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ミュージックオブスパーダ  作者: 桜崎あかり
ランカー登録編
9/114

第9話:その世界は、動き始めていた

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 ゴールデンウィーク明け、CDのデイリーランキングが激しく動いている状況は、何かを連想させるようでもあった。


 しかし、奏歌市ではランキングの話題が禁句と言う訳ではないが話題に触れない方がいいという空気が漂っている。


 それに加えて、ARゲームのエリアでは禁酒と禁煙が義務付けられているのだが、そうした影響もあって歓迎しない勢力がいるのも事実だ。


 ARゲームを町おこしに考えていた草加市だったのだが、前途は多難だったのである。


 

 アカシックレコードの解析に関しても前途多難だった。発見されたのは秋葉原の電気街にあった貸しビルだったという。


 その貸しビルで起動していたサーバー数点、それがアカシックレコードだった。


 サーバーの容量は1000テラという想像以上の容量を持ち、どうやって電力供給をしているのか…という疑問も浮上する。


「これは一体、どのようなサーバーなのか――」


 このサーバーを見つけた人物はビルの管理人と言う訳でも、警察が違法営業の店を摘発に来た訳でもない。単純に宝探しをしていただけであった。


 宝探しと言っても、無断で行えば不法侵入で捕まるのは当然だ。そこまでご都合主義が存在するはずもない。その為、ビルの管理人に許可を取った上で調査をしていたのだが……。


「電気代もサーバーが常に動いていれば、明らかに電気代がかかるはずだが」


 電気に関しても疑問点があったのだが、それは屋上を調べる事で解決した。置かれていた物、それは風力発電用の小型風車複数と太陽光パネルだった。


 これで電力を確保し、余剰電力は秋葉原全域に提供されていた。こうした売電によって資金を確保し、サーバーを運営していたのかもしれない。


 しかし、このサーバーはブラウザゲームやオンラインゲームの物ではなかった。入っているデータは文章、画像、動画のカテゴリーに



 サーバーの発見から数日後、データの莫大な量もあって解析作業は難航していた。しかし、ある文章を発見した事で事態は一転したのである。


【アカシックレコード、それは複数世界における超有名アイドル商法へ対抗する為、さまざまな技術を集めて生み出した存在】


【その技術は地球さえも容易に破滅へ追い込む事も可能であり、これを軍事へ用いる事はあってはならない】


【そして、この技術がこの世界でも使われれば、他の世界でもアカシックレコードの記述が更新され、そこから新たな技術が生み出されるヒントを――】


 この文章を見た解析班は、あまりにも超展開と言えるような内容に驚いた。世界を破滅させる技術と言うのだが、ファンタジー世界における聖剣を現代によりみが選らせる事を意味してしているのか……と。



 アカシックレコードが発見されてから10年が経過した西暦2016年、それはARゲームと言う形で技術転用される事になった。


【これが……!?】


【ゲームバランスが丸投げされている】


【どうしてこうなった】


 ロケテストされていた作品でアカシックレコードの実験を兼ねてデータが投入されていたのだが、その能力は常識が通じないと言っても過言ではない。


 これほどの技術があれば、世界征服も容易であり、瞬時に国を滅ぼす事も容易と思われる。


 ネット上では『WEB小説で良くある異世界転生、チート作品でよくある』の一言で片づけられ、政府関係者も『実現するような物ではない』と非公式の談話を発表している。


 どうやら、アカシックレコードの技術を周囲は「黒歴史」として意図的に「触れない」ようにしているとしか思えない。


 その後、一部エリアでARゲームがブレイクするのだが、それを巡ってモラル崩壊とも言えるような事件が発生した。しかし、これに関しては一部のアイドルファンの暴走と警察が発表する。


 その理由に関しては憶測が存在するのだが、真相は謎のままである。


 一説には超有名アイドルの芸能事務所やアイドルファンが投資と言う名のコンテンツ支配を考えていたのだが、世界進出中もあって公にできない結果……マイナーグループが身代わりになった説もあった。


 真相を知ろうと考えた人物もいたのだが、トップシークレットには強固なプロテクトが存在し、解除する人物はいなかったという。



###


 西暦2017年、一連の超有名アイドル不祥事が表に出る事はなかったのだが、ある出来事をきっかけに週刊誌報道が過熱化していく事になった。


 それは超有名アイドルによるCDチャート独占である。その様子はFX投資とまで言われ、海外のアーティストからはつぶやきサイト等でバッシングの嵐になったと言う。


 この大規模炎上事件が週刊誌報道を過熱化を呼び、ネット炎上サイト等も加わる事で悪化していった。最終的には政府も超有名アイドル優遇と言える税制改革や経済政策を白紙に戻さざるを得ない事態に発展する。


 その後、さまざまな炎上事案が存在するのだが……それを深く知ろうと思うのであれば、アカシックレコードの最深部を探る必要性が出てくる。


 アカシックレコードの最深部、そこには全てを根底から覆すような記述が存在するとも言われ、それを見た物は歴史の表舞台に二度と立てなくなるとまで警告されていた。


 しかし、こうした警告は一種のブラフと考えて興味本位でアカシックレコードを探ろうとした者は何人もいる。


 警告を無視した結果、彼らは超有名アイドルファンを辞める事になり、二次元のアニメやゲームのアイドルへ鞍替えしたという話もまとめサイトで言及――。



 超有名アイドルのCDチャート独占が表沙汰になり、こうした行為がチートだと非難されていた頃、草加市では『奏歌市』と名称変更してから初めてとなる特区としての行動に出た。


「複数のゲームメーカーに声をかけ、新たなジャンルのゲームを作る」


 当初はジャンルは固定せず、様々なジャンルで募集をかけていた。しかし、対戦格闘でも数機種が確立し、TPSやFPSも存在、更にはバーチャルサバゲやレースゲームもネット上で話題になっていた。


「新たなジャンルを求めていたが、どれも既出の域を出ていない」


「これでは他の分野でも起こっているようなコピペジャンルが広まる事に……」


「我々が求めているユーザーは、フジョシや夢小説勢、超有名アイドルファンの様な炎上案件には程遠い勢力だ」


「しかし、炎上案件にならないようなジャンルと言うのは、この世にはないだろう」


「それこそリアルチート等と言われ、逆に争いの種になると分からないのか?」


「だが、超有名アイドルの様な1万人以下の投資家が市場を独占するような……そうしたジャンルではない物を生み出さないと」


 市役所の会議室で行われていた会議も不発が続き、万策が尽きた。そこで、市民から公募する事になったのだが、動きが出たのは1週間もたたない火曜日の事だった。


【現状を打破できるであろうジャンル、それは音楽ゲームです】


 この投稿主は分からずじまいだったが、音楽ゲームの開発経験のあるメーカーが挙手をしていく。ジャンルをフリーにしていた時とは比べ物にならない。



 その後、トライアルを行った結果として5社が最終選考に残り、その5社がARシステムを使用した音楽ゲームを開発していく事になった。


 西暦2017年6月、5機種のテストが草加市のホールを使って行われる。そこで、スタッフの説明を交えてのコンペが行われているのだが……。


「音楽ゲームの基本を押さえた5機種が揃ったか」


「しかし、システムに関してはARゲームの物を取り入れても代わり映えはしない」


「ARガジェットで演奏をするようなシステムでは、特許を取る事も難しい。やはり、音楽ゲームでは無理があったのか」


「北千住ではパルクールをモチーフにしたアクションが現実化している。それを踏まえれば、音楽ゲームをベースにしても我々の予想を超える機種は生まれるだろう」 


「ARゲーム自体は無限の可能性がある一方で、架空と現実を区別できなくなる事案もあるが……」


「その点は問題ないだろう。このARゲームガイドラインで既に確立がされている以上、チート等の様な悪意を持ったプレイヤーが現れない限りは問題ない」


 奏歌市の運営委員会が、それぞれの機種を見て回り、チェックを入れていく。


 展示されていたのは擬似的ライブを再現できる物、ARガジェットを楽器に見立てて演奏する物、バーチャルカラオケ、ARアバターによるアイドルゲーム物……どれもパンチ力に欠けていた。


「これは……?」


 運営委員会の一人が、ある機種の前で足を止める。PVを見る限りでは、ハンティングゲームにも似たようなプレイ光景が流れているが……。


「君、今回のテーマは音楽ゲームのはず。狩りゲーは今回のテーマ対象外だぞ」、


 別の委員会メンバーの男性もPVを見て、違和感に気付いた。これは、どう考えても狩りゲーであり、音楽ゲームではない。


「PVの方は最後まで見ていただければ、我々の意図が分かります」


 委員会のメンバーの前に姿を見せた人物、彼は背広を着ておらず、ARガジェットにARアーマーと言う臨戦態勢な状態とも感じ取れた。


「その服装が……音楽ゲームをプレイする格好とでもいうのか?」


 バンドの経験もある男性が、彼の外見に関して指摘する。自分も似たような衣装を着た事があると言う関係上、特に笑ったりするような仕草を取る事はなかった。


 確かにアニメやゲームのコスプレを思わせるバンドや2.5次元バンドと言う物も存在する以上、この格好が音楽と無関係と断言はできない。


「その通りです。このゲームは『ミュージックオブスパーダ』というハンティングゲームの要素と音楽ゲームの要素を足した……画期的な音ゲーです」


 この人物が、後にコンテンツ業界の根本を変えようとしていた南雲蒼龍なぐも・そうりゅうであると気付いた委員会メンバーはいなかったという。



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