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人型陸戦兵器「|武士《もののふ》」   作者: 荒井尾 麓
第一部 プロローグ 堅田攻防戦編
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第一話

初投稿頑張ります!

「2036年9月、防衛省は中国からの侵攻を受け、海上自衛隊を日本海に派遣したが、自衛隊は中国の物量の前に苦戦を強いられていた。

 同年12月に米国からの介入により、中国は戦局を後退せざるを得なくなった。

 結果的には、中国からの侵攻は防ぐことができたが、日本の他国からの侵攻に対する抵抗力の弱さが、はっきりと露見した一件となった。

 これがのちに語られる日本軍事強化期の原因、日本海戦役である。」


 強化ガラスの取り付けられた窓の内側で、春のうららかな日差しをめいっぱい浴びて俺は、半分寝ているよう寝ていない、そんなまさに「微睡む」といった行為に耽っている。

 古い偉人は言った「春眠暁を覚えず」と、だからこれはしかたがない...はず。


「斎藤、まだ諦めるような時間じゃないぞ。」


 俺は俺の目の前に立つ気配と、俺の名前を呼ぶ声に反応して顔を上げる。


「せ、先生...!」

「ああ。なんせ、授業開始から5分と経っていないからな」


 目の前の前田先生(歴史科)は、時計を親指で指しながら俺に言う。


「せん、せい...俺のことはいいからみんなのことを...!」

「はぁ、あほなこと言ってないで、授業に集中しろ」


 この先生ならノってくれるかと思っていたのだが、大きな誤算だ。

 仕方なく俺は、上体を起こし前を向く。

 現代の教育課程は、昔とそんなに変わっていない。

 少し変わっていることといえば、高校に国防高校という、自衛軍の兵士を教育する特殊な高校ができたことくらい。全国で9校しかなくて、生徒数は9校合わせて約8000人ほど、その後防衛大学に行って、さらに訓練を積むか、自衛軍に入隊して現場で働くかに分かれるらしい。

 俺はそんなこと関係ないけどな。

 俺はこの歴史の授業というやつは昔から苦手だ、嫌いと言ってもいい。

 何年に何が起きたとかそういうことを覚えるのが苦手な俺にとって、この教科はまさに鬼門。この世から、というよりこの国の教育課程から一刻も早く除去されてほしい。ありえないけど。


「ん、ん。では授業を続けるぞ、そしてその翌年二月にとある法案が可決された、これが何かわかるものは?」


 前田先生は教室内を見渡し、回答者という名の生贄を探す。

 ほんとにやめてください、お願いします。


「んー、では、北島。わかるか?」


 セーフ、今回は俺は見逃されたらしい。代わりの犠牲者は優等生の北島さん。お疲れさまです。


「はい、対侵攻行為国家防衛特別法案です。」

「そうだな。この時日本はまだ日本国憲法において軍事力というものの所有を許していなかった。

 また、米国からの圧力等々などにより、日本独自の兵器開発もできていなかった。米国との共同開発はしていたが、その多くは米国に技術を吸収され、あまり国内には残らなかった」


 前田先生は教卓に置いていた教科書を手に持ち、振り返って黒板に文字を書く。


「がしかし、このまま他国からの武力介入に甘んじている場合でもいられないと判断した当時国防大臣の逢坂隆俊氏と総理大臣の唐坂紀彦氏が、今、北島の言ってくれた対侵略行為国家防衛特別法案、通称『国防特別法案』を提案した。ここで問題が発生する。」


 黒板には前田先生が話しながら書いた『国防特別法案』という文字とそれを囲む丸が書かれている。

 前田先生はクラス全体を見渡す。それに対して俺は、あてられると直感で予測して下を向く。


「その問題は言うまでもなく、旧憲法解釈、武力の所有についてだ」


 前田先生は、小さな溜息をついてからそう言った。

 このため息の対象は俺じゃないと思いたい。


「日本は1945年に、第二次世界大戦において敗戦しており、その時にできた憲法により二度と戦争を起こさないために、武力と呼べるものを放棄していたわけだ。まぁ、必要最低限の国防のための艦などは所有していたが、その結果は授業の冒頭で話した通りだ。まったく相手にならなかった。

 確かに国としての規模というアドバンテージが向うにあったが、それでも、国の防衛という点では不十分だったわけだ。結果、日本国内に駐在していた米国軍に手伝ってもらい何とか退けたわけだ。

 日本という国は、この時点においていまだに武力を持つことを是としなかった。提案が出された時には、絶対にその法案が現実にならないようにデモ行進などが連日行われていたくらいだ。

 それでも、その法案は通すべきだと逢坂大臣と唐坂総理は訴え続けていた。

 そんな時起きたのが、2037年4月29日、中国連邦対馬占領事件だ。お前たちに配ったレジュメの表面年表の中段の括弧に埋めろよ。ここ、テストに出るからな。」


 そこまで話し続けていた前田先生がこちらに背を向けて黒板に文字を書いていく。


「さっきの日本海戦役が引き金とするなら、この事件は振り下ろされた撃鉄だ。米国の干渉により後退させられた中国は、部隊を迅速に再編し物資を補給してこの時を待っていたわけだな。

 戦艦、空母艦、合わせて約10の艦隊が対馬に押し寄せ、瞬く間に占領して小型要塞施設を建設し、対空施設などの軍事施設を作り上げてしまった。

 さすがの米国もすぐには対抗できず、本国の応援を待つしかなった。

 その間にも中国軍は施設を増設し、対馬にいた日本国民を人質として、日本に交渉を投げかけてきた。人質の代わりに金か、領土の一部を明け渡せと。」


 前田先生は書き終わった後にまた前を向く。


「さて、この事件の顛末だが、みんなも知っている人も多いだろう。結果的に対馬は日本のもとに返ってきたが、島にいた人々のうち9割は死亡した。残りの1割も重軽傷を負った。

 振り下ろされた撃鉄は雷管を叩いて火薬を爆発させて弾丸を発射させる結果となったんだ。これがのちに語られる日本国民蜂起だ。」


 俺は前田先生の話を聞きながら、視線をその少し上に向ける。よし、あと10秒...。


「そして、その後に法案は可決され、日本国自衛軍が創設されるわけだが――」


 キーンコーンカーンコーン。


 間抜けなチャイムが学校に流れる。


「ふう、もうそんな時間か。まあいい、この続きは次の授業にするぞ。号令」


 前田先生の視線が北島さんに向く。


「はい。起立、礼」


 北島さんは先生の意図を読み取って号令をかける。


「「「「「ありがとうございましたー」」」」」


 礼をした後におれは即座に席に着き体を前に倒して寝る。

 ほんと、春って季節はなんでこんなに眠いのかね~?

どうも初めまして、荒井尾 麓です

作中で日本独自の兵器開発はされていないということになってはいますが、現実では一部されています。その場合は兵器というより装備と言ったほうが正しいようですが。

もし、今後ここがおかしいというところがあったら遠慮なくご指摘いただけると嬉しいです。

一部は物語のために現実とは変えている部分もありますが、たまに素で間違えている場合もございますので、その点はご容赦いただきたいです。

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