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ミュージックオブスパーダ  作者: 桜崎あかり
ランカー激戦編
31/114

第30話:ランキングキラー(後篇)

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 ミュージックオブスパーダの公式サイト、ここでは主にプレイヤーのデータ各種閲覧、プレイ動画の投稿及び視聴、ガジェットカタログなど……。


 ゲームをプレイするプレイヤーにとっては重要なサイトでもある。利用しないプレイヤーもいるのだが、それは有料サイトなのでは……と考えているのかもしれない。


 しかし、このサイトはARガジェットにゲームデータが入っていれば無料で閲覧できる。つまり、サービス終了までは各種コンテンツを無料で利用可能なのだ。


「少し、試してみようかしら」


 早速、大淀おおよどはるかはトップページからランキングのページを開く。ここでは、プレイヤーのレベル別、ガジェット別の使用率、楽曲ランキング等が掲載されている。


「ランキングの顔ぶれをみる限り、そこまで手を下すまでもないか……」


 しかし、手のひら返しをするかのごとく、予定していた行動を断念せざるを得なかった。その理由は現段階での順位にある。


【3位:信濃リン】


【2位:長門未来】


【1位:大淀はるか】


 何と、わずか数日で大淀が首位になっていたのだ。この理由としては長門が今回のアップデートで収録された新曲に集中していた為、ハイスコア対象曲をプレイしていなかった事もある。


 大淀が確認していたランキングは、ウィークリーバトルランキングと言う物で、コース楽曲を合計3曲プレイし、その合計スコアで競う特殊モードだ。


「ウィークリーバトル自体は3曲保障でプレイできる一方で、体力も集中力も消費する。そればかりを粘着するプレイヤーも稀と言う事か」


 このモードは入手出来る経験値が多く、一気にレベルアップを考えようと言うプレイヤーにとっては絶好の狩り場とも言える。しかし、その代償は高難易度楽曲で固められていることだ。


 いくら3曲保障でも途中で演奏失敗が3回続くと、楽曲の組み合わせによってはノーマルモードでエンジョイプレイの方が稼げる場合もある。


 結局はリスクを恐れては得る者も少ないという事になる。それに加え、ミュージックオブスパーダは外部ツールやチートに関しては他のARゲーム以上に警戒をしている傾向も原因の一つかもしれない。


「しかし、総合ランキングは未だに動く様子がない。動いたとしても、ウィークリーバトルとランカーレベルランキング位と言うべきか」


 ランカーレベルランキングとは、レベル1からレベル12までの12段階で分けられたランキングなのだが……このランキングは非常に特殊なものとなっている。


 実際、最大であるレベル12に到達した人間は長門未来ながとみらい、大淀、南雲蒼龍なぐもそうりゅうの3人しかいないからだ。


 レベル別の順位と言うよりは、別の音楽ゲームで存在する段位認定と言った方が手っ取り早いだろうか……。



 6月1日午後1時、遂に動き出した人物が一人いた。それは意外な事に大和杏やまとあんずだった。


 今までが超有名アイドルのハント等と言った裏の役割だった為、表向きに行動する事は少なかった為だろう。


 それに加えて、彼女にとっては色々と見過ごせない状況が出てきた為の参戦でもあった。


《システムエラー》


 しかし、ミュージックオブスパーダへ久々にログインした結果、アガートラームが外部ツールと誤認識されるという事態になっていた。


 これに関しては一連の超有名アイドル絡みやゴッドオブアイドル関連で強力なガジェットが使われ、威力が高すぎる物に関してリミッターを追加した結果でもある。


「すみません。そのガジェットはチートとは全く違います。実は、南雲さんから預かっていた物がありまして――」


 途中から小声になった男性スタッフ、彼は大和にメモリスティックを手渡した。特にメッセージが入っている訳ではないが、スティックの挿入口へメモリスティックを読みこませた。


《プログラムアップデート中》


 ガジェットの画面に表示されたのは、アップデート中の表示だ。どうやら、メモリスティック内に入っていたのはガジェットのアップデートプログラムらしい。


「一体、このプログラムで何をしようと言うのか」


 大和の方は半信半疑である。南雲を完全に信用した訳ではないのだが、アガートラームをミュージックオブスパーダでも持ち込めるのであれば……司法取引と言われてもかまわない。


《プログラムアップデート完了。グングニル、起動します》


 大和は思わず画面を二度見した。アガートラームではなく、それと類似したナックル系のガジェットであるグングニルと認識されたのだ。


「これはどういう……いや、止めておこう」


 大和も思わずスタッフに対して睨みつけようとしたが、それを行ったとしても彼らが話すとは思えない。一応、疑問はありつつも引き下がる事にする。



 それから10分後、大和は新たに手に入れたグングニルの力を試していた。スーツやギアのデザインは変わるが、システムや動作関係はアガートラームと大差はない。


「アガートラームがガントレットタイプ以外でも存在する以上、グングニルも同じか」


 グングニル、北欧神話の影響もあって槍として扱われている事が多い。中には名称を若干もじっていたり、デザインが変化しつつも槍は変わらないという物もある。


 一番驚いたのは、アカシックレコード内でグングニルが槍で扱われているケースが少なかったことだ。今回のナックルタイプも、それに該当するのだが……。


「さて、始めるか」


 彼女のプレイ動画を見た視聴者は、揃いもそろって強豪ランカーの誕生に恐怖しているように見えた。彼女が元々は別のARゲーム出身である事も拍車を賭けているかもしれないが。


【大和杏、元々は別のARゲームにもいたな】


【それよりも、彼女はミュージックオブスパーダのイースポーツ化に賛成しているようだが】


【ARゲームがイースポーツ化すれば、ますます賞金稼ぎのような荒らしプレイヤーが増えるだろう。チートに関しても、新型が投入される可能性も否定できない】


 他のつぶやきも見る限り、彼女の本格参戦はイースポーツ賛成派を呼び起こす予感さえも……。

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