一月十五日
「昔なら、突っ走れ! 会いに行って、気持ちを確かめればって言ってたと思うけど」
三学期が始まり、いつものように放課後、一緒に家まで帰る時にみつるは思い切って亜美に悩みを打ち明けた。
亜美から返されたのはそんな、友喜の影響を受けつつも慎重な言葉で。
そして、しばらく無言で歩いたところで、黙っていた亜美が言葉を続けた。
「気持ちが通じたとしても、遠距離って辛そうだよなって……まあ、そうだとしてもやめる事はないんだけど」
雪の中、白い息を吐きながら後半、語られたのは友喜のことで。
あの後、距離を縮めた友喜と亜美は、中学卒業後に付き合い出した。
友喜は駅伝部がある高校に行ったので、みつる達とは別の高校になったのだが――それでも、今までは家が隣同士だったのでまだ接点はあった。
けれど、友喜は駅伝を続ける為に東京の大学への進学を希望している。
みつる達同様、まずは受験があるのだが――もし受かったら、北海道と東京で二人は離れ離れになるのだ。
「ただ、始まらなきゃやめるも何もないんだよね……って、違う! ごめんっ!」
溢れたように、零れるように。
そう言った亜美だったが、そこで不意に自分の頬を両手で叩いて謝ってきた。
手袋越しだとは言え、すごい勢いでのそれに驚く。
「いや、むしろこっちこそごめん」
「みつるは、謝らなくていいよぉ……あたしが、ネガキャンしたのが悪いんだからぁ……」
「……亜美ちゃんも、辛いの?」
痛みと動揺に目を潤ませ、声を震わせる亜美。
今日は別だが、今まで亜美が友喜の進路に反対したり、そのことについて愚痴ったりするのを聞いた事がなかった。
逆に、少しでも友喜を支えたいと栄養士の勉強をする為、その勉強が出来る大学を志望校に選んだくらいだ。
しかし、遠距離になる事を亜美が不安に思っているのなら――何が出来る訳ではないが、まだ始まってすらいない自分の事より、亜美の話を優先するべきだ。
そう思って尋ねたみつるの前で、涙目の亜美がけれど、叩いて赤くなった頬を笑みに緩めた。
「辛くないとは言えないけど、始めた事は後悔してない」
「そっか、ありがとう」
そしてキッパリと言い切った亜美に、みつるはこくんと頷いて言葉を続けた。
「……受験、終わったら先生に連絡してみる」
中学生の時と、今とは違う。旭川までなら、一人でバスやJRに乗って行く事も出来る。
まずは直接、築島と会おう。それから自分の気持ちを確かめて、恋のままだったら玉砕覚悟で告白しよう。
そう決意したみつるは、受験が終わった後に葉書ではなく、久々の手紙で築島の都合を聞いてみた。
けれど、築島からはすぐ返事が出来ない事への謝罪と「また連絡します」とだけ返事が来て――みつるはそのまま、高校の卒業式を迎える事になった。




