三月六日【後】
亜美視点・2
「えっ……何、どうして? 通り魔!?」
「違う違う、自分で切ったの」
動揺のあまり、妙な事を口走った亜美を宥めるみつるは髪型はともかく、妙にスッキリした様子だった。
……そして亜美は、ベッドの隣に座るよう促され、みつるから話を聞いた。
合コンのあった日に、築島のことを好きになった事。
そんな中、昨日の転勤の話を聞き、亜美の話で二重にショックを受けた事を。
「ゴメン、みつる」
「謝らないで? 話もしないで、勝手に拗ねたわたしが悪いんだし」
「でも……」
「……昨日ね? 失恋したんならって、自棄になって髪切ったんだけど」
サラリととんでもない事を言うみつるに、亜美は大きな目を更に見開いた。
そんな亜美の前で、みつるが小首を傾げて見上げてくる。そうすると、顎の辺りまで不揃いに切られた黒髪が揺れた。
「切りながら、思ったの……わたし、何にもしてないよなぁって……失くすも何も、始まってさえいないよなって」
「……みつる」
「このまんまじゃ、終われないよね?」
「告白するの!?」
「うわ、ビックリした! や、いや、そこまでは」
友人の恋の行方に、身を乗り出して声を上げた亜美にみつるが驚いて後ずさる。
「えぇっ!? ちょっとみつる、そこはうんって頷くとこでしょ!」
「いやいやいや、ちょっと待って? 亜美ちゃん、先生にチョコあげたんでしょ?」
「だからそれは、義理だって言ったよね? って言うか、みつる!」
「はい!」
しんみりした雰囲気から一転、力説する亜美にみつるが元気良く返事をして背筋を伸ばした。
そんな彼女の前で、亜美は泣きそうになってクシャッと顔を歪めた。
「……カッターで髪切るとか何、考えてんのよ。みつる」
「えっと、勢いで?」
「枝毛になったらどうしてくれるのよ!? あたし、みつるの髪好きなのにっ」
「……ゴメン」
そう、くせっ毛の亜美とは違う、サラサラストレートの綺麗な髪が!
ついつい力説した亜美に、困ったようにみつるが謝る。
そんなみつるに、亜美は唇を尖らせて続けた。
「謝らないでよ……あたしが、勝手に怒ってるだけなんだから」
テンションは違うがそれは先程、みつるが言ったのと同じで。
一見正反対だが、こんな風に考え方が同じ部分があるからこそ、ずっと友達なのだとめて思う。
「……告白は、無理だけど。亜美ちゃんみたいに、何か行動で気持ちを示したい……な」
そんな亜美の前で、おずおずとみつるがそう言った。
「……うん」
その言葉が嬉しくて、亜美は自分の頬が笑みで緩むのを感じつつ、気合いを入れるようにみつるの手を両手で包むように握った。




