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ミュージックオブスパーダ  作者: 桜崎あかり
ランカー登録編
17/114

第17話:バウンティハンター、その名はビスマルク(中篇)

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 5月27日、朝のニュースで転売業者を陰で操っていた大物政治家が逮捕されたというニュースが報道されていた。


『今回逮捕された政治家は、人気アイドルグループの会場誘致に関係した人物で、チケットの大量転売を手引きしたと思われ、所属していた政党そのものが転売――』


 そのテレビを見て驚いたのは、私服姿のビスマルクである。彼女はゲーセンで一連のニュース報道をチェックしていたのだが、驚きの声を上げる事はなかった。


 耳にはヘッドフォンをしており、ニュースの音声が周囲に漏れる事はない。しかし、ゲーセンでは爆音が響く事もあるので、聞き取れない状態を防ぐ為の物かもしれない。


「違う。転売業者が逮捕されたのは、ARガジェットの専門だった。どうして、超有名アイドルグループへ差し替える必要性が――」


 ビスマルクが思ったのは、昨日の速報記事で見たARガジェット業者の逮捕である。これに関係したのは加賀かがミヅキなのだが……彼女の名前は乗っていなかった。


「このゲームは一体?」


 ニュース記事を色々と探っていく内に、あるARゲームの広告バナーに指が触れてしまい、そのページへと移動する。


 そこに載っていたタイトル、それはミュージックオブスパーダ。ビスマルクは初めて聞くタイトルに驚いた。


「音楽ゲームと狩りゲーを融合させたゲームか。レースやサバイバル、FPS、TPS、対戦格闘とやりこんでいたが……」


 どのジャンルも自分に全く合わない訳ではないのだが、どうしても何かの違和感が残る。超有名アイドルのタイアップ等ではないのだが、どうしても払しょくできない何かがあった。


 それは、プレイに慣れるまでにどれほどの資金を投入するかと言う部分だった。先行投資は避けられないのだが、中には初回プレイは無料と言うゲームも存在すれば、基本無料でアイテム課金の様な物もある。


 アイテム課金に関しては、コンプガチャ等を初めとした問題が超有名アイドルファンによって指摘され、そこから一気にソーシャルゲームが衰退した事もあった。


 こうした一件もあり、超有名アイドル勢とソーシャルゲーム勢で抗争とも言えるかもしれない状態が続いていた。



 しかし、こうした抗争も「表向き」であって、真の目的は違うと言うのがネット上の予測だ。アカシックレコードの技術、それを政府が掌握しようと考えているのだ……と。


【アカシックレコードの技術があれば、地球を容易に消滅させる事も出来る。一歩間違えれば、銀河系の歴史さえも終わらせる事が出来るだろう】


 こうした発言がアカシックレコードの解読技術を向上させ、現在のARゲームが生まれたというのも皮肉な話である。


 最終的には軍事技術転用に関してはガイドラインで禁止はされていたのだが、これらの技術を実際に兵器化するには素材と言えるものが足りない。


【それでも、兵器転用を考えようとして世界を破滅へ加速させようと言う人種もいる。こうした暴走は過去に何度もあった。それこそ、流血のシナリオへ発展する程の】


 アカシックレコード、それは3次元だけではなく4次元の世界の情勢さえも吸収し、莫大に増えつつある巨大なネット大百科……と言えるかどうかは定かではない。


 こうした仮説も別勢力に否定され、その繰り返しとなるからだ。何故、このような繰り返しが続くかどうかはネット炎上勢が莫大な利益を得る為に……と言われている。


【超有名アイドルコンテンツ以外を認めないという流れ……それこそ賢者の石と言わざるを得ない。一部の政治家は禁忌とも言える技術に触れた結果、少数司会なかった敵を無限に増やしていき、破滅する】


 アカシックレコードが何を伝えようとしているのかは不明だが、政治家が手を出す事はないだろうというのはビスマルクも確信していた。


「悪徳政治家も一掃され、次に懸念すべきはフジョシや夢小説勢、超有名アイドルを神として信仰する集団か」


 ビスマルクの考えている事、それは――。


「ARゲームのトータルバランスを破壊したRMT勢の正体、おそらくはアイドルグループの追っかけで間違いない」


 ビスマルクがチート勢やRMT勢を駆逐しようとした理由、それはアイドルの追っかけである。彼女達が兼業としてグッズ転売やRMTに手を出し、それが結果的にアイドルFX投資等を推進させる結果を生み出した。


「どちらにしても、そこまで考えて行動するような連中ではないか」


 ビスマルクはサングラスをかけ、待機席から離れる。彼女が並んでいたのは音楽ゲームの待機列だったのだ。



 同日の午後、大和杏は別のARゲームに関して様子を見ていた。それは、パルクールを題材にしたもので、使用しているシステムもARゲームのそれよりも数段発展した物である。


「アカシックレコードの可能性は、ここでも新たな世界を生み出している」


 大和はレースの様子を見て、ミュージックオブスパーダとは別の何かをパルクールから感じ取っていた。


 音楽ゲームに狩りゲーの要素を足したのがミュージックオブスパーダならば、パワードスーツでパルクールを行うのが……と言う風に。


「どちらも共通しているのは奏歌市がスポンサーを務め、政治的要素を全廃している点だろう」


「コンテンツ業界は本来であれば悪意ある先導を行うべきではない。そして、一部勢力の唯一神信仰に利用されてもいけない」


『――連中が、ネットを炎上させる、自分達が目立ちたいだけでデモを起こしたとしても、それは一過性の物で終わり、本当の意味で歴史に語られる事はない』


『アカシックレコードが本当の意味で求めているのは、超有名アイドル商法が経済さえも揺るがし、世界を混乱させるブラウザゲームにおける外部ツールである事を思い知らせる事だ』


 ある女性が大和に対して警告しているようにも聞こえたが、大和は女性の姿を見ていない。もしかすると、これもアガートラームの影響と考えるのか良いのだろうか。


「アガートラーム、外部ツールを消滅させるような力である一方、ごく一部のゲームではエラーを吐き出す可能性もある」


「どちらにしても……もろ刃の剣なのは間違いないのかもしれない」


 大和は一瞬だけビジョンとして右腕に装着されたアガートラームを見つめていた。


 そして、外部ツール勢とも例えられる勢力を排除しなければ、正常なゲーム運営は成立しないとも考える。


「繰り返される世界線……もしかすると、4次元人の介入がアカシックレコードを変化させているのか」


 大和はレースの結果を確認した後、再びミュージックオブスパーダのエリアへと移動していた。


 その移動手段はARマシン……SF世界におけるパワードスーツ的な物であり、先ほどまで見ていたパルクールで使用しているガジェットでもある。


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