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空貝 ~うつせ貝~  作者: 渡里あずま


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三月十七日【前】

 カッターで衝動のまま切った髪は、亜美に連行されて近所の美容院で切り揃えた。

 ずっと背中まであった髪は今、顎の線くらいまでの長さになっている。二月程、寒くはないものの少しスースーする首元にはまだ慣れない。

 ちなみに、友喜には翌日の放課後に『お見舞い』として貰ったものと同じスポーツドリンクを買って渡していた。

 みつるの中学には、自動販売機はない。つまり、友喜はわざわざ買っていた(おそらく、陸上部の練習後に飲むつもりだったのだろう)ものを亜美に渡したという事になる。


「昨日は、ありがとう」

「おう」

「……その調子で、亜美ちゃんと仲直りしてよね」


 動揺されても困るが、平然と受け取られるのも癪に障り、つい言ってしまった。

 すると軽く目を見張り、ついで拗ねたように唇を尖らせながら友喜が反論する。


「解ってるよ……ってか、仲直りすんならお前ともだろうが」

「えっ?」

「……お前も、解れよな」


 呆れたようにそう言って立ち去る友喜の背中を見送り、みつるはしばし言葉の意味を考えた。


「ああ。『二人の事なんて』って、わたしも言われてた事になるのか」


 それから、友喜と疎遠になったきっかけの台詞を思い返し、今更ながらに気づいた。

 付き合いとしては、友喜と亜美の方が長いので二人を仲直りさせる事だけ考えていたが。


(わたしの事も、ちょっとは『友達』だって思ってくれてたのか)


 ……そうだとしたら。万が一、いや、億が一にも周囲から誤解をされたくはないけれど。

 次からは、もう少しだけ友喜に優しくしてあげようとみつるは思った。



 その後、転勤する築島へのプレゼントを選ぶ為、みつるはバスで札幌駅近くの百貨店へと向かった。

 何故、先週ではなく今週末を選んだかと言うと――三月十四日、ホワイトデーが終わるのを待っていたからだ。

 三月十四日。その日の昼休みに、築島はバレンタインにチョコレートを渡した生徒一人一人にキャンディをお返ししていた。


「ゴメン、みつる! 本っ当に、ゴメン!」

「ううん……お返しが、欲しい訳じゃないし」


 帰り道に両手を合わせ、恐縮しまくる亜美に対して、首を横に振って言ったのは本心だ。

 ただ、築島に気持ちを伝えたい――と言うか、示したい。

 クラスでも、有志(主に女子)で色紙を書いて渡す事になっているので、それとは別のものをと考えている。


「次の土曜日に、探してみるつもり……お菓子とかだと、気楽だよね?」


 先週末も時間はあったのだが、時期的にホワイトデー一色だったので今週まで待った。

 焼き菓子だと、少しは日持ちするだろうか。そう思っていたら、亜美から猛反対された。

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