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ミュージックオブスパーダ  作者: 桜崎あかり
ランカー激戦編

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第43話:ハンドレットランカー(中篇)

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 6月17日、メビウス提督の部屋にいた明石春あかしはるは自分の部屋へと戻っていた。この家はいわゆるシェアハウスと呼ばれる物ではないが、マンションと言うには構造も違う部分がある。


「アガートラームがチートとは違う概念を持っているのは間違いない。しかし、それを立証できるほどのデータも足りないのが現状か」


 明石は大和杏やまとあんずが使用しているアガートラームがチートとは違うと考えているのだが、その決定打となるようなデータは明らかに足りない。


 ネット上ではアガートラームをチート武装の一つとしてカウントされている理由に『相手の能力無効化』と言う物がある。


【アガートラームの能力無効化はチートの一種じゃないのか?】


【サバイバル系のARゲームではチート認定はされていないが、アップデートで使用制限がかかったようだ】


【しかし、あのスキルは特定条件下でしか発動しない。つまり……相手側にも何かの条件が達成された場合にか発動しない可能性が高いだろう】


【どんな条件だ? 体力が一定以下のような格ゲーでもあるような条件か?】


【ソレが分かれば苦労しないが、面白い情報がある。このURLに書かれている動画を見ると良いだろう――】


 URLありのつぶやきが流れ、その動画を明石も確認する事にした。



 その動画の投稿日時は6月15日と記載がある。投稿日時とプレイ日時が一致しないのは良くある事だが……。


「なに、これ――」


 明石も動画の内容には動揺を隠せなかった。他の動画視聴者も同じような意見の為、反応としてはあながち間違いではないらしい。


 動画の内容を簡略的に説明すると、大和が楽曲の選曲後にアガートラームを装着している方の右腕が輝きだしたのだ。


 その後、対戦相手は全力を発揮することなく演奏失敗、大和の方はフルコンボを決めると言う流れになったのだが……。


【この数日後、対戦相手は外部ツールを使っていたとしてアカウントが凍結されたようだ】


【もしかすると――外部ツールやチートを使用している対戦相手に限定して発動するのでは?】


【そうだとすれば、大和が意図してチートプレイヤー狩りの様な事をしていたのかも納得出来る】


【だが、そこまでチートを嫌う理由は何だ?】


【単純に違法な事をしてまでハイスコアを狙おうとする自慢プレイヤーに嫌気がさした……だけでもなさそうだな】


【彼女の目的はARゲームのイースポーツ化と聞いている。おそらくは、不正プレイで賞金を刈り取られる事を懸念しているのかも】


【それならば、南雲蒼龍なぐもそうりゅうが賞金制に疑問を持っていた事も分かる】


【刈り取られた賞金が、超有名アイドルへの投資に使われると言う事か?】


【過去に振り込め詐欺で逮捕された犯人が『アイドルグループのグッズやCDの購入資金にした』という話があって――】


【これを封じる為にARゲームの賞金制度を禁止にしていたのか?】


【厳密には禁止ではない。制限をかけていただけだ】


 様々なやりとりを見ていく内に、明石は過去に自分が見てきた光景を唐突に思い出した。


 その時もミュージックオブスパーダとは違うが、賞金を巡って醜い争いが起こり、超有名アイドル勢が様々な理由を付けて賞金を刈り取る事案が発生した。


 しかし、この事件の真相は警察及び運営サイドが協議した結果、同じような事案の発生を防止するという理由で詳細は公表しない事になったのである。


 これに関してはマスコミからも真相の追求があったようだが、それを阻止したのがアキバガーディアンだった。


「ハンドレットランカーもトップランカーも――同じランカーだ。所詮はチートを使っていなくても、不正プレイヤーが出現しただけで疑われる」


 明石は過去の事例を踏まえ、ランカーという種族はチート勢と結局は同じだと思い込んでいた。


 しかし、その思い込みは思わぬ場所で無意味だったと理解する事になる。



 6月18日午前11時、遂に最後の課題曲でも理論値が記録された。理論値を出した人物は、意外な事に大和である。


「チート勢に対し、違法アプリは無意味だと知らしめるつもりが……理論値を記録したと言うのか」


 大和の方もスコアリザルトを確認するが、実感がわかない。いわゆる放心状態に近いだろう。


「アガートラームの力は、あくまでもチートの無力化のみ。ガジェット自体の力は他のガジェットと変わらない」


 この曲がプレイ終了したと同時に、大和はゲーム終了となる。他のプレイヤーとすれ違った際、何かのオーラを感じたのだが……気のせいと思う事にした。


【理論値が出そろったか】


【しかし、3曲とも別のプレイヤーが理論値一番手となった。問題となるのは、ここからだろう】


【それぞれの曲で使用するガジェットを変える必要はないのだろうか? 実際、理論値を取ったプレイヤーは使用するガジェットのタイプが違うと聞く】


【ガジェットを曲ごとに変えるのは、タイミング等が掴みづらくなるからお勧めできない。使いなれたガジェットで挑戦するしかないだろう】


【ウィキの攻略法に頼り切るのも問題がある。稀に偽情報がまぎれる事もあるからな】


【ネットの情報を鵜呑みにしてプレイするのも危険か。特にARゲームの場合は、それを痛感される】


【RPGであれば一本道もやむ得ないが、これは音楽ゲームだ。攻略法は人によって違うはず】


【それに、ミュージックオブスパーダの場合は攻略法が一定ではない。固定パターンが確立された場合にはアップデートで対応しているようだ】


【それって、意図的に攻略させないようにしているのか?】


【そう言う訳ではないだろう。TCGでもメタデッキが確立されたり、バランスブレイカーが出回ると、その対策の為に禁止カードを設定する等の対応をするはずだ】


【格闘ゲームでも一定のパターンが確立されると、調整が入る事があるな】


【音楽ゲームでこの手のバランス調整も珍しいが――いわゆる挑戦と言う事かもしれない】


 大和がつぶやきのタイムラインを確かめた辺りで、案の定というか理論値の出し方なども議論されていた。


「音楽ゲームのイースポーツ化を考えるならば、パターンという考えは排除するべきだろう」


 大和は音楽ゲームのイースポーツ化をあきらめたわけではない。ARゲームのイースポーツ化は別の人物に任せると言う手もあるのだが……。


 一方で、音楽ゲームのイースポーツ化に反対する勢力も存在する。そうした勢力に命を狙われている訳ではないが、警戒を解く事はなかった。


「どちらにしても、音楽ゲームのイースポーツ化で反対する分野は検討が付いている。また、超有名アイドルの亡霊がミュージックオブスパーダに現れると言うのか」


 ドーナツを口にしながら、大和はコンビニ前のベンチに座り、各種情報を集めていた。超有名アイドルはミュージックオブスパーダからは撤退したはずなのに……。



 同日午後1時、次々と理論値を記録するプレイヤーは現れるのだが、一部は外部ツールやチートを使用したとして失格扱いになっている。


【あっさりと理論値が増えるはずはないか】


長門未来ながとみらいやビスマルクも苦戦していると言うのに、ポンポンと理論値が出されたら困る】


【上位ランカーは地力も付いていると聞く。そうした勢力に対抗するには、それ以上の努力が必要になるだろう】


【それをチートで楽しようと考える人物、ああいう目立ちたいだけの勢力がARゲームの過疎化を生み出すと気づかないのか?】


【その議論はするだけ無駄だ。ソーシャルゲームやブラウザゲームでも外部ツール議論は何度もされている。その結果が、外部ツール禁止法案だ】


【向こうの方は法案が成立していたのか。ARゲームのチートが出回っている理由は、そちらの方ではチートが売れなくなった為に……と言う事か】


 チート議論も展開されているのだが、こちらに関しては県外のつぶやきである。埼玉県内ではブラウザゲーム等で使われるチートのつぶやきは出来ない。 


 その理由として、埼玉県内ではソーシャルゲームでもイースポーツの種目に出来るように外部ツール禁止法案が出された為だ。

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