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足の爪の臭いフェチ

作者: 瓜

インスタント変態小説がテーマです。

足の爪の間というのは、独特な臭いがする。

調べてみたところ、イソ吉草酸という物質が原因らしい。

悪臭防止法で規制されている値から分かるように、少量であっても臭い。Wikipedia曰く「チーズのような刺激臭」だとか。

しかし、私はこの臭いが好きだった。つい嗅いでしまうクセがあった。


元はと言えば、足の爪を切った時に漂ってくる臭いだった。あれもどうしようもなく、誰に聞いたって臭い。

ただ、先に言った通り、私はこの臭いを妙に気に入って、その原因が知りたくなった。

それで、イソ吉草酸という言葉に辿り着いた訳だ。まあ、それで得たものはなかったが。


それから暫くして、足の爪が伸びてきた。

「爪、そろそろ切るか」と思い、切りやすいよう洗面台に片足をかけたところで、ふと思い出した。

そういえば、ついこの前家族が買ってきたばかりの爪やすりがあったな、と。何でも、テレビか何かで「ネイルサロン帰りの爪をおうちで!」と紹介されていて、買ってみたらしい。多分、足に使う物ではなかった、と今は思う。

兎角私は、ある種興味からやすりで爪を削っていく事にした。

するとどうだろう、切るのとは比べ物にならない芳香が立ち上ってきた。いや、いや。臭い、臭かったが、私にとっては好い臭いだった。

シャッシャと小気味良い音を鳴らし、爪は削れ、白い粉となって洗面台に落ちていった。そして、やすりの方にも僅かに爪の粉が付着していた。

恐る恐る顔を近づけると、あの臭い。

脳髄が痺れた。

普通に爪を切った際の、一瞬で消える臭いではない。強く、存在感のある、粉という形をとった臭いだった。


私は暫し、犬のように鼻を鳴らして臭いを愉しんだ。洗面台の鏡に映ったその姿は、我ながら浅ましかった。

さて、それで満足したかというと、そうでもなかった。寧ろ、更に強い刺激が欲しくなった。

気づいた時には、私は指でやすりに付いた粉を人差し指でこそぎ、口に運んでいた。

口に入れるのにほんの一瞬躊躇ったが、結局、恐々といった調子で舌を突き出し、舐めとった。余りに指と口とに意識を集中していたため、濡れ光る桜色の舌が弧を描く様さえ見えた程だ。

肝心の味はというと、余りしなかった。やや生っぽい位だ。期待していた臭いも、一息で鼻から抜ける程度だった。

何だ、残念と思いつつ、私はやすりを水洗いした。


その後、何となく濡れたままのやすりで手の爪も削ってみた。

水と爪の粉とが混ざって、小さな白い塊になった。

そちらも一応、口にした。

舌で塊の存在を感じ取り、転がし、味わった。圧縮した時は固めの球体のようで、潰した時にはザラザラとした、集合体のような感触。乾燥した粉とはまた違った。味の方は、イソ吉草酸の臭いはしなかったものの、先程よりもより生っぽかった。やはり爪だな、という味がした。

同時に、これがたんぱく質、ケラチンの味か、などと下らない事を考えた。


そこで今度こそ、私は爪やすりを片付けた。

お目汚し失礼致しました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 大爆笑しました。こういう文大好きです。
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