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ミュージックオブスパーダ  作者: 桜崎あかり
ギャラリー乱入編

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第50話:ゴッドランカーモード

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 西暦2018年7月14日、本選トライアルは山口飛龍やまぐちひりゅうの圧勝と言う事で幕を閉じる事になった。


 彼が覚醒した力、ネット上ではハイパーモードやV-MAX等と呼ばれていたが、後にゴッドランカーモードと統一される。


 ゴッドランカーモード、それは3速が限界のスピードを5速にまで上昇させ、更には発動時限定で判定が大幅に変化するまでは解析されているのだが――。


【ゴッドランカーモードに関しては謎が多い。あれだけのスピードに振り回されないか不安が残る】


【あのスピードは100メートルを10秒と言う様なクラスではない。別ゲームの例えでハイパーモードと言われているが】


【しかし、音楽ゲームでハイパーモード……更には楽曲に干渉して特殊BGMが流れるのは、どうなのだろうか】


【特殊BGMはハイパーモードの実装されているARゲームで全て共通だ】


【あの仕様は同様のシステムを使っていれば、搭載されていなければおかしいと――その段階でクレームをいれるユーザーもいる位だ】


【初心者救済用システムとも言われているが、あのスピードを初心者が扱えるはずもない】


【そして、上級者プレイヤーでも100%使えるプレイヤーは少ない。そこから付けられた名称が――】


 ネット上でもゴッドランカーモードの存在に関しては関知していたようだが、その仕様に関しては賛否両論である。


「ゴッドランカー、この域に到達した人物が4人――」


 つぶやきの流れをタブレット端末で確認しながら、動画を見ていたのは私服姿の信濃しなのリンだった。


 彼女は残念ながら予選落ちだったのだが、今を思えば予選落ちの方が逆によかったのかもしれないと安堵している。


 その理由はゴッドランカーモードを解放した4人の人物が、スコア的にも上位ランカーと言っても過言ではないメンバーだったからだ。


「山口飛龍、大和杏、長門未来に――南雲蒼龍の4人」


 信濃が見ていた動画には、長門未来ながとみらいが相手のプレイヤーを凌駕するようなスピードで楽曲を演奏していく姿が映し出されている。


 そのスピードは、相手の方がスローモーションに見える位のスピード差があった。しかし、スコアのカウント速度が両者とも違ったとしても、楽曲の速度に関しては全く同じだった。


 どうやら、ゴッドランカーモードはスピードが上昇しても曲が早送りになるようなことはないらしい。


 ミュージックオブスパーダはスピード勝負のレースゲームやアクションゲームでもない。あくまでも、音楽ゲームである。


 音楽ゲームの場合、スピードが影響するのは流れてくるノーツの速度位だ。このスピードは基本的に調整できない作品も多く、速度を1変えただけでも別世界になるゲームも存在していた。


「上位ランカーには簡単な譜面のノーツがスローに見えると言う逸話もあるらしいが――」


 音楽ゲームでは、上級者は難易度の高い譜面しかプレイしないとネット上で言われ続け、こうした事情があって初心者が入りづらい環境になっていると言う。


 有名ライセンス曲を追加したとしても、ユーザーの増加がスマホ系の音楽ゲームに取られたりしているのは……別の事情もあるのかもしれない。



 同日午後1時、損傷したARガジェットで複数のプレイヤーを相手にしていたのはバウンティハンターだった。


 ハンターの存在も過去の物となり、今となっては超有名アイドルファンにとっての死神というポジションに落ち着いている。


 現在のバウンティハンターは一次期の流行で増えた100人以上を大幅に下回り、今となってはファーストバウンティハンターと呼ばれた加賀かがミヅキのみ。


「お前達はコンテンツ流通に――疑問を持たないのか―」


 バウンティハンターのボイスチェンジャーも破損し、所々で加賀の声も混ざる。彼女が相手にしているのは、超有名アイドルファンである。


「売れているアイドルこそが、一番人気。それが単純明快じゃないのか?」


 ファンの一人が言う事も、確かに一理あった。しかし、超有名アイドル商法と言うメッキをはがそうと戦ってきたはずのバウンティハンターも、数の暴力には勝てなかったのだ。


「そこまでして――お前達は平和だったジャンルにも戦火を広げ、超有名アイドル一色にしようと言うのか!」


 加賀の怒りは頂点に達しようとしていた。彼らの挑発に乗れば――逆にネットで炎上する事は避けられない。


「そんなボロボロの状態で、我々の新型外部ツールを使用した無人部隊に勝てると思っているのか?」


 加賀の目の前にいたARガジェットの軽装甲兵、それは何と無人AIと外部ツールを使用して生み出されたアバターだったのだ。


 ソーシャルゲームの中には、プレイ時間短縮やレベル上げを楽にする目的だけで外部ツールをためらいなく使用するユーザーがいると言う。


 今回の無人ARガジェットも同じだとは思いたくはないが、加賀の怒りは爆発寸前だ。


「お前達は、プレイ動画を見て満足するだけの勢力と変わりない。そのような勢力を――ARゲームの勢力が、許すはずがない!」


 加賀の振り下ろしたボロボロのブレード、それが無人のARガジェットを真っ二つ――その直後に消滅する。どうやら、このガジェット兵自体がCGのようである。


「このようなコンテンツ消費勢力が――超有名アイドル投資家の正体だったと言うのか」


 その後、加賀は力尽きたかのように倒れるのだが、ここで救急車が出るような展開にはならなかった。


 仮に救急車でも出てきたというのであれば、それは一種の事件として拡散され、それこそARゲーム存続の危機である。


「加賀ミヅキ――何と哀れな」


 そのフィールドに乱入したのは、黒い重装甲ガジェットの人物、鉄血のビスマルクである。


「彼女はどうしましょうか?」


 ビスマルクに同行していたスタッフが加賀を回収、そのまま特殊装甲車へと運ぶ。どうやら、ARゲーム運営所属の車両らしい。


「疲れているのだろう。そのまま休憩所へ移動させるだけでいい」


 ビスマルクの一言を聞き、スタッフの方も驚く。これで疲れているだけなのか?


「ガジェットの方は損傷が激しいが、生命維持装置を初めとしたシステムは健在だ。それならば、特にこちらが手を貸すまでもない」


 彼女の真意は不明だが、ビスマルクの指示通りに近くの休憩所まで移動させる。


 それから5分後、加賀が目を覚ます――と言うよりも、ガジェットの機能が回復し、復活したのである。


 厳密に言えば、加賀は戦闘エリアで体力が0になり、特定エリアへリスポーンしたのと同じ感覚だろうか。




 更に2週間後の7月28日、本格的に第2期ガジェットが入荷し、ミュージックオブスパーダでも後期型のガジェットを運用するプレイヤーが増え始める。


 第1期のガジェットでもプレイは可能であり、この辺りはプレイヤーの技術次第なのだが――システムとしては第2期の方が優秀なのは明白であり、乗り換えるユーザーが多いのも事実だった。


「まさか、第2期ガジェットの導入が早まるとは」


 山口飛龍やまぐちひりゅうは、シールドビットを使用するのは変わらない。しかし、それ以外にも折り畳み式スナイパーライフルもオプションで所有している。


「この状況を望んでいたのは、一体誰なのだろうか」


 アンテナショップでガジェットの整備をしている山口は、今回のスケジュールに対して疑問を持っていたのである。


 果たして、今回のシステム変更は以前に指摘されていたセキュリティ関係の脆弱性だけなのか――と。



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