序
亀更新ですが、初めてのオリジナルホラーに挑戦してみます。
若干パラレル?ぽい流れがあるのですが、ご理解いただければ幸いです
ー若いの、あんた、随分な相でおいでだねー
ー遠出するなら控えることじゃてー
ー忠告じゃ。水難と女難の相が出ておる。女と水場には気をつけるんだねー
違う、違う。
水難なんかのレベルじゃない。
なんだ、これは。
なんだ、この・・・・。
みしみしっ がこんっ
車の後部の車体に大きな衝撃がやってきて、焦り見れば、黒く大きな何かがずっしりと車体に寄りかかってうごめいていた。
「ひっ」
声を呑んだ俺は、冷や汗でべたついた指で車のエンジンを必死にかけにかかった。
止まった車のエンジンは、相変わらずうんともすんとも言わない。
(くそっ)
心の中で舌打ちをしながら背後を振り仰ぐと、うごめく気配は、少しずつ、車体をミシミシ言わせながらこちらに迫ってくる。
(おおい、冗談じゃねぇって!)
俺の中に棲まう本能のすべてが警鐘を鳴らしていた。
焦るあまりに、思考は冷静な判断を失っていく。
まさに文字通りパニックだ。
(だめだ、だめだ、だめだっ、このままじゃっ)
思わず、だめもとで、一緒に車中にいる仲間の名を片っ端から呼び上げた。
「かんな、ミケ、あっちゃん、起きろ、起きろ!おい!みんな!!」
俺の呼び声はみんなに届かない。
なぜかみんな、死んだように、動かない。
「かかれ、かかれ!かかれって!!」
動かないエンジンに焦れて、ハンドルをぶっ叩いた俺が、そう叫んだときだった。
「きょ、すけ・・・・」
「!か、かんな!」
助手席からの微かな声に、はっと相手の方を仰ぎ見た俺の目前には。
「!!!」
いつのまにか、赤く血走った獣の眼が、2つ。
(あ・・・・・)
俺の思考は、そこで、止まった・・・・・。
『ヴォおおおおおおおおお』
遠く響く無気味な咆哮。
血に染まる視界。
ぐらついていた意識は、次第に真っ暗な世界に呑まれていった。