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ミュージックオブスパーダ  作者: 桜崎あかり
ランカー激戦編
42/114

第38話:音楽ゲームランカー(中篇)

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 6月12日午前10時、課題曲が発表されてから1日が経過していた。


 しかし、現状ではハイスコアを獲得したプレイヤーが数人いたとしても、入れ替わり立ち替わりが続く。


【大淀がトップと思ったが、聞いた事のない名前のプレイヤーがトップらしい】


【強豪ランカーは、現段階でほとんどが様子見。ビスマルクが慣らしでプレイした以外では未プレイらしいぞ】


【これは千載一遇のチャンスと言うべきか】


【課題曲は解禁必須という条件でもないのに、どうしてプレイをしない状態が続くのか?】


【三日天下でも無名のプレイヤーを持ちあげようとしているのか、あるいはチートプレイヤーをあぶり出す為にランカー勢が意図的にプレイしていないか】


 上位プレイヤーは名前も知られていないような無名ばかりで、おそらくは人気や名声狙い、賞金狙いの可能性もある。


【賞金は――決勝トーナメントで再告知と言う噂もあるが、どちらにしても難しいだろう】


【イースポーツでは賞金バトルも開催されているが、ミュージックオブスパーダで同じような事例はない。要望は出されているようだが】


【仮に賞金制度が実装されれば、18歳未満はプレイ不可等の制約も出るだろうな。別のARゲームでは実際に18歳未満のエントリー禁止となっている物もある位だ】


【どちらにしても、警察の家宅捜査を受けている芸能事務所や政治家等が手出しできない今だからこそ、別勢力が今回のイベントに便乗して動き出す可能性がある】


【別勢力と言うと、フジョシや夢小説勢か?】


【そちらも遊戯都市近辺で反ARゲームの市民を利用してデモを行っているらしいが、一斉検挙されたというニュースが報道されていた】


【おそらく、仮に別勢力が妨害するとしたら、現状のARゲームに対して不満を持った勢力か。俗に言う――】


 あるつぶやきで特定単語がNG指定だったらしく、途中でコメントが途切れている物があった。


「他のランカーは誰もエントリーしていないのか」


 そのつぶやきを見て、何かを考えていたのは加賀かがミヅキである。彼女は別ARゲームのイベントもあり、こちらへは深く入り込まない予定だったのだが……。



 午前10時30分、ミュージックオブスパーダの稼働エリアでは連日の混雑が嘘みたいな過疎状態である。


 それでも10人待ち等の状態が続くが、稼働初期の混雑が信じられない……というプレイヤーも多い。


 その原因は別のARゲームの稼働、ミュージックオブスパーダの稼働エリア増加、一部プレイヤーの荒らしによる風評被害等が言われているのだが、どれも決定的な過疎の理由には弱いだろう。


「やはり、ハンドガンのプレイヤーが減っている。原因はハンドガンにあるようだな」


 草加駅と谷塚駅の中間にあるエリア、そこに姿を見せたのはインナースーツを着用済みのビスマルクだった。


 インナースーツで街中を歩いても遊戯都市内やARゲームの稼働エリアでは、特に警察が呼び止める事はしない。それ程、ARゲームの認知度は大きい。


「一時はネット上で拡散していた超有名アイドルによるARゲームを利用したコンテンツ支配……というようなデマにおびえていると思われたが」


 早く来すぎたとも考えたのだが、それにしては人の数が少ない事は気になっている。テロの予告等があった訳ではないのに……。


 仮にテロの予告があっても、ARゲームの進行が止まる事はない。ゲーム進行が止まるとすれば、洪水や地震、台風などの自然災害で続行不能になった場合だけだ。


 テロ情報が入った場合、ARゲーム運営側で内容の信ぴょう性を含めた確認が行われ、そこから重要度合いが高い場合のみに警戒レベルの引き上げが行われる。


 中止に関しては個別案件であり、運営側や遊戯都市が従わせる等の行動はとらない。


 これは、過去にある漫画作品を巡っての脅迫事件、超有名アイドル商法を巡る一連の事件等で得た犯人の行動心理に基づいた行動パターンを分析……。


 こうした行動ソースに関しては警察などにも必要性があれば提供をする一方で、一般ユーザーには伝えられる事はない。万が一、犯罪に悪用されたら被害が甚大になるからである。



 午後1時、特に大きな展開もないと思われた矢先、トライアル対象曲の1曲でスコアの更新された。


【この展開は予想外だった】


【プレイヤー名は調査中か】


【ネームドランカーとは違う人物が更新したらしいが】


 このニュースは瞬時にして拡散し、ランカーの目にも届く事になる。


「プレイヤー名は――!?」


 公式ホームページでスコアを確認した私服姿の大和杏やまとあんずは、そのプレイヤー名を見て驚く事に。


 反応に関しては大和の様に驚く人物もいれば、新人プレイヤー扱いとして様子を見ると言う2種類の反応に分かれた。


「まさか、イースポーツでジャイアントキリングをされる事でも有名な、あの人物が来たと言うのか」


 大和が驚いたのには理由があり、この人物がイースポーツでも有名人だったからである。



 プレイヤーの名はスカイエッジ、アキバガーディアンの所属なのだが……今回に限って言えばガーディアンの指示でエントリーした訳ではない。


『まずまずと言ったところか。このガジェットは使い勝手が悪いように思えるが、それぞれの剣で使い方が異なるのも大きい』


 分離形態のブレード単体、ソードブレイカーと言う用途を持つ2本の実体剣、合体させた際のブレード。


 この武器は使い手を選ぶ一方で、使い手とマッチすればある意味でも最強と言う言葉がふさわしい物になる。


 しかし、それでも分離時のブレードは2本が二刀流、1本がロングソード、2本がライトセイバーという用途なのだが……完全には使いこなせていない。


『投げナイフの要領で使うと言う訳ではないとマニュアルにもある。しかし、阿修羅でもないのに剣を2本以上持てるのか?』


 サブマニピュレーターや隠し腕の様な物を搭載しているバックパック等もない事はないのだが、それらはミュージックオブスパーダで持ち込みが認められていない類のガジェットだ。


 それを踏まえると、7本の剣を合体形態以外で上手く使いこなすためにはどうするべきか……そこに若干の問題を抱えていた。


 しかし、ある物を発見した事で、その発想は予想外の部分で生かされる事になった。


『ハードポイント……ARガジェットとARアーマーを接続出来るギミックがある話を聞いた事があるが』


 ARガジェットとアーマーを合体させる事も可能なハードポイント、ミュージックオブスパーダで使用可能かどうかは不明だが、試してみる価値はあるとスカイエッジは考えた。



 スカイエッジのプレイ動画が出回った頃、そのガジェットを見た山口飛龍やまぐちひりゅうは別の意味で驚く。


「あのブレード――何処かで見覚えがある」


 山口はブレードに関して見覚えがあると感じていたが、それが錯覚ではない事が動画を見ていく内に核心へと近付く。


 動画では最初のAパートでは二刀流のビームブレードをビームナギナタの原理で合体させ、それを振り回してターゲットを撃破していった。


 Bパートへ突入する頃、今度は実体剣でターゲットを撃破、更には5本のビームブレードを合体させたロングソードを振り回し、包囲される危機を回避する。


 ラストの発狂地帯、そこでは7本のブレードを合体させ、その一閃で無数のターゲットを撃破。最終的なリザルトは95%台を記録した。


「やはり、あのブレードは以前に薦められたもの――それを、ああも使いこなせるとは」


 山口もスカイエッジという名前に見覚えがあったのだが、それに関しては全くのスルー。彼の場合はARガジェットの方を気にしていた。



 午後3時、数名のスコアで理論値に到達したという報告を受け、運営サイドは不正があるかどうかを調査していた。


 そして、一部に関しては案の定というべきか、最新型の外部ツールで達成したスコアであることが判明する。


「これで賞金制にすれば、優勝者が得た賞金は超有名アイドルの投資等へ流れる事も否定できないか――」


 別のゲーセンに立ち寄り、そこで理論値の情報に関して報告を受けた南雲蒼龍なぐもそうりゅうは、決勝を賞金制にするかどうかで悩んでいる所だった。

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