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ミュージックオブスパーダ  作者: 桜崎あかり
ランカー激戦編
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第29話:ランキングキラー(中篇)

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 西暦2018年6月1日午前11時15分、謎のフードを被った集団が草加駅近辺に姿を見せた。それは、ARゲームとは無縁と思われていたのだが……。


「狙いは、こちらと言う事か」


 別所のロケテストを視察に行く途中だった南雲蒼龍なぐもそうりゅうは、背広と言う営業スタイルの為にARガジェットは持ち合わせていない。そこを狙われた可能性がある。


「南雲蒼龍だな?」


 フードの人物の一人が、ARガジェットのアサルトライフルを構え、その銃口を南雲に向けるのだが……その行動でひるむような南雲ではなかった。


「そうだとして、何をしようと言うのか?」


 南雲の一言を聞き、フードの人物は引き金を引く。しかし、銃声が聞こえるようなことはなく、事実上の不発に終わった。


「一体、どういう事だ? 拳銃よりも容易に持ち込めるという事で購入したと言うのに――」


「どうやら、ARガジェットを本物の銃か何かと勘違いしているようだな」


「どう考えても、この形状は銃火器ではないのか? この様な物を売りさばいて、貴様は死の商人でも気取るつもりか?」


 南雲にとってフードの人物が口にした死の商人と言う単語には、さすがに地雷だったのか……彼は指を鳴らしてシステムを起動させた。


「ARシステムの知識も得ようとせず、開口一番が死の商人とは聞いてあきれる!」


 指を鳴らした直後、南雲の背広は以前に装備していたコートに変化、更にはDJテーブル型のARガジェットも同時に転送されたようだ。


 そして、フードの人物が次に不適当な発言をする前に、ARガジェットをソードに変形させ、あっさりと斬りつける。


 それを見た他のフードの人物は戦意を失い、一部メンバーは逃亡、一部は攻撃が当たれば……と抵抗をするが、あっさりと片づけられてしまった。


「かませ犬にすらならなかったな。所詮、外部ツールやチートを使わなければ生き残れないようでは……ミュージックオブスパーダの世界で勝ち残るのは不可能に等しい!」


 逃亡したメンバーはアキバガーディアンにも任せるとして、南雲は別のロケテスト実施エリアへと向かった。この間、わずか3分未満であり、文字通りの病殺と言える。


 残念ながら、南雲の戦闘光景は動画に録画はされていなかった。これは、今回展開したフィールドが非常に特殊なものであるからである。


「アカシックレコードの技術をダイレクトに反映させたものか。あの武器、もしかするとアガートラームかエクスカリバーと言う可能性もあるか」


 この様子を遠くから見ていたのは、DJイナズマである。別の用事で草加駅まで来ていたのだが、南雲に遭遇したのは別の意味でも幸運だった。


「どちらにしても、アカシックレコードを悪用しようと動き出している組織がいる事は確認出来た。超有名アイドルは締め出し中として、何処が該当するのか」


 イナズマはふと考えたが、すぐに思いつくほど情報が多い物ではない為、今は別の用事を済ませる事にした。



 同日午前11時25分、ニュースの速報テロップで超有名アイドルの芸能事務所が新たに強制捜査を受けたという表示が出る。


【またか。ここまで来ると、もはや魔女狩りだな】


【しかし、あれだけの事をやった以上……それ相応の罰を受けるのは当然の事】


【コンテンツ業界の再編は急務だろう。今のままでは、他国の介入を許した上に一次創作以外は認められない世界になる】


【それは極論だろう。しかし、二次創作を認めている団体の作品だけが……と言うのは、寂しくなるな】


【しかし、他国介入を防ぐ為に超有名アイドルが全てのコンテンツを独占するような事はあってはならない】


【それこそ、過去に起こった賢者の石事件を彷彿とさせる】


 賢者の石事件とは、超有名アイドルの芸能事務所やアイドル投資家がアイドルコンテンツ以外を全て排除し、超有名アイドルのコンテンツ以外は禁止すると言う法案だった。


 しかし、『超有名アイドル以外が存在出来ないコンテンツ産業の鎖国化】等と非難の嵐となり、法案は廃案になると思われた。


 それを妨害したのが夢小説勢やフジョシ勢と偽装し、それらのファンが起こした事件として自分達は正義だと思わせようとした……超有名アイドル投資家である。


 最終的には、反超有名アイドル勢力によって事件は解決したとされているが、その詳細は残念ながら秘匿とされ、海外などには報道されていない。



 同日午前12時、速報だったニュースの詳細が明らかになるにつれて、何かの崩れ落ちる音がするような気配を感じていた。特にネット炎上勢は、それをダイレクトに受けるだろう。


『最初は、アイドル芸能事務所と大手まとめサイト管理人が手を組み、さまざまなコンテンツ事情社に対して営業妨害をしていた件についてです』


 男性アナウンサーの口からは、想像を絶するような発言が次々と飛び出していた。国営放送のテレビ局で、この対応の為、民放であれば相当だろう。


【営業妨害? あの芸能事務所が?】


【男性アイドルの大手ならば分かるが、ここは中堅所のはず。それが営業妨害とは、どういう事だ?】


【信じられない。ステマを含めて、さまざまな犯罪行為に手を染めていたなんて……】


【アイドルならばテロ行為以外はすべて認められるとか考えていたのか?】


【テロ行為は言いすぎだが、まとめサイトと手を組んで犯罪行為を誘導していたとは……しかも、アイドルのファンに】


 ニュースの内容を見て、つぶやきサイト上が荒れているのは言うまでもない。それに加えて……。


【一部の炎上を誘導するつぶやきをした人物も逮捕されたらしい】


【やはり、まとめサイトの鵜呑みは危険だったのだ】


【これが……現実なのか?】


 その後も30分程は、このニュースを受けてのつぶやきがトレンドを独占していたと言う。


「つぶやきサイト上でもランキングキラーの影響があったとは思えない」


 一連のつぶやきを見て不審に思ったのは誰もが同じなのだが、予想以上に不信感をあらわにしていたのは大淀おおよどはるかだった。


 彼女は、例の発言後は沈黙をしていたのだが、これにはタダ乗り便乗勢やランキングキラー、その他の反ARゲーム勢力に発言を悪用される事を懸念しての事だったのである。


「少し、試してみようかしら」


 大淀が閲覧しているサイト、それはミュージックオブスパーダの公式サイトだった。

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