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空貝 ~うつせ貝~  作者: 渡里あずま


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15/16

三月一日~三月四日

 日曜日、葉書の事を知っている母は朝食後、緊張しつつも着替えて出かけようとするみつるを黙って見送ってくれた。母がそうだったので、父も不審がらずにくれて助かった。

 ……いや、まあ、葉書を見た後は勿論、母に聞かれたのだが。


「行くの?」

「……うん、行きたい」

「まあ、昼間だし……行ってらっしゃい。ただ、何かあったら電話しなさいよ? その為のスマホなんだから」

「……はい」


 高校に入学した時から、みつるはガラケーからスマホに変わっている。

 築島に限って、そんな危ない事なんてないと言いたかったが――心配してくれているのだし、母なりに折り合いをつけてくれた(結局、会いに行く事を許してくれたから)と解ったので、反論はせずに頷いた。

 ちなみに亜美には母と話した後、スマホのコミュニケーションアプリを使って(亜美も、今ではスマホを使っている)日曜日に築島と会う事を知らせた。

 そうしたら、亜美からは「ついに!」「やったねっ」「おめでとう!」と感情の高ぶるままのトークとスタンプが連続して届いた。

 ちなみに、友喜も一緒にいたらしく(会うとは知っていたが、みつるも動揺していて忘れていた)猫が「強いオーラを出していけ」と応援というか、圧をかけてくるスタンプが一つだけ届いた。

 陸上部あるあるネタのスタンプらしいが、彼なりの激励だと思って照れつつも「ありがとう」を示すスタンプを返信した。



 三月なので、少し寒いがダウンジャケットではなくオーバーで家を出る。通学の時はともかく、私服ではついダウンを選んでしまうが、築島と会うのにあまりモコモコしたくはない。

 数分歩くと石山通に出たのでバス停で札幌駅前行きのバスを待ち、ちょうど快速バスが来たのでそれに乗った。

 ……中二の時、築島へのプレゼントを探す為にも一人でバスに乗った。

 あれから、ほぼ四年が経ち――今日は、あの時とは違って駅では築島が待っている。そう思うと胸がドキドキどころではなくバクバクする。

(で、でも、好きな芸能人とかに会う時も緊張はするし……どうなんだろう……)

 あいにく、特に好きな芸能人がいないので比較する事が出来ない。

 ……とにかく、バスには乗ったので駅までは運んで貰えるし。

 せっかく築島が時間を取ってくれたので、実際に会って確かめようと思うみつるだった。



 札幌駅の西口はドーナツチェーン店を始め、喫茶店や飲食店が近くにいくつかある。昼前なので、もしかしたら一緒にお茶くらいは出来るかもしれない。


(……っていやいや、考えすぎちゃ駄目だよね。悪い癖だよ、自分)


 そう考えるだけで逸る心臓を宥める為、セルフツッコミを入れながら待ち合わせ場所に向かうと――十分前だったが、すでに築島は待ってくれていた。

 みつるに気づいてくれたらしく、ホッとしたように笑って小さく手を振ってくれる。


(あっ……!)


 大人という事もあり、築島は四年経ってもみつると違ってそれ程変わっていないと思う。

 強いて言えばスーツではなく、寒いところから来たせいかダウンジャケットを羽織ったシャツにジーンズ姿だという事か。


(先生……会えたっ、元気そう……良かった、嬉しい……どうしよう……っ)


 ……そんな言葉の数々の、最後に浮かんだのは。

 四年前、初めて恋を自覚した時と同じ「抱きしめたい」という想いだった。

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