三月一日
北海道の卒業式には、桜は咲かない。入学式にすら間に合わず、早くても四月下旬くらいだ。
それはいつも通りなのだが、今年は花ではなく普通に吹雪いて驚いた。
式の最中は流石に涙が出たが、外に出ると降る雪と寒さのせいで妙にテンションが高くなる。
「亜美ちゃーん、気をつけて行くんだよー!」
「解ったーっ」
無事に式を終えたみつると亜美は、校門を出たところで白い息を吐きながらそう声をかけ、解散しようとした。
今日は友喜も卒業式なので、亜美は待ち合わせているらしい。
(皆、無事に大学に合格したから……出来るだけ、一緒にいたいよね)
そう思ったからこそ、友達としてみつるも誘われていたのだが、今回は二人きりが良いだろうと断っていた。そして一人、家に帰ろうとしたのだが。
「みつる! 都合解ったら、連絡してねー」
築島に言われた通り、みつるが彼からの連絡を待っていると亜美は知っている。
その為、大学進学前に遊ぼうとは言っていたが――日程は、築島から連絡が来てからだと亜美から言われていた。申し訳ない限りだが、一方で築島の言葉を知っている、そして信じているのが自分だけではない事が嬉しかった。
「うん! 連絡するっ」
だから、吹き付けてくる雪に負けないようにみつるは亜美に負けないように、大きな声で返事をした。
そんなみつるを見て、亜美は笑顔で手を振ってきて――しばしその後ろ姿を見送った後、みつるは吹雪に舞う髪を押さえつつ帰路に着いた。
……そんな彼女を、家で迎えてくれたのは。
テーブルに置かれた旭山動物園の、ペンギンの絵葉書だった。
※
瀬尾さんへ
ご無沙汰しています、築島です。
急なんですが三月四日の日曜日、札幌に行くことになりました。
午前十一時に、札幌駅西口の改札のところで待ってます。
それでは。
築島広郷より




