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とある高校教諭のファイルより

作者: 仲南砂上

 反省文


 2日前の2月18日、現代文の授業中に自分の左腕をカッターナイフで切りました。

 その場に居た福田由美子先生、およびクラスの皆に迷惑をかけ、誠に申し訳ありませんでした。


 切った理由は誰にも教えたくありません。誰に言っても仕方のないことだからです。

 

 この反省文は一体誰に宛てて書けば良いのですか?担任の小西先生ですか?その場にいたクラスメイトですか?私の親ですか?

 今回の事で一体誰がいちばん怒っていて、そして、それは誰に向けた怒りですか?


 あのとき、福田先生は激しく動揺しながら、私を保健室へ連れて行きました。

 いじめにあっていたかどうか、訊かれました。私は首を横に振りました。


 保健室で救急車を待つ間、痛くないかと散々訊かれました。

 私は、無言で首を横に振りました。


 無言の帳が降り、しばらくしてから福田先生は


 「何も気が付かなくてごめんね」


 と、涙声で言いました。 空しい言葉でした。

 私の担任でも部活の顧問でもない、去年赴任してきたばかりの福田先生が不安のあまり零した、空台詞でした。

 

 今、私は左腕の縫われた傷を見て、なぜ自分がこんな事をしたのか少しだけわかった気がします。


 これはきっと、私の喉。

 叫んでいたらこうなっていたんだ。


 自殺未遂とも捉えられますが、私にしてみたら(本人が言うので信じて下さい)心の内を言葉に出来ず、行動にも移せなかった愚図の、まことに厄介な方法で表現された単なるクレームです。

 ただ、死ぬほど文句を言いたかっただけなんです。


 両親は優しいし、友人にも恵まれています。

 取るに足らない事でも、運が悪いと流血騒ぎになるというのは良くあることです。

 

 しかし、ここで改めて謝罪の文句を考えるとするならば、


 「私の心の内を不適切な方法、タイミングでさらけ出してしまい、大変失礼いたしました。」


 と、すれば良いでしょうか?

 開き直ったような書き方になってしまいましたが、私は至って真面目です。


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