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◆和平協定

 戦いが終わって一週間後、サン・アルベルタ城前にはヒト族、魔族、魑魅魍魎の類、すべてが集結していた。戦いの終結を宣言し、祝うための式典だった。


”かの日を忘れることは出来なくとも、明日は訪れます

 傷跡が消えることはないとしても、今日という日が訪れるように”


 その式典には神の使者も降臨し、祝福を与えた。


”いずれ同じひとつの世界を生きる民達よ

 昨日は違えど、明日は同じ

 この日が永遠となるよう祈りましょう

 祝福を!光あらんことを!”


 その使者は眩く光る白い衣をまとった若い女神だった。


「リティシア姫よ。自身を投げ打ち、よくぞ国の未来を守りました。神の加護を」

「はい。ありがとうございます」


 女神はヒト族、魔族の代表達を祝福して回った。


「おお、女神様!貴方は美しい!美しいですな!」


 そこにはベルゼヴの姿もあった。

 はじめは蒼汰もそれが誰だか分からなかった。


「魔王よ。そなたには後ほど話があります」

「は、はあ……」

「ね?蒼汰。約束は果たしたわよ」

「え?」


 よく見れば、それは魅怨だった。魅怨が神の使者、女神ミ・ムゥとして降臨したのだった。


「ああ、そうだな」


 蒼汰は言うと中央に進んだ。リティシア姫とともに。

 会場の中央にしつらえられた祭壇に並ぶふたりはの姿は、まるで壮大な結婚式の花嫁と花婿のようだった。


”我らはひとつ、この世界をともに守りゆくことをここに誓います!”


 ”ワーーーーーーー!“

 ”ヤアーーーーーーーーーーーーーーーー“

 ”ウォオオオオオオオオーーーーーーー“

 ”ホーランド万歳!“

 ”リティシア姫ばんざーーーーい“

 ”マーオ!マーオ!デラ・ラ・マーオ!“

 ”マーオ!マーオ!デラ・ラ・マーオ!“


 つづいて祝宴がひらかれた。そこでは、ヒト族も魔物も、すこしぎこちなくはあったが同じように笑い、歌いあっていた。


「楽しいですな~こういうのも。ボクはね~一度アンジェリカ殿と話してみたかったのですよ」


 ベルゼブの姿も、アンジェリカの姿もあり、小競り合いがあったとしてもたちまちたしなめられた。

 当然のように中心にいた蒼汰やリティシアもやがて各族長からの挨拶も終わると、喧騒を離れ裏庭へと逃げ込んだ。そこには宴を遠くに見ながら魅怨もいた。


「話というのはなんでしょう?魅怨……いや、女神ミムゥ」

「魅怨でいいよ。今までどおり」

「そう……か……で?なんだ?」

「できれば魔王とふたりきりで話したいのですが」

「分かりました。あちらの部屋をお使いください。女神様」


 魅怨が言うとリティシア姫は奥の間を案内した。


「つらいのだろう?」


 ふたりきりになると魅怨は切り出した。


「何がだ?」

「今にも魔王に身体を支配されそうじゃないのか?と聞いておる」

「ん、ああ。そのことか。さすがだな。さすが魔王オタク。だが、日本に帰れば大丈夫だろう。今しばらくは耐えられると思う」

「そうもいかないみたいなんだよ」

「え?」

「たぶん、帰っても魔王化は進行し続ける。逆にあそこには敵がいないから、よっぽど危険かもしれない」

「じゃ、じゃあどうすればいいんだ……」

「だから、私が来た。神の使いとしてね。私が今日ここに来たのはアンタのためだよ」

「式典のためだろ?」

「ううん。それはついでだ。その方が来やすかったしな」

「え?そ、そんな~」

「まあ、役目は果たしたのだから文句はないだろう」

「ま、まあ……そう……なのか?まーいいや。で?俺の件とはなんだ?」


 すると魅怨はここでひと息ついたあと話し始めた。

 神の御業、つまりは魅怨の父親のチカラにより、封魔の術を施すことができるというのだ。


「そ、その方法は?」

「分封だ」

「分封?」

「そうだ。魔王のチカラは強い。だから一人の人間でそれを抑えこむことはできない。だから二人で抑えこむ。そうすれば魔王のチカラが現出することはなく、魔王化は止められるだろう」

「そ、そうか!そうなのか!よし!やろう!スグやろう!」


 そう蒼汰が言うと魅怨の頬がほんのりと赤く染まった。


「ここで……今……やるのか?」

「善は急げって言うだろ?!すぐだ!今すぐやろう!やり方は?」

「知らない!わ、私が知るわけがないだろう!」


 今度こそ魅怨の顔は真っ赤になった。


「へ?……ぶん……ほうって?」

「……分封とは……男と女で……ま……まぐわうことだ……」

「え?ええええええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!それって、それって、それって~~~~~~???え?ええええ~~~~~っ?お、お前それでいいのかよ?」

「だ、だってしょうがないじゃないか。何とかすると約束したし。誰かがヤラなきゃダメなんだし。あ、でも、その姿なら。その魔王さまの姿なら、まんざらでもないかな~なんて……へへ」

「って震えてんじゃねーか!あーもー!そんな、無理矢理できるか!」


 詳しく聞けば、分封とは、封印を共有することにある。だから、一度その術を施した者は一生、その人とだけしかできない身になってしまうという。


「そ、それは今スグでなくてもいいのだろう?」

「ああ。早いに越したことはないと思うけどね」

「すこし……考えさせてくれ」

「そうね……」


 この時、この会話をこっそり聞いている者があった。が、二人が外へ出ると姿を消していた。


「とりあえず、他の仲魔のデモンシードを返してもらえるか?」


 蒼汰がいうと魅怨は蒼汰に持っていたデモンシードを手渡した。


「全部だよ!」

「風魔王と雷魔王だけは……」

「全部!」

「むうぅ~集めるの大変だったのにい~~~」


 魅怨は名残惜しそうに今度こそ全てを渡した。


「エイミィ!いるのだろう!」


 蒼汰が叫ぶと、闇の中からエイミィがぬるーっと姿を現した。


「この種はお前に預ける。これからはお前が魔族を導け」


 エイミィは、一言も発せず、種を受け取ると再び闇に消えていった。


「泣いていたわよ?彼女」

「仕方がないさ。エイミィが愛した魔王を蘇らせることはできないのだから」


 俺は少し寂しい気持ちを抑えながら、できるだけ明るい声を出した。


「さあ帰ろう」


「姫さま~!姫さま~!」

「魔王!魔王さま!」


 その日、ミスガルから魔王と篝は姿を消した。

 さらに言えばリティシア姫も、ついでに何人かも同時に姿を消したという。



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