるわけでもなく、しかもこっちでは魔法が使えるのだ。何とかなるだろう。
「それっ。」
窓から勢いよく、飛び降りる。
え、まずい。スカートがぶわっとなって下が見えない。
予想外である。そこまで考えていなかった。
えぇい。こうなってしまったものは仕方がない。
風魔法でクッションを作る。
しかし、風圧でスカートは舞うし、クッションがクッションの役割を果たさず私は地面に転がる。
「ぶへぇ。」
変な声がでた。
ドレスに土や葉っぱがついたり、手にすり傷がついたりしたもののそれ以外目立ったところはない。
立ち上がってドレスの汚れを払う。
足に違和感を感じたような気がするが、まぁ、気のせいだろう。
ハイヒールを回収して……と考えていると近くの茂みがガサガサ音をたてる。
野生の動物とかがでるの?聞いてないぞ。
「あれー。お嬢、なにしてんすか?」
出てきたのは、野生のウォルターだった。
「ウォルター?あんたこそ、なにしてんの?」
「我々は今夜の警護に駆り出されたんです。」
リアムもいた。
「へー。そうなんだ。」
「で、貴女は何をしているんです?」
「私?んー。脱出ゲーム、かな。」
「ちょっと意味がわからないっす。」
「え、本当に何しているんですか?」
私の服装に気づいたリアムが慌てる。
「あー、まぁ色々あったわけだよ。」
「とりあえず、ここにいることを分隊長は知っていますか?」
「あっ!!」
「完全に忘れてたっすね。」
「まずいかな?」
「まずいっす、多分。」
トイレに行くとは言ってきたけどまずいかなぁ。
それならばさっさと会場に戻ろうとしたとき、遠くから悲鳴が聞こえてきた。
「「え?」
驚く二人を他所に私は裸足で悲鳴のした方に走り出す。
だって、だいたい刑事ドラマでも悲鳴がしたら、した方に走ってたから正解でしょ?
今までの私だったら遠巻きにみてるだけだったけど、ちょっと積極的になることにしたんだ!!
しかし、ドレスって走りにくいな。裾を持たないといけないし、持っても足に当たって邪魔だな。
シンデレラはよくこれで、走りながら大階段を下りたな、尊敬するよ。