第40.5話:あるノイズが起こした、とある発言
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DJイナズマ、彼は木曾あやねに禁断の武器を提供したと言っても過言ではない。
『お前が何をしたのか分かっているのか?』
無線の連絡主はアキバガーディアンのメンバーだが、実際は彼との面識は一切ない。
「分かっていますよ。ARウェポンでも一部機種で使用禁止、パズルゲームや音楽ゲームでようやくリミッター50%制限……」
『それを把握していて、あの人物に渡したと言うのか?』
「木曾あやね――今はあの武器と同じソロモン72柱の名を語っていましたか」
『コンテンツ業界の暴挙とも言える超有名アイドルのやり口は知っているだろう。奴らこそコンテンツ流通を阻害する獅子身中の虫――政治家と組んで一次オンリーを企む等……』
「超有名アイドルの芸能事務所が獅子身中の虫と言うのは同意しますが、何処かの政治家が実行しようとした計画を借りた『一億人創作作家計画』に協力した覚えは――」
『それもアカシックレコードの意思だと言うのか?』
無線の主が段々焦り始める。おそらく、話相手の正体がDJ稲津魔都も気づかずに計画を話してしまっている事にも気づいていないのかもしれない。
「どうやら、獅子身中の虫はアキバガーディアンの名を語り、自分達だけが無限の利益を得ようとしているあなた達のようですね」
『何だと? ソレはどういう事だ――』
無線の向こうでは何かの声が聞こえる。警察官と言うよりは、本物のアキバガーディアンが姿を見せたのだろう。
「あなた達は知り過ぎた。超有名アイドル、政治家、フジョシ勢、夢小説……そして、3次元アイドルと炎上ブログを利用し、賢者の石とも言うべき無限の利益を――」
しかし、無線の向こうの人物の返答が来る事はなかった。どうやら、アキバガーディアンに捕まったと言うべきだろうか。
「どちらにしても、あなた達の様な悪意の塊、ネット炎上を更に悪化させる勢力を放置するわけにはいかない」
イナズマがアンテナショップを出ると、そこに待ちうけていたのは長門未来だった。
インナースーツで少しやせているようにも見えるかもしれないが、彼女のぽっちゃり体格は目立つと言ってもいいだろう。
「私は政治的部分には口は突っ込まないけど、ARゲームが流血を伴う戦場になるのは……見ていて不愉快だわ」
長門は『不愉快』の部分が弱気で、他は強気と言う様な口調でイナズマに話しかける。
「長門未来、君は大淀はるかの発言がネット上で悪用されると考えて動き出した……違うか」
イナズマの方も若干だが発破をかけてみる。当たるかどうかは分からないが……。
「ARゲームはアニメやゲームであるような『玩具で世界征服』の様な事に利用されて欲しくない。大淀の発言は、それ以上の部分も見ていた」
この話を聞き、イナズマの方は若干驚いていた。『玩具で世界征服』と言う単語が出てくるだけでも、アカシックレコードの『流血を伴うシナリオ』という回りくどい表現を砕いたと言える。
「ARゲームで怪我人が出ないという事自体、違和感を持つしかなかった。そう言ったご都合主義の積み重ねこそ、この世界の正体とは思わないか?」
イナズマの質問とも言える発言だったが、それに長門が答える事はなく、彼女は別の話題に切り換えた。
「あなたが渡したARウェポン、あれはバルバドスね」
まさかの直球発言にイナズマは凍りついた。渡したという部分で誰に渡したか、そこに関して長門は言及していないが……百も承知だろう。
「あれを持たせる人物を間違えれば、『玩具で世界征服』は現実化する。それこそ創作という一言で済ませられるような事が、4次元の壁を破って実現するだろうな」
長門よりも先に、イナズマの方が一言を残して姿を消した。一体、イナズマは何を考えていると言うのか。




