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ミュージックオブスパーダ  作者: 桜崎あかり
ランカー登録編
15/114

第15話:黒船、降臨す!(後篇)

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 5月9日、この時のギャラリーはわずか数人だった。順番待ちのプレイヤーも観戦していたので、数人と言う表現は間違っている可能性もある。


「あの動き、別の意味で驚きだ」


「信じられない。自分でも、あそこまでの動作は無理だぞ」


「アスリートでも慣れない動きに怪我をする事もあると言うARゲームに、あそこまで適応できるとは」


「やはり、ゲームと言うジャンルである以上はアスリートよりもゲーマーが有利なのか」


 様々な声が出る。これらの声はプレイしている長門未来に向けての物であるのは言うまでもない。


「これが、彼女の実力なのか」


 動画配信で視聴していたのは、別のゲーセンに足を運んでいるDJイナズマだった。



 彼女の動きは取り囲もうとしていたモンスターを一撃で撃破する。その一方で彼女の動きは目で確認できる位の速さだ。


「彼女は性格に敵の急所を当ててきている」


「厳密に言えば、急所と言うよりはジャストタイミングで命中させているという事か」


「ハンティングアクションと錯覚しがちだが、システムは音楽ゲームだったな」


「このゲームでは敵を撃破する事が重要ではない。楽曲を上手く演奏出来るか……」


 ギャラリーの方も、徐々に増え始めている。他プレイヤーのプレイが飽きたからではなく、選曲中と言う事もあったのかもしれない。



 長門は音楽ゲームの技術に関しては、かなりの物を持っている。ARゲームのプレイヤーで例えると、中堅位の実力はあるかもしれない。


【あの動きは……ARゲームの動きとは違う】


【ミュージックオブスパーダがARゲームで求められる技術とは違う物を求めている】


【どう考えても、あれだけ機敏な動きはARゲームを数回プレイしただけでトライできる物ではない】


【まるで、別のゲームでの技術を披露しているみたいだ】


【つまり……ミュージックオブスパーダは、ARゲームとは根本的な部分が違うのか】


【システムはARゲームだが、実際に求められるのは音楽ゲームでの技術だろうな】


 つぶやきの方でも、長門のプレイを中継している関係があって盛り上がっているように思える。



 長門はプレイ後にスタッフへ何かを尋ねていた。システム的な事よりも、動画についての説明かもしれない。


「動画に関してですが、プレイ直後に動画が投稿される訳ではありません。投稿予約の状況によって、数日かかる場合も――」


「そうですか。特に急ぐ訳ではないので」


 そして、長門の方は近くのコンビニへと足を運び、そこでスポーツドリンクとドーナツを購入する。腹ごしらえと言ったところか。


 長門はチョコレートのかかったドーナツを口にしながら、ARガジェットで他プレイヤーの動画を確認する。


 手が汚れた状態でガジェットに触れると、故障する可能性もある為に手を拭いてから端末に触れているのだが。


「ARゲーム出身のプレイヤーが音楽ゲームに進出したとしても、このレベルでは……」


 長門が思ったのは、複数ジャンルのゲームをかけ持ちする事に関して。


 彼女の場合は音楽ゲームがメインで、ARゲームは始めたばかり。しかし、初見プレイの結果は一部でタイミングミスもあったのだが、スコアは理論値の次に高いスコアである。


「ARゲームがイースポーツになれば、格闘ゲームやFPSのような盛り上がりも期待できる。その一方で、別の懸念もあるかもしれないけど」


 長門は音ゲーマーではあるのだが、廃課金等の様にお金を湯水のごとく使うプレイヤーではない。イースポーツ化すれば、賞金でゲームをプレイする事も可能になるだろう。


 一時期はプロゲーマーも注目されていた業界なのだが、あまりにも多くのゲーマーが出現すると言う事が意味するのは――。


「多くの人間が集まれば、色々なトラブルが起こるのは避けられない。ネット炎上も、その一つか」


 長門が懸念しているのはネット炎上勢だけではない、有名税という存在を別の意味で悪用しようとする勢力、タダ乗り便乗等の様な物を何とかしようと言う事だった。



 5月18日、タダ乗り便乗勢力がミュージックオブスパーダに姿を見せ始め、理論値を次々と叩きだす案件がつぶやかれたのは、この辺りである。


「理論値をたくさん出せれば、いずれは大金が入ってくる環境になるだろう」


「そうすれば、推しアイドルのCDを大量に購入し、CDランキングを独占する事も可能だ」


「このダークガジェットさえあれば、それが実現――」


 しかし、こうした理論値が大量に出てくる環境、それがダークガジェットと言う外部ツールを使用した物と判明するのは、わずか数時間後だった。


「お前達か。外部ツールで荒稼ぎをしようと言う超有名アイドルファンは――」


 ダークガジェットを使用したプレイヤーの目の前に現れたのは、バウンティハンターだった。しかも、ビスマルク等の様な名前の知られているハンターではなく……。


「超有名アイドルファン、お前達の行おうとしているのは業務妨害に他ならない!」


 その後、ダークガジェットを使った超有名アイドルファンはバウンティハンターとガジェットバトルをする事になったが、10秒も立たないうちに降伏をする事になった。


 その理由は、ダークガジェットが動かなかった事による物らしい。おそらくは、外部ツールを遮断するシステムが即時構築されたのだろう。


 ダークガジェットの話題は即座につぶやきで拡散し、運営が取り締まる事になったのだが……外部ツールによる被害は今までにもあった。


 しかし、それらは業務妨害と運営が判断しなかった事に他ならない。営業妨害と判断するようになったのは、ARゲームがイースポーツ化し、賞金が出るようになった事も理由になるだろう。

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